最強のお年寄り

文字数 1,465文字

これは一体、どういうことなのだっ!?

あー?

あんだって?

ここが魔王城であってるんだべ?
あれが魔王なんやろか
あら、やだ、

魔王ってイケメンじゃないの

うちの孫そっくりだわぁ
クソッ、神々め


お年寄りを勇者として送り込むだなんて……

我が輩が、お爺ちゃん、お婆ちゃんに育てられた


年寄りっ子だと知っての仕打ちか!?

クッ、なんという卑劣なっ……


これでは肉の盾も同然ではないかっ!?

ご老人達、異世界に行くと

それはもうメチャクチャに強かった。


老人が強いと言うよりは、

プログラマーの勇者が書き換えた

この異世界のバランス調整がデタラメ過ぎた。

平均年齢八十歳の超高齢パーティー

ただ何もせずに杖を突いて歩いているだけで、我が魔王軍を次々と撃ち破って来た……

杖を突いて歩く

勇者一行も珍しい……


しかし、しかしだ……


ここまで来られてしまった以上、

我が輩も心を鬼にしなくてはならん

魔王の合図で一斉に攻撃を仕掛けて来る魔王軍。
!!
!!
!!
!!
敵が攻撃して来るとスキルが発動する
『お年寄りを大事にしましょう』
空中に文字が浮かび上がり、

バリアが張り巡らされ、

敵の攻撃をすべて跳ね返す。

敵が仕掛けたありとあらゆる攻撃を

必ず本人に跳ね返す究極のバリア、だと!?

物理攻撃であろうと魔法であろうと

例外ではないというのかっ!?

……

こんなお爺ちゃん、お婆ちゃん達を

この世界に送り込んで戦わせておいて、


『お年寄りを大事にしましょう』とは


神々め、片腹痛いわ……

間違い無く、我が輩の方が

お年寄りを敬っている


そこは断じて譲れんっ!

しかも、お年寄り本人達は何もせず

井戸端会議をしているだけではないか……

この、あいだ、ねぇ……

あー?

あんだって?

いや、だから、ねぇ……

あー?

あんだって?

いや、すごいな、これ

本物だべか?

偽物っちゅうことはないやろ?
うちの孫そっくりだわぁ

喋る方も何を言っているかよく分からないし、聞く方も耳が遠くて聞こえない……


もうお喋りしなくてもいいのではないか? そんな気がして来なくもない……


年寄りっ子だから

そっちも気になる……


だが、それならばいっそ

攻撃しなければよいのではないか?

その場合は、老人達のスキルが

自動で発動する仕組みになっている。

『よしこさん、ご飯はまだかね?』
ご飯はさっき食べたでしょっ!
ご飯はさっき食べたでしょっ!
ご飯はさっき食べたでしょっ!
ご飯はさっき食べたでしょっ!

な、なんということだ……


このスキルが発動すると

「ご飯はさっき食べたでしょっ!」

とツッコミながら


必ず強制的に攻撃させられるのか!?

つまり敵は

必ず攻撃を仕掛け


必ず攻撃を跳ね返され


必ず自滅して行く……

まるで存在するだけで敵を殲滅して行く

兵器のようなものではないか……

高齢者で構成された

勇者パーティーを見て、

魔王は改めてしみじみ思う。

でもこれ、

この仕組みだったら、


別に年寄りじゃなくても、

誰でもよくないか?

なんだったら、

犬とか猫でも問題ないだろ?


スキル名を『動物愛護』とかにしとけば

そもそも、何故勇者は

人間でなくてはならないのか、

そんな疑問すら湧いて来るではないか……

勇者不足が深刻過ぎて

ついに人間のお年寄り達までも

転生勇者の対象にしはじめた神々。


通常であれば当然無茶な話なのだが


プログラマーの勇者が

異世界の(ことわり)を書き換えてしまえば

もう何でもありで

誰が勇者をやろうがもはや関係ない。

人手不足で、高齢者もどんどん働きましょうと言う日本と同じで、


神々も高齢者のみなさんに

死ぬまで働いてもらおうということか。


このお年寄り達の場合、

既に一度死んでいるので


死んでからも働きましょう、

といことになるのか。

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