能力=魅了(チャーム)
文字数 1,126文字
血を拭うように
勇者は手に持つ剣を振るった。
その剣圧だけで
最前にいた魔王軍の兵士が吹き飛ばされる。
横にいる、試し切りで腕を落とされ
泣き崩れる女兵士のことなどは
もう歯牙にもかけていない。
勇者は瞬時に
コンソールパネルを確認し、
現在使える能力を掌握した。
魔王軍進攻隊隊長は、
勇者を警戒しつつ指示を出す。
指示に従い前面へと出る弓部隊が、
勇者目掛けて一斉に矢を放つ。
唸りを上げ、空を切り裂き
勇者へと迫る
あわや、勇者に突き刺さるかと思われた瞬間、
戦闘中であった人間の男が
勇者の前に飛び出して、
その身を盾にして庇った。
庇った男の体には
幾つもの矢が突き刺さる。
連射により続け様に放たれる矢群。
勇者の前には次々と人間が、
いや人間だけではなく
魔族の兵士までもが、
その身を投げ出して勇者を庇う。
勇者の周りを取り囲む
魔王軍の兵士達。
だが、敵として
交戦しているという訳ではない。
先程指示を出していた
進攻部隊の隊長に勇者は語り掛ける。
Lv.制限が掛けられている為、
現状で使える能力やスキルは
それ程多くはない勇者。
最初期から使える能力である『魅了』でも
潜在能力が高い勇者が使えば
この程度の兵士達には
十分に通用する手段となり得る。
歯軋りする進攻軍の隊長。
苦渋の決断を迫られている姿を
嘲笑うかのように勇者の挑発は続く。