辿り着いた先

文字数 1,428文字

次に気がついた時には


僕は白っぽい部屋のベッドの上だった

zzz

ベッドの横には、

マトが寝かされている

……

離れたところで見慣れない服を着た

男の人達が話をしていた

ここが黄金の国・ジパングなのだろうか

後で聞いた話だと

僕達二人はゲートの前で倒れていたらしい

地球防衛軍の人が

見回りの際に僕達を発見して

病院まで運んでくれたそうだ

最近は僕達のように

あそこのゲートからやって来る難民が多いそうだ


あの噂を信じて、ここを目指して来る人が沢山いるのだろう

僕達はしばらく点滴で過ごし


その後はじめてこの世界の食事を取った

故郷でも

残飯しか食べていなかった僕達は


この世界の何を食べても

物凄く美味しく思えた

兄ちゃん、すげえ美味しいな


さすがジパングだな

ああ、だから言ったろ、

ジパングはすげえって

この後以降、

僕達が飢えてお腹を空かすことは

二度となかった

それから僕達は病院で


日本語を理解して話せるようになる処置を受ける

何日かして病院を退院すると


そのままムショと呼ばれる

地球防衛軍の隔離施設に連れて行かれることになった

異世界から来た難民達は

まだどんな危険があるか分からないから


この先しばらくは、地球防衛軍の施設で隔離されて暮らすことになるんだとか

移動の車で見たこの世界の街は

見たこともないような綺麗なものだった

僕が知っていたのは

戦争の後で壊れた街だけだから


余計にそう見えたのかもしれない

しかしこの世界にもまた

戦争が起こりそうでね

地球防衛軍の人達は

車を運転しながらそう言っていた

せっかくジパングに来たのに

また戦争に巻き込まれるのかと


僕は少し不安になる

……
……
……
……
……

隔離施設に到着すると、僕達の他にも

異世界から来た難民孤児が十人以上いた


半魚人に人魚、エルフ、竜人、鳥人、獣人など

君達、魔族だね?
僕等を見たエルフが聞いて来る

話を聞くと僕達とは違う異世界から来た

エルフらしい


みんな僕達と同じ処置を受けたのか

日本語が理解出来て、話せるみたいだ

……
……

……

……
……

僕達が連れて行かれたところには

女の人達がいっぱい居た

その真ん中に居た女の人が

一歩前に出て来る

……

その女の人は光輝いているように見えた


まるで天女様か女神様が

地上に降りて来たみたいだ

美しい天女様は笑顔で話しはじめた
みんな、よく来てくれたね

あたしのことは

彩おっかさんと呼んでおくれよ

天女様はそう言うと、しゃがみ込んで、

僕達一人一人を抱きしめはじめた

僕は緊張で胸がドキドキして張り裂けそう

天女様、いや彩おっかさんは


とっても柔らかくて、

温かくて、いい匂いがした

ここにいる女性スタッフ全員が、

今日からみんなのおっかさんだよ

本当のお母さん、お父さんの

顔さえ知らない僕等に


一気に何十人も

おっかさんが出来てしまった

なんだかすぐに馴染めなかった僕は

少し離れていたけど


年下の弟アクトは

おっかさんにすぐ抱き着いて甘えた

おっかさん!
はーい♪

そんな僕を見つけると

彩おっかさんは僕を抱きしめてくれる

こういうのは嫌かい?
彩おっかさんは僕の顔を目を見つめた
僕は俯きながら首を横に振る

そうかい、

あんたは少し照れ屋さんなのかね

気にしないで、

本当のおっかさんだと思って

甘えてくれていいんだよ

僕が今まで全く知らなかった、

ぬくもり、柔らかさ、優しさ、いい匂い

これがお母さんというものなのだろうか

お母さんがいる子はみんな

いつもこうしてもらっているのだろうか

そう思うとなぜだか自然に涙がこぼれていた
あんたも苦労してきたんだね

彩おっかさんは少し涙声でそう言うと、

僕の頭をずっと撫でていてくれた

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