天上天下唯我独尊
文字数 1,603文字
まさか、こんなところで、
てめぇとケリを着けられるとはな
……
尾形よぉっ……
だがそこには、かってのライバルである
そして
俺の聖剣エクスガリバーを
見せてやんよっ！！
そう言ってヤンキー勇者が取り出したのは
片時も離さず、いつも手にしている釘バット。
尾形よぉ……
てめえは、本当に
全く学習しねえ、馬鹿だなぁ、おいっ
気が済むんだっ？
あぁっ！？
土の中に隠れていた魔王軍の兵達から
不意打ちを喰らうヤンキー勇者。
またしても菊池の卑劣な罠に嵌められたのだ。
タイマンじゃねえのかっ！？
汚ねえぞっ！ てめえっ！！
毎度毎度、そんな言葉を素直に信じる、
おめえが大馬鹿なのさっ！
隠れていた魔族達が、何十、何百と
次々に地上へ姿を現す。
前世の俺とは訳が違うぜ……
ヤンキー勇者が特攻服の前をガバッと開く。
そこには真っ赤な裏地に刺繍されている龍の姿。
ヤンキー勇者がそう叫ぶと
刺繍されていた龍が、実体となり飛び出して来る。
ヤンキー勇者は龍を召還したのだ。
ヤンキーと言えば
龍が大好きと相場が決まっている。
ヤンキー的には隠れお洒落な学ランの裏地にも
龍の刺繍は大人気。
スカジャンの後ろの刺繍も龍だし……
特攻服の裏地が龍であっても不思議はない。
何故そこから召喚されるのかは不思議だが。
ちなみに、西洋風ドラゴンではなく
和風の龍でなければ認められないらしい。
いくら龍を出したところで
こんだけの数を相手に
一体何が出来るってんだぁっ？
おらぁっ！！
次第に膨大な数の敵を前に召還した龍も傷つき、
ヤンキー勇者も押されはじめる。
仕方ないっ……
こうなりゃ、
アレを出すしかないっ……
ヤンキー勇者は
右手を天に突き上げ叫ぶ。
ヤンキー勇者が唯一知っている難しい言葉が
『天上天下唯我独尊』であり、
彼はハイパーモードになる時に
雰囲気でその言葉を使っている。
髪の毛が黒から
金髪のリーゼントに変化するヤンキー勇者。
これだけであれば、
柄の悪いヤンキーから
金髪のさらに柄の悪いヤンキーに
なったようにしか見えないが
ヤンキー勇者は、
さらに続けて叫ぶ。
『聖衣、初代総長の特攻服』
これこそがヤンキーにとっては
命よりも大切な
歴代総長に受け継がれて来た
初代総長が使っていた
真っ白な伝説の特攻服……
これを着ると
気合と根性が何倍にも増幅され、
ヤンキー勇者の能力が向上するという……
根性論の塊のような装備に他ならない。
ハイパーモードになり
金色に光り輝くヤンキー勇者。
敵ながらその姿に
感嘆の声を上げる菊池。
ヤンキーはこういうのには
割と素直に驚く。
これが俺の究極奥義
『天上天下唯我独尊』だっ！！
ハイパーモードのヤンキー勇者、
聖剣エクスガリバー（釘バット）で
並み居る敵を次々と殴り倒して行く。
もはや剣でも何でもなく
ただのバットでしかない
聖剣エクスガリバー。
なんて強さだっ……
覚悟しろ、菊池っ！！
菊池をジャイアントスイングで
何度も回転させてから投げ飛ばし、
落ちて来たところを
聖剣エクスガリバー（釘バット）で打ち返す。
やはりただのバットでしかなかった
聖剣エクスガリバー。
ヤンキーが
プロレス好きなのも相場であり
そして、無駄に動きが大きい
大技が大好きと言うのも決まっている。
俺たちの戦いは
まだまだこれからだぜっ！！
