無限の分岐点

文字数 1,616文字

やはり無人か……

巨大ゴーレムの胸部、コックピットを

なんとか無理矢理こじ開ける勇者。

そこには操縦席があるだけで


人の、操縦者の姿はなかった

自律式AIなのか

それとも霊魂による巨大ゴーレムなのか


そこまでは専門家ではない俺に、分かる筈もないか

一応調べるために

ゴーレムのコックピットに潜り込み、

そのシートに座る勇者。

へぇ、こんな風になってんだな

子供の頃昔見たアニメ、

それに出て来た巨大ロボット


少し童心に帰った気分だな

どうせ、もう動かないだろ

そう思って

コックピットにあるボタンを

とにかく押しまくってみたが、


やはり反応はない

やはり、霊魂により

ゴーレム化していたのか?

すると突然コックピットの中で

赤い照明が激しく点滅しはじめ勇者を照らし出す。


サイレンのような音と


何と言っているのかは聞き取れないが

耳慣れない言語が何かを伝えている

おそらくは何かの警報であろうことは、

この緊迫感ある状況からして間違いない

勇者には嫌な予感しかしない。

やべぇ、もしかして、

自爆スイッチ押したか?

勇者がコックピットから外に飛び出そうとすると、

それまでは開いていたコックピットのハッチが勝手に閉まる。

こいつ、閉じ込めやがったっ!

それからしばらくすると

緑の巨大ゴーレムは大爆発を起こす。

それはコロニー全体を巻き込む大爆発で


自爆スイッチのよるものなのか


機体が完全にショートして機能停止したため、

動力源である核融合炉が暴走を起こして爆発したのかは定かではない。


宇宙に浮かぶ球体。

その半透明の完全密封された球体シールドの中には

勇者と気絶したドン・ファンがいる。

巨大ゴーレムのコックピットに

閉じ込められた俺は


転移を使ってコックピットを脱出

すぐにドン・ファンを拾うと

球体シールドを展開


そのまま宇宙へと転移して

なんとか難を逃れることは出来たが……

 ̄ ̄

とは言え、この球体シールドの中


空気などは限られたわずかしかなく

すぐに酸欠になることは明白

いやそれよりも

球体シールドを展開している

俺の力が尽きるのが先か

もう俺達が生き残るには

元の世界まで転移して戻るしかない

もしここが俺の仮説


人間世界の未来のパラレルワールドであるのなら

元の世界に戻ろうと思えば

ただ異世界間を転移するのとは訳が違う


時間を越えなくてはならない

時空転移は中々の大技であるため、

多額のペナルティポイントが発生するのはもはや疑いようがなく


俺としても憂鬱で仕方がない

しかも二人分
 ̄ ̄

こいつ、このまま

ここに置いて行こうかな

そんなことを考えなくもない

勇者の目の前には

青い球体、地球が見える。

この地球は、俺が元居た

人間世界の地球なのであろうか

コロニーがあるぐらいなので


俺が居た時代より

未来なのは間違いないだろうが

果たして未来の地球に

人類はまだ生きているのか


それともこのコロニー同様

もはや人が住めぬ地となっているのか

俺はこうして異世界を渡り歩き

流浪するようになってから


異世界とは、

地球もしくは人類が歴史の中で分岐し続けて来たパラレルワールドであると考えるようになっていた

俺が元居た人間世界は

物質至上主義文明に極振りした地球と人類の姿であり


ファンタジー世界は

地球と人類が精神至上主義文明に極振りした姿であると

その他にも、その瞬間瞬間で

地球と人類は無限に分岐をし続けており

パラレルワールドを生み出し続けている


それが無数に存在する異世界の正体であろうと思って来たのだ

しかし今回の件で、

勇者にはまた一つ考えることが増えた。

パラレルワールド以外に


人間が想像した架空の、空想の産物


それもまた異世界として存在しているのではないか、そう思えてならない

神々への信仰と同じで


人間が生み出した想像の異世界


それを支持する人間がいる限り

それは異世界として存在する

俺にはなんとなくそんな気がしている

それならば、

数多(あまた)の異世界が膨張するかの如く増え続けて行くのも


納得が出来るというものだ

そりゃぁ、勇者も

人手不足になる訳だ

勇者は眼前に見える

青く美しい星、地球を眺め続ける。

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