ユートピア
文字数 1,634文字
ここは地上の低所得者層エリア
いわゆる貧民街やスラム街と
呼ばれているような場所。
ここに生きる人間達は、
日々の生活の糧を得る為には
どんな事でもやる。
他人を騙し金品を奪う、
その為に人の命が奪われる事も
それ程珍しくない。
盗み、恐喝、傷害などなどが横行する、
そんな犯罪多発地域でもあった。
まんまと街娼の女に
有り金を巻き上げられたポップ。
お腹を空かせて歩いていても、
次から次へと柄の悪い連中に絡まれ殴られる。
ストリートギャングのような男達は
出会い頭にまず一発ポップを殴ってから、
そう質問した。
ポップが着けているゴーグルは
まさに自分が地下から出て来たセミ男だと
宣伝して歩いているようなものであり、
こうした所持金目当ての者達に
標的にされ狙われ続ける。
男達はそう悪態を吐きながら
ポップを何発か殴って
憂さを晴らした後、
何処かに去って行った。
道に倒れているポップ、
当然誰かが助けてくれる訳はない。
口から出ている血を拭って
立ち上がるポップ。
ポップは、自分の知識が間違ってインプットされているのではないかとさえ疑う。
それでもひたすら
地上を彷徨い歩くポップ。
店の女スタッフは
そう言ってポップを追い払った。
しばらくして、それでも
お腹が空いて仕方ないので
ポップは路地裏に出されている
ゴミ箱を漁り、残飯を食べる。
ポップはいつの間にか
貧民街を抜けて
高所得者層エリアに来ていたのだ。
飢えていたポップは
残飯をガッツくように食べ続けた。
すると店の厨房の
シェフが出て来て、
ポップの横っ腹を蹴とばす。
もちろんポップは
そんなことをするのははじめてなのだが、
他のセミ男達もこうして
ここで残飯を漁っていたのだろう。
何度も殴られ蹴られ、
意識が朦朧としているポップは、
そのまま表の通りへと投げ捨てられた。
高所得者層に住む人間達の
ポップに対する視線は冷たい。
結局、何処へ行っても
セミ男に対する
地上の人間達の偏見や差別は変わらなかった。
地上の人間達は
地下で暮らすセミ男達を蔑んで、
まるで非人間のような扱いをする。
確かに彼らセミ男達は
人によって造られた
特殊な人間ではあったのだが。