三組の三ケ崎君

文字数 1,542文字

一方、三組の三ケ崎君。


異世界メッセージにうっかり返信してしまい、車に轢かれるのが怖くて、学校を休んで家に籠もっているともっぱら噂されていたが、実際その通りであった。

夜中にLINEに届いたメッセージ


異世界からの勇者募集に

夜特有の妙なテンションで応募してしまったものの……

朝起きて改めて冷静になって考えると……


異世界に行くなんてとんでもない

高校生の自分が


親も家族も友達も捨てて


全く違った環境で一人で暮らして行くなんて、どう考えても大変だし

彼は現在の環境にそこまで

辟易としている訳でもなかった。

……そうだ、そうだよ


このままバックれてしまおう

三ケ崎君はそのまま

バックれることを決意する。

それでも、不安で仕方がないので、

スマホで異世界メッセージのことを改めて調べてみる。

返信した者は

必ず数日以内に車に轢かれて死ぬ……

青ざめる三ケ崎君。

そ、外に出なければ

車に轢かれることはないだろう……

それからはずっと家に籠り切り。


部屋の鍵を閉め、一切部屋から出ようともしない。

親や大人に相談しても

頭がおかしくなったと

思われるだけだろうし……

むしろ、無理矢理外に引きずり出されてしまうかもしれない……


話さない方がいいだろう……

両親は息子が

突然引きこもりになったと、

オロオロするばかり。


異世界の神々の仕業で

高校生が一人引きこもりになったというのは

どうにも妙な話でもある。

部屋に閉じ籠り

膝を抱え震える三ケ崎君。

外に出たら死ぬ


その恐怖の感情に支配されたまま数日が過ぎた……


もはや今はノイローゼのような状態だ……

部屋の窓は

カーテンを閉め切りにしていたけど


その隙間から

誰かが覗いているような気がして


気になって仕方なくて


何度もカーテンに

隙間が出来ないように閉め直した……

背後に誰かが居るような


背中にそんなゾワゾワする気配を感じるので


部屋の壁に背中をぴったりと付けて過ごす……

このまま行くとその内

幻聴が聴こえ出すだろう……


それぐらいまでに追い込まれている……

ここ数日は、ロクに寝てすらいない……

壁に背を付け膝を抱えて丸まって居ると、

三ケ崎君はウトウト居眠りをしはじめてしまう。


すると壁の中から徐々に

骨の手が出て来て彼の顔に触れる。

うわぁぁぁぁぁぁっ!
そこで三ケ崎君は目を醒ます。
な、なんだ、夢か……

眠気覚ましに

熱いお風呂にでも入ろう……

数日ぶりに部屋から出て

お風呂に入ったのだが、

そこでもやはり居眠りをしてしまう。


するとやはり湯船の中から

骨の手が出て来て彼の顔に触れる。

うわぁぁぁぁぁぁっ!
そこでやはり三ケ崎君は目を醒ます。
さ、さっきと、同じ夢……

これでは眠ることも出来ない……


異世界の神々は自分を寝かせないで


このまま衰弱死させて

異世界に召喚するつもりなのか?


慌てて震えながら

風呂を出て着替え

自分の部屋に戻る三ケ崎君。


だが自分の部屋のドアを開けると、

そこには大きな人影が立っていた。

……
うわぁぁぁぁぁぁっ!

その人影は全身真っ黒な衣装の中から

髑髏の顔だけを露わにしている。

……

黒いローブにフードを被り

髑髏の顔を覗かせている、

手には大鎌を持つ、

人が思う死神の姿そのまま。

うわぁぁぁぁぁぁっ!

三ケ崎君は何度も叫びながら、

その場から逃げ出す。

……

死神もまた彼の後を追って行く、

しかし手にする大鎌は全く振り回さない。

死神に追い掛けられ、行き場がなくなり

家の玄関のドアを飛び出した三ケ崎君。

!!
家の前を通りかかったトラックに轢かれる。

死神はその様子を

立ち尽くしてじっと見ているだけ。

ワイもなぁ、

これでも『神』が付く関係者だから

断り切れなくてやってるけど


こういうやり方は

正直どうかと思うわ

死神にすら批判されてしまう

神々のやり口。

きっと、神々の沽券に関わるんやろなぁ……

そこまでトラックに轢かれることに

こだわらんでもいいと思うんやけどなぁ……

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