最強候補のコンプレックス
文字数 1,398文字
時の勇者。
彼はおそらく、
最強クラスのチート能力の持ち主であったが、
残念なことに本人はまだ、
そのことをよくわかっていない。
本人の生来の
自分に自信が持てない性格故か、
それとも時に関する能力以外が
全般的に大したことがないからなのか。
おそらくはその両方なのであろうが、
彼は自分が出来ることの凄さを
著しく過小評価していた。
確かに、昨今の異世界における勇者不足で
無理矢理に勇者にさせられた感も否めない。
それでもそれ等を
補って余りある能力であり、
決して本人が卑下する程のものではない。
彼もまた人間世界から転生して来た者であり、
転生の際に女神から
時を操るチート能力を授かった。
不運なことに、時の勇者は
その道程で魔王軍の幹部、悪魔騎士に狙われる。
森林に身を潜めていた悪魔騎士が、
突然襲い掛かって来た。
攻撃が当たるその直前に
勇者の能力の一つである『未来予測』が発動し、
彼は辛うじてこれを避けかわした。
時の勇者は、
そのまま時を止めた。
これも彼の能力の一つであり、
数秒の間だけ時を止められる。
バキッ!!
バンッ!!
そうネガっている内に
あっという間に制限時間が過ぎ、
時は再び動き出す。