押し掛け幽霊

文字数 1,712文字

地球防衛軍日本支部基地。

ここでは幽霊が出ると噂になっていた
誰か、誰か……

深夜になると、

声が聞こえて来て


暗い基地の中を黒い人影が徘徊ししているらしい

気づいた者が廊下に出ると

人影は何処かに行ってしまい

決して近づくことは出来ない

しかも警備システムは

その人影には全く反応しない

つまりその影は人間などのものではなく

霊的な何かである可能性が高い

この話は防衛軍基地の怪談として、

基地にいる人々を震えあがらせている


俺は神々からの依頼を受けて

この世界にやって来ていた

別に心霊の調査という訳ではない……

と思う

ここは俺が元々居た人間世界と

ほとんど変わらない


ただ科学力や技術力は

こっちの方が遥かに進んでいる

この世界では、

別の異世界からの侵略行為を受け


つい最近、

大規模な異世界間戦争が起こった

そこで、流浪の勇者である俺が

この世界を支援する


それが今回の任務内容だ

とはいえ、

戦闘支援ではないらしいし

アドバイザーということなのだが……
一体、何をするんだ?
まさか、本当に心霊調査か?


そんなある日の夜、

基地敷地内に大量の幽霊が発生する事件が起こった

……
……
……

通常霊感が強い人しか

見られないはずの幽霊が


ほとんど誰の目からも見える状態で


基地敷地の屋外に

百体?以上は押し掛けて来ていた

その場には人間の野次馬も

相当集まって来ており、

大騒ぎとなっている

おい、ちょっと

これはどういうことなんだ?

さ、さぁ?

俺が野次馬達に尋ねても

みな首を捻るばかりであった

仕方ないので俺は

幽霊とのコンタクトを試みることにする

あのー、すいません
みなさん、幽霊の方ですかね?

声を掛けると

幽霊達は一瞬びっくと反応した

そして、集まって何やらひそひそ話をはじめる
……
……
……

しばらくして代表者に選ばれたらしい

落ち武者が前に進んで来た

……

落ち武者の霊は

体中に何本もの矢が刺さり、

片方の目玉が落ちかけている

なんでよりによって、この人なんだよ

はい、我々は

みなさんがおっしゃるところの幽霊です

幽霊は幽霊である自覚が無いと

聞いたことがあるが


この言い回しは

そういうことなのだろうか

こんなところでどうかしましたか?

問いに返って来た答えを聞いて

俺は耳を疑う

ここに来たら

新しい肉体が貰えると聞いてきたもので

そちこちの墓場で、幽霊の間では、

今もっぱらの噂になってるんですよ

は?
事態が掴めずしばし呆然とする勇者。
一体誰がそんな噂を流したというのか

考えてみても仕方ないので、

ここは素直に聞いてみるしかないな

一体誰がそんな噂を流したか

ご存じないですか?

そこに甲高い女の声が割って入る。
いやぁ、ごめんごめん
その噂を流したの、あたしだからぁ
お前かぁっ!

この女は、地球防衛軍きっての

マッドサイエンティスト・一条遥

見た目は女子高生なのに

ある意味で俺よりやばい

戦死者をゾンビ兵にして

戦力にするというのも、

こいつのアイデアらしいからな


頭のネジがぶっ飛んでいるのは

間違いないだろうな

ゾンビ兵とは、その名の通り


戦争で死んだ人間の内、

外的損傷が少ない者を再生医療で修復した上


ゾンビのように操り

兵士として戦力にするというもの。

いやぁ、再生医療で

肉体の修復は完璧なんだけどさぁ

肝心な魂が無いからぁ


まだ動かない訳なんだよねぇ

そこでぇ

幽霊の方々に憑依してもらってぇ


魂の代わりになってもらえばいいかなぁと思った訳なんだよねぇ

なるほど……

それで俺に支援要請が来た訳か

確かに俺も

以前似たようなことをやったことがある


その時はクローン人間だったが

とりあえずこいつが


そちこちの墓地で、

ここに来たら新しい肉体が貰えると触れ回ったらしい

女子高生が墓場で何やってんだか
まぁ、それでこんなに大量に幽霊が集まって来たということだ

幽霊達がここに辿り着くまでに

一体どれだけの人が彼らを目撃したことだろうか

今晩の幽霊目撃情報の多さに、

今頃世間はパニックになっているに違いない

スーパーオブザーバーの立場からぁ

勇者にはアドバイスをしてもらおうかと思ってぇ

なんかないのぉ?
まぁ、そうだな

俺の失敗談から言えば

憑依する幽霊の人格は大事だな
そうなんだぁ……

へえぇ……

じゃぁ、これから

幽霊の面接試験をはじめようかぁ

は?
という訳で……


人間の肉体を賭けた

幽霊の面接試験が実施されることになった

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