バイオロイドの正体

文字数 1,320文字

あー、

気を失っちゃってるねー

大丈夫でしょうか?

防衛軍幹部である一条女史と春日は

倒れている少年の顔を覗き込む。


春日は親身になって

少年のことを心配している様子。

まぁ、

ちょうどよかったんじゃないかなぁ

潮時だったよねぇ

力に溺れそうになってたしぃ


テロ関係ない異世界人亡命者とかも

襲ちゃってたしぃ

まぁ、

ちょっとゾンビ兵強化し過ぎちゃった

というのはあるかなぁ

バイオロイドとされていたのは、

地球防衛軍が研究を進めているゾンビ兵であった。

ゾンビ兵とは、その名の通り


戦争で死んだ人間の内、

外的損傷が少ない者を再生医療で修復した上


ゾンビのように操り

兵士として戦力にするというもの。


まぁ、遺族のほうが

ゾンビ兵との同調率が高いんじゃないか

という仮説は証明されたわけだしぃ


脳波と思念の同調率は

過去最高値だったねぇ

そしてこの一条女史、

女子高生のような見た目だが


この少々ブラックな地球防衛軍の中でも

並ぶ者無きスーパーマッドサイエンティストで


今回のゾンビ兵計画の立案者でもある。

防衛軍は『異世界人』との戦争で

戦死した人間の肉体を再生して

ゾンビ兵として蘇らせた。

だが魂を持たぬ彼らには、

彼らの魂の代わりを務める人間が必要だった。


その役割はゾンビ兵の遺族のほうが

より効果的なのではないかとして


今回、実験、データ収集が行われていたのだ。

記憶消去ですかね?

春日は心配そうに一条女史に尋ねる。

そうなっちゃうよねぇ

同調率、過去最高値だから、

消去したくないんだけどねぇ

ただ、このままだと

トラウマ確定だからぁ


最後の辺りだけでも

記憶は消しとかないとねぇ

しかし最後に

ゾンビ兵がひたすら殴り続けたのは、

脳波によるものなのでしょうか?

春日はゾンビ兵の最後の姿を見て、

一条に問う。

そこはロマンでしょぉ

意志のないはずのロボが、

操縦者を置き去りにして


敵のボスを道連れに自爆します、

みたいなぁ


定番中の定番、お約束でしょう

そんなマニアックな解釈しなくても、

普通に兄弟愛とかでいいんじゃないですかね……

僕が目覚めると

春日さんが部屋に居て心配そうにしていた

気分はどうだい?

バイオロイドは既に

防衛軍が回収したということらしい

最後に何かを見たような気がするんだけど……
よく思い出せない……
とても大事なことだったような

気がするんだけど……

その後、

バイオロイドを使った仕事はなかった

そして春日さんの勧めで

僕は防衛軍の施設に引っ越すことにした

このまま、引きこもり生活をしながら、

防衛軍の仕事を手伝うということになるのかな

今の僕は……

なんでだかよく分からないけど、

何故かすっきりした気持ちだった


気持ちの整理が出来たのかもしれない

僕は今も自分の部屋で引きこもっている


場所は変わったけど

僕が住んでる棟は

引きこもりばかりが集められた居住区だそうで

食事は食堂のおばちゃんが

まとめて配ってくれている

みんなちゃんと食べなきゃだめだよー

おばちゃんはそう言いながら

みんなに配って回る

いつかおばちゃんに

お礼が言えたらいいな、とは思う

仕事は春日さんが持って来てくれる


ドローンの遠隔操作とか、

ネットのステマとか、デバッグとか

いつかまたバイオロイドを

操作出来ればいいなとも思う

戦争で兄貴が死んで、両親も死んだ
でもとりあえず僕は、

生きているようだ……

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