ペナルティポイント

文字数 1,552文字

……
廃墟の中で息を潜める勇者。

緑の巨大ゴーレムは

まだこちらの位置には気づいていない

巨大ゴーレムの数は三体


先行する一体の後ろから

もう二体がついて来ている

俺が知っている奴なら


手に巨大なマシンガンを

持っている筈なんだが……

物陰から勇者がその姿を確認すると

やはりゴーレムの手には

巨大なマシンガンが握られている。

しかし、

あんなデカいロボットに

あんなの持たせるとか


最初に考えたの誰だよ


ここ無人のコロニー、

その廃墟に現れた緑の巨大ゴーレム

俺が昔アニメで見た

巨大ロボットと同じであるなら

人が操縦している筈なんだが

しかし、

この残骸と化したコロニーに

人間が生息しているとは到底思えない

となると、AIか何かで動く

自律式ということも考えられる

もう一つの可能性としては


放置されていた巨大ロボットに


このコロニーに住んでいた

死んだ人間達の魂なり霊なりが

憑りついて本当にゴーレム化したか

本当のゴーレムも、そもそも木偶や石像であることを考えると


まぁ、有り得ない話ではない

勇者がそんな考察をしている間、

ドン・ファンは廃墟の建物で

トイレに籠り切りであった。

さっき食べた古い宇宙食で

どうやらお腹を壊したらしい。

ドン・ファンが水洗トイレの

水を流す音が勇者に聞こえる。

いやぁ、

お前が居た世界のトイレってすごいな


勝手に水が出て来たぞ

ドン・ファンは

スッキリした顔をしていたが、

勇者はキレていた。

こっちは、

息を押し殺して潜んでたってのに


何水流してくれてんだっ

案の定、

何のセンサーが反応したのかは分からないが


傍に居たゴーレム一体が

そのわずかな音に気づき


勇者達が隠れていた建物に

手に持つ巨大なマシンガンをいきなり撃って来た。

家の中に居た勇者とドン・ファンは辛うじて

外へと飛び出したが


建物は一瞬で吹き飛び、

周囲に建ち並ぶ住宅も

蜂の巣になり大破しいている。

やべぇ、

想像以上に弾がデカい

やっぱ、本物は違うわ

銃撃したゴーレムに気づき


他の二体もこちらに向かって来たか

小さい人間を的に狙い撃つのは

効率が悪い話ではあるが


ゴーレム的にはおかまいなしだな

巨大な銃弾の雨あられを

かわし切れなくなった勇者。

仕方ない、

制限されているチート能力を使うか

時を止め、

勇者はドン・ファンを抱え、

瞬間移動でこの場を離脱する。

出来れば、

使いたくないんだがな


また借金が増えるから……

時が再び動き出すと

勇者はドン・ファンを地に置き、

浮遊能力で空を飛び回った。

三体のゴーレムは上空に向け

銃を乱射したが、

勇者の飛行能力が速く

的も小さいため当たることはない。

その巨大な弾丸はコロニーの内壁に当たり、

穴を空け、ただでさえ少ない空気を外へと流出させていく。

以前、別世界の魔王と戦い

異世界を一つ半崩壊させてしまったため


その後、神々によって

能力をいろいろと制限された

一撃で異世界を破壊させるような

禁忌魔法レベルの大技は

当然問答無用で封印されたが

それ以外のチート能力に関しては、

使えないという訳ではない

ただチート能力を

頻繁に発動出来ないように


チート能力を使った際には

神々からペナルティポイントが課せられる

このペナルティポイントというのは

早い話が借金のようなもので


この借金を返済するためには、

俺は請負人の仕事をどんどん受けて

報酬を得なくてはならない

今回のダンジョン探索調査の

依頼を断れなかったのも


この借金返済のことがあったからだ

まぁ、俺からすれば

重量課金制でチート能力を

使っているようなものだな

もうこれ、

ただの有料オンラインゲーだろっ

そして、いつもこ調子なので


依頼を受ける度に

借金を返済するどころか


逆に増えて行く始末

神々もそこまで計算して

この仕組みにしたのであれば

相当に腹黒いと言える

神の癖に、

悪徳高利貸しみたいなことしやがって

まぁ俺もいつか借金を

踏み倒してやる気満々なので


あまり神々のことを

言えたものではないのだが

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