おっさんドラゴンと勇者トモノリ

文字数 1,178文字

お、ようやく

勇者が来たようやな

現場で勇者を待っていたおっさんドラゴン。


しかし、その前に現れたのは

まだジャージ姿の

超初心者にも程がある勇者だった。

ちょ、ちょっと待とうや、

なんで自分まだジャージなんや?

あまりのことにびっくりして

もはや怒ることすら忘れてしまっている。

いやすいません、武器買ったら、

防具買うお金がなくなっちゃって

むしろ、ジャージで

ここまで来られることにびっくりしたわ

ここ一応序盤の最終ステージなんやけどな……
目の前に居るのは、まだ幼さが残る子供。


おっさんドラゴンは死んで

残して来た自分の子供を思い出す。

自分、名前なんて言うんや?
トモノリです
ほな、勇者トモノリやな

いいか、トモノリ、

もうちょっと時間掛けて

ちゃんと装備整えて来なあかんわ

おっちゃんかて忙しいし

はようここ終わらせて

次の現場行きたいんやで

でもなあ、これじゃあかんわ


こんなんでやられてやっても、

この先トモノリがすぐ死んでまうわ


これじゃぁ、おっちゃん

やられてやることは出来んわ

おっさんドラゴンは

勇者トモノリに

また出直して来るように言い聞かせた。


それからしばらくすると

今度はちゃんとした防具を着けて

やって来る勇者トモノリ。

すいません、ドラゴンさん、

これで今度は大丈夫でしょうか?

おぉ、トモノリか、ええやんけ

ちゃんと

『竜殺しの剣』は持って来とるか?

『竜殺しの剣』?

なんや、トモノリ、

そんなんも知らんと

ここで勇者やっとるんかいな?


そらあかんわ

ええか、

まず西の町に行って、

竜殺しの剣について教えてもらってやな

転生エージェントのゼウスはんからは


次の現場がキャンセルになったから、

しばらく空き時間が出来たという連絡もあったし

ちょうどいいから


この何も知らな過ぎる

超初心者勇者のトモノリに

いろいろ教えてやってもええやろ

この初心者勇者トモノリには、

最初に会った時から

何処か放っておけない感じがあり、

この先のことが少し心配でもあった。


それからしばらくして

おっさんドラゴンの元に

またやって来る勇者トモノリ。

今度こそ手に入れました!

どれどれ、

ちょっと見せてみぃ?

おっさんドラゴンは

トモノリが手にする剣を確認してみる。

トモノリこれ、

『竜殺しの剣』やなくて

『神殺しの剣』やでっ!

えっ? 違うんですか?

こんなんどう考えたって、

こっちの方がレア中のレアやろ


普通にやってたって

手に入るもんちゃうで

まぁ、でも、これでは

ワシは殺せんのやけども

そ、そうなんですか……

こんなん超貴重なレア物やから、

お前はホンマにラッキーやぞ

がっかりするトモノリを

励ましていたおっさんドラゴン、

そこで気づく。

トモノリ、お前もしかして

LUCKがメチャクチャ高いんちゃうか?

それなら

ジャージ姿でここまで来たのも


この何も知らなさで

ここまで生き残って来られたのも


一応は説明が付くわ……

トモノリはLUCKの高さだけで、幸運だけで

ここまで生き残って来たのだった。

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