レッド・レイン (4)
文字数 841文字
ごほうびに鼓をもらって、大喜びで山へ帰る。
両親の生皮を剥いで作った鼓だ。
どういう意味だ。
誰か、教えてほしい。
彼が泣くのは、両親が死んで「親孝行をすることができない」からだそうだ。
親孝行をしないので、野ブタやカラスにまでバカにされるからだそうだ。
「これで親孝行ができます」
そう言って、大喜びで鼓を抱いて帰る。
鼓に頬をすりすりなんかして。(これ人形浄瑠璃で見ると本当に可愛い。)
鼓に、どんな親孝行をするのだ。
誰か説明してほしい。
天皇家も藤原家も恨まない。
たまたま鼓をもらって持っていた義経に祟ることもしない。
〈焦がれた月日は四百年〉
コロナが始まって2年半だ。
四百年間――
何をしていた。
焦がれつつ。
〈照る日が ああ 恨めしく〉
太陽を恨んでいたのか。人間ではなく。
雨乞いのためと言って、父を母を生け贄にしたヒューマノイドたちではなく。
南都北陵は何をしていたのだ。
彼らが祈れば雨が降るんじゃなかったのか。
み仏の弟子らが。血の出るような修行をクリアしたハイパーエリート集団が。
千日眠らないで山を歩き読経するとか半端ないらしい。
そこを突破したほぼ神レベルの面々が。
鎮護国家のプロ集団が。
なぜ、最下層の
なんのための修行だ。
雨が降った喜びに、民草は声をあげ、御上に感謝する。
なぜ
いろんなベクトルが操作されていないか。
〈兄者は 知って た のか〉
〈兄者〉
〈知ってて いままで 黙って なぜ〉
〈おまえは小さかったから〉
兄も一つ違いだ。
〈その鼓が〉
〈その鼓が あのタンバリンだと〉
〈それは おれも 初めて知った〉
中空に、鼓が浮かんでいる。ゆっくりと回転し──
二つに分かれていく。
片方から水がしたたり、片方は火と燃えている。
武士道とは 死ぬことと見つけたり (『葉隠』)
何を見つけたのだ。
誰か、教えてほしい。