超難易度の理由

文字数 1,634文字

おいおい、

またダンジョンを壊さないでくれよっ

今回限定相棒の冒険者であり

トレジャーハンターでもある

通称ドン・ファンは


勇者の乱暴な戦い振りを見て

心配になり声を掛ける。

だったら、最初から

俺に依頼するなっ!

その手にする大剣と魔法で

次々とモンスター達を撃退して行く勇者。

だがその戦い振りは、

ダンジョン内の壁や

通路、階段などにも一切お構いなしで、

モンスターもろともぶち壊して行く。

これでは相方が心配するのも

無理らしからぬところだ。

常に単独行動をしている俺が


こうして相棒と一緒に行動するというのは、非常に珍しい

そして俺がダンジョン内に

居ること自体も珍しい

そもそも俺は

ダンジョンがあまり好きではない

今ここは地中深くへと

潜って行くダンジョンなのだが


もし仮に地震でも起きようものなら

生き埋めになることは間違いない

天に向かうタワー式ダンジョンも同様で


あんないつ崩落しても

おかしくないような(いにしえ)の建造物に

よく好き好んで登るものだと


常々そう思っているぐらいだ

今回は勇者の仕事として

断れない依頼であったため


仕方なくドン・ファンと共に

ダンジョンに潜ってはいるが

若干イライラしているのが


こうした荒い戦闘スタイルとして現れてしまっている

この男は、勇者請負人をやっている。

そもそもここに来た経緯は


神々のエージェントを通じて

ドン・ファンから俺に

ダンジョン探索調査の依頼があり


どうしても断り切れずに


今ここでこうしてモンスター達と

戦う羽目になっている

以前もただ一度だけ

ドン・ファンと一緒に

タワー式ダンジョンを

探索しに行ったことがあるのだが


その時はダンジョンを

見事に全壊させた……

ダンジョンには遺跡的な価値もあるんだと、ドン・ファンには怒られたが


『そんな

壊れ易そうな物に入る方が悪い』


とりあえずそう言い返しておいた

今回のダンジョンはここの世界では

超難易度のダンジョンと呼ばれていてね

最深部まで到達すると

息が苦しくなり


体が宙に浮いたり

自由が効かなくなったりするんだ

ドン・ファンからは

事前にそう説明を受けていた

それだけなら

俺である必要がないだろ

球体シールドで空気対策でもすれば

それで済む話じゃないか?

それだけと言う訳でもなくてね……

最深部はどうも我々には

不思議な構造になっていて、

見慣れないような物ばかりでもあるし

いろんな異世界を見て回っている

流浪の勇者である君なら

何か分かるんじゃないかと思ってね


要は君の知見が必要という訳さ

元々断れる話でもないので


この超難易度ダンジョンに

挑むことになったという訳だ

もう長いことダンジョンを

下へと進み続けているが……

モンスター達が極端に

強いという訳でもなく


トラップが非常に悪質という訳でもない

少しレベルが高い

ダンジョンという程度か……

そう思いながら勇者は進み、

さらにしばらく長いこと経ってから

ドン・ファンは次が最深部であることを告げた。

この鉄の扉、

その先が最深部になる

息がしづらくなるから

注意してくれ給えよ

そう言うドン・ファンの後について

鉄の扉を通る……

その時、何とも嫌な予感に襲われる

扉を通った時の感覚


それはこれまでも何度も何度も感じた

非常に馴染みのあるもの

今の、ゲートじゃないのか?

勇者が戸惑っていると

ドン・ファンが声を掛ける。

見てくれよ、これをっ!

天にも左右にも

街らしき建物があって、何とも

不思議な構造をしているだろっ!?

冒険者としての血が騒ぐのか

ドン・ファンは熱く語っているが


空気が薄いのだから

止めた方がいいだろう

俺はそれを見たことがあった

厳密に言うと

実物を見たことはないが、

本や漫画、アニメで見て知っている

円筒状の内側に

びっしりと敷き詰めたかのような

都市と自然

空気が無い、体が宙に浮く、

そしてこの内部の形状と光景……

すぐに俺にはピンと来た
あ、ここ、宇宙だわ

所々の隙間から見える闇は

地の底に続く闇ではなく

宇宙(そら)そのもの。

ここ、絶対

スペースコロニーだろっ

勇者は超難易度ダンジョンの意味に

妙に納得してしまう。

そりゃ、宇宙なんだから、

超難易度ダンジョン扱いされるわ

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