【遅報】勇者さん、やっぱり異世界転生のお約束を知らなかった

文字数 1,752文字

ふざんなよっ!クソババァ!

もう少しでミッションクリアだったのによっ!

ちょっと!天我くん!

あなた何してるのっ!

何してるか分かってるのっ!

二人の声はまったく同時に発せられたが、

どん引きしたのはアリエーネで間違いない。

――えっ!? エェッ!?

どういうこと!?

なんでこの子怒ってるのっ!?

逆ギレしてんのっ!?

女神であるにも関わらず

アリエーネは恐怖さえ覚え戦慄する。


怒っているということは、

罪の意識がまったくない

ということに他ならないからだ。

――もしかして

罪の意識とか


ゼロ??

ちょっと、

これは一体どういうことなの?

落ち着いてアリエーネは

天我の真意を問う。

しかし、あの能力スゲエな

昨夜、風呂に入る時、

ババァが言ってたこと

思い出したんだよなぁ

『銭湯でも転移させられるんじゃねえか』


そう言ってたなって……

それ出来るなら

この能力で核ミサイルも出せんじゃね?

核ミサイル転移させて落とせば、

すぐ終わんじゃね?

まぁ、そう思ったって訳だ

――えっ!? 

ちょっと待って!?


これ、あたしのせいってこと?


あたしの余計な一言が原因でこうなった

みたいな流れ?

――そもそも、あれって、


転移強奪てんいごうだつ』って


そんなことも出来るの?

禁忌の能力というのは伊達ではない。


誤った能力の使い方をして

滅んだ異世界は数知れない。

そんで、他の能力調べてみたら


バリアみたいなシールドとか

放射能耐性とか高熱耐性とかもあるし

よく分かんねえけど、

いろいろ能力とかスキル使えば

いけんじゃね?ってなった訳よ

……やっぱり俺は

なんともないみたいだな

……だ、だからって、

あんなことしちゃダメじゃない

もはや困惑しているのはアリエーネの方で

何がどうなったら、

こんなことをやらかせるのか

理解出来ないでいる。

魔王とか、魔族とか、魔物とか


まぁ、よく分かんねえけど

とにかくそんな奴等を倒しゃいいんだろ?


手取り早くていいじゃねえか

そもそも、

よく分からない奴にやらせているのが、

根本的にダメなのではないだろうか。

でもあんなことしたから、

あの世界が滅んでしまったじゃあないの

――もう頭の中パンクしそう…

怒る気力も出ないわ……


あたしちょっと泣いちゃうかも

さすがに、世界を、

人類を滅ぼしちゃうのはダメよ……

おい、クソババァ
そういう大事なことは最初に言えよっ!!
なんではじめから言っとかねえんだよ、クソがっ!!

人類滅ぼしちゃダメとか

聞いてねえし!!

最初から言えし!!

――いや、それ普通に分かるからっ!

そんなこと言わなくても!

むしろこんなことする方が

普通じゃないんだからねっ!

むしろこんなことやらかすなんて

思ってもみなかったわよっ!

なんで逆ギレしてんのよ!

キレたいのはこっちなんですからねっ!

さすがに女神として

アリエーネは自重したが、

ストレスは半端ない。

――前任者が失踪したのって

こういったストレスからなのかしら?

とりあえず……


今回のはリセットして

元の状態に戻しますから

なんだよ、

最初からやり直しかよ


ふざんなよ、クソババァ

よかったわ


万一のことを考えて


あの異世界のデータ、

バックアップ取っておいて……

――まったく、

なんなのよ、この子は……

異世界転生のお約束が

まったく通用しないんだもの


初手核とか、普通有り得る!?

有り得なくない?

――目的しか伝えてなかったから

手段を選ばないで


効率良く最短で

目的を達成出来る方法を選んだってこと?

――まるでゲーム感覚みたいなんだけど

この子はゲームとかやらないし……

――ゲームと言っても、画面じゃなくて

スポーツ競技の方のゲームなのかしら


トップアスリート達の

さらにその中で

頂点に立ちたいと思い続けて来た

超強気で負けず嫌いという強靭なメンタル


それが、目的の為なら手段を選ばない、

非情で歪な彼の精神構造を

つくり上げたのかもしれないわ

――でも、なんで上位の神々は


異世界を知らない、

異世界転生のルールも知らない


この子を勇者に選んだの?


しかもあの極悪レベルの異世界の……

天我をあの極悪な世界に転生させる

この計画の立案者、


その主犯である神が誰なのか


アリエーネにすら

それは分かっていなかったが、

それでも、今回のことで

その意味は少し分かったような気がした。

――どうせ救えない世界ならば

徹底的にやらせてみよう、

そういうこと、なのかしら?

――正解に辿り着くまで

何度でもやり直せと、

そういうこと?

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