【急募】勇者募集中!お年寄りから幼女まで、誰にでも出来る簡単なお仕事です
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文字数 1,518文字
春は、お花見をして、
ムショの外に遠足に行って、
運動会なんかもあった
夏は、花火大会や夏祭り、海やプール、
キャンプにも連れて行ってもらった
冬は、クリスマス、大晦日、お正月、スキー、バレンタインと
イベントがいっぱいだった
毎年毎年、おっかさん達と
そんな楽しい一年を過ごして
本当に幸せだった
こちらの世界は毎日が夢のようで
元居た世界のことが
だんだん遠い昔のように思えて来た
もしかしたら元居た世界のほうが
夢だったのではないかと
思いはじめるほどだ
おっかさん達と一緒に
ずっといつまでも暮らしていられる
僕らはそう思っていたんだ
あの事件が起きるまでは……
それは僕らにしてみれば
突然の出来事だった
大人達からすれば
そうではないのかもしれないけど
『異世界人』の軍勢が侵略行為を再開して
ムショ内のそちらこちらに敵が現れて
大人達は戦っている
彩おっかさんは僕らを
シェルターまで連れて来た
いいかい、
あたし達がここを開けるまで
絶対ここから出てきちゃいけない
ここはこの施設の中で
一番頑丈なところだからね
彩おっかさんはそう言うと
部屋をロックして行ってしまう
人々が戦争に明け暮れて
住むところも食べる物もなくし
わずかな食料を奪い合って生きていく
あの惨めな生活を
マトは震えて泣き出した
僕らが行くところに
戦争がないところはないのじゃないのか
僕らはずっと一生戦争から
逃れることは出来ないんじゃないか、
そんな気さえして来る
何より心配だったのは
おっかさん達だった
本当のお母さんお父さんが
死んでしまった時のことは
何も思えていなかったけど
おっかさん達を失うことは考えたくもなかった
あんなに優しいおっかさん達が
なぜ死ななくてはならないのか
戦いが終わってシェルターが開いた時、
みんなはおっかさんに抱き着いて泣いた
彩おっかさんも泣きながら
僕の頭を撫でてくれた
それからしばらくは
機械を使えない生活を送ることになる
施設の動力炉が破壊されて
電気が使えなくなってしまったからだ
大人たちはみんなで
水や食料を確保するのに必死だった
僕ら子供も大人を手伝った
半魚人と人魚は
大人達と魚を捕りに海に行く
僕とマトも
大人達の水の調達について行って
一緒に手伝った
夜が寒い日は、
おっかさんと子供達
みんなでくっついて寝る
元の世界に居た時は、
戦争が終わった後は
こんな感じじゃあなかった
みんなが売り飛ばせそうな
金目のものを探し回ったし、
食べ物を奪い合った
それで殺し合いが起こったりしていた
でもここではみんなが一緒になって、
なんとかしようとしていた
すまないね、
また戦争に巻き込んで、
こんな苦労をさせちまって
そう言うおっかさんも居たが、
元の世界とは全然比べものにならない
同じように戦争が終わった後なのに
みんなが居たからなのか、
全然何でもなかった
その後、施設が元通りになって
しばらくしてから
この先戦争が激しくなるから、
僕らがここにいるのは危ないということらしい
夜眠れなくてトイレに行った時
途中の部屋から
大人達の声が聞こえて来た
このままここに居たら
あの子達はまた戦争に巻き込まれてしまう
そうなれば
あの子達が元居た世界と
何も変わらなくなってしまうんですよ
でもね、
あたしはあの子達に約束したんだよ
あの子達のおっかさんになるって、
一緒に居るって
僕は彩おっかさんを
責める気にはなれなかった
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