ヒア・カムズ・ザ・サン (22)
文字数 1,100文字
「あるの?」
「ないですけど」
「あはは」
「あははって」
完全無欠の素敵男子、欠点のない彼にも、弱点はある。こう見えてロバートくん、恋愛は若葉マークの初心者なのだ。おまけに照れ屋。恋バナというやつがどうにもこうにも苦手だ。
「ごめん」ひとしきり笑った後のカミーユが、ふっと表情を変えた。さびしげに。
「きみたちに心配かけてるのは知ってる」
不意打ちをくらって、ロバートの胸はずきりと痛む。
「なるべく早めに終わらせるから」
「何を?」
「この恋」
「そんな」息をのんだ。「そんなこと、できるんですか。それでいいんですか?」
「できるも何も、しないと」
「わたしだって、自分の立場はわきまえている。
天が許しても、きみたちが許してくれないよね……
源家の嫡子が白拍子の嫁になるなんて」
「え」
「え、そっち?」
「何が」
「あなたのほうが嫁?」
「うん」カミーユ、きょとんとしている。
(わからんぞ!!!)
世界の中心で叫ぶ、ロバートのピュアなハートなのだった。
安心したまえロブ。作者もわからん。
「ただね」
カミーユがひとさし指で、くいくい、と彼を招いた。〈近う寄れ〉ということだ。
テーブルの上に二人、顔を寄せるかたちになる。
「じつは」
「はい」
「自分で言うのも何だけど。
最近のわたし、絶好調だと思わない?」
「思います」
「ほんと?」
「ほんと」
ここは真実だから、力をこめてうなずく。
「そうなんだよね」とカミーユ。「もう仕事のパフォーマンスだだ上がりで、どうしようって感じなの。アイデアはどんどん湧いてくるし、それをさばくのもさくさくできるし。めちゃくちゃはかどる。
いいことしかない」
さらっと言っている。デレてない。むしろ不思議そうに首をひねっている。他人事みたいに。
「これは、ちょっと惜しいなと」
たしかに、惜しい、とロバートは思う。
だって最近のカミーユさま、なんか無敵感すごい。
こんなに自信に満ちて安定した彼女、ぼくでも見たことがない。
おきれいにもなられた。もとからおきれいだったけどそれどころじゃない。プラスのオーラがつねに後光みたいに放たれている。
九郎判官どのの連戦連勝のときを思い出すな――あっ!
もしかしてアリアさん。
ハイパーあげまん?
銀河系レベルの??
いきなり銀河はどうかと思うが、作者が心配する前に、ロバートは立ち上がっていた。
「何?」カミーユが不思議そうに見上げる。
(もしかして)
(この恋、応援したほうがいいのかも?)
(鎌倉幕府の発展強化のためには?)