勇者ビー・フライ

文字数 1,182文字

俺がっ! 

俺が真の勇者だっ!!

悪魔と契約し、

悪魔の力を身に付けて、

真の勇者になります義賊

今までは隠れるように

教会の屋根の上に居たが、


今度はその姿が見えるように堂々と立ち

俺はそう叫んでいた

今、俺の背中には羽が生えている

それは白くて一見

天使の羽根のように見えるが


ただ色が白いだけで、蝙蝠の羽根だ

その羽根で、

教会の屋根から空へと飛び上がり、

旋回しながら颯爽と地上に降り立った


自分の意志で出し入れ自由の

蝙蝠の羽根を付けてもらったのはいいが


蝙蝠の羽根というのはいかにも悪魔っぽい

自分が成りすまし勇者であることが

バレるのではないかと心配にもなる

大丈夫だって、暗いんだから

色さえ白けりゃわかりゃしないよ

空を飛べれば機動力が全然違うし

羽根があった方がいいのは間違いない


そこは仕方ないかと諦めることにした

そういや、

まだお前の名前

聞いてなかったな?

これからはパートナーとなる相手


名前ぐらいは知っておかないと

いろいろ不便だしな

あぁ、そうだねぇ……


うーん……


まぁ、サルバドルとでも

名乗っておこうかな

思いっきり、

今考えました感が半端ねぇな

まぁまぁ、いいじゃないか、

こっちにもいろいろ都合があるんだよ

偽名で契約しても

契約は有効なのだろうか?


そんなことを考えなくもない

それより君もさ、

そもそも泥棒なんだし


本名で勇者名乗る訳にはいかないでしょ?

シーフな、

もしくは義賊と言え

どっちも大して変わらないよ
だから源氏名考えてあげたよ
源氏名? なんだよ、それ
君、勇者ビー・フライって名乗りなよ

どういう意味だそれ?

おかしな意味じゃないろうな?

君のように、

ハチの代役を務めるハエの名称さ

君も勇者の代役を務める

シーフなんだからさ

へぇ……

その名前、

絶対使わねぇな、多分

悪魔サルバドルと

そんなおかしな会話の末


俺は勇者ビー・フライとして

今魔王軍の前にその姿を見せたのだ

火炙りの燃え盛る炎を

魔法で自在に操り


その炎を使って逆に

処刑を見守る魔王軍兵士を攻撃する

ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!

身体に火が着いて

逃げ惑う魔王軍兵士達

なんで!?

なんで俺が火炙りにされてんのよ!?

これで、

火炙りにされる奴の気持ちが

ちょっとは分かったんじゃねえのか

その隙に俺は

柱に縛り付けられている

サンタナの拘束を解き、救出

それから二人で他の九名の者達を助け出す


そこに駆け付ける

魔王軍兵士の増援部隊

俺は広場に設置されている

勇者でなければ引き抜けないとされている聖剣


その紛い物をこれ見よがしに


まるで大々的にアピールするかの如く

引き抜いてみせた

俺がっ! 

俺が真の勇者だっ!!

再びそう叫んだ俺は

増援部隊に向かって行き


手に持つ剣で

次々と兵士を切り倒して行く

確かに、悪魔サルバドルから

もらい受けた力は滅法強かった

シーフであり、

身体能力には自身があったが


そんなレベルではない、

次元が違う強さだということが

俺にはハッキリ分かった

……これは、本当に、

勇者に等しい力かもしれない

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色