もっとロンリーハート (8)
文字数 1,219文字
「いやおれ
「そして院のパレス一歩出たとたんに待ちかまえてたセキュリティガードの人たちにぼっこぼこにされたんですよね」
「この麦飯まじうまいわー」
「話そらさないでください。わたしもう面倒見きれません。実家に帰らせていただきます」
「嫁かよ」
「けっこんしてあげません」フロリアンとクリストフが同時にむせかえったが、美童はまゆ一つ動かさない。「これで何度めですか、わたしが上人さまレスキューするの。三度め? 四度め?」
「悪い」
バルタザール、いったん飯つぶを置いて、しんみょうに手を突いた。
「そろそろ百日たつからやつらも掘り出しに来ると思う。おれの骨拾うつもりで、はは。そしたらマッハで帰ってくるからさ。ね。
みやげ何がいい?」
「いりません」
「あの……」クリストフがおそるおそる口を開いた。「『掘り出す』って?」
「言ったろ、おれの本体生き埋めになってるの」平然と笑うバルタザールだ。「土牢ってやつ」
アリアとクリストフがさらわれたと知って頭に血がのぼったバル兄は、無我夢中で御所に乗りこんだ。憶えておられるだろうか。(巻一のほぼ末尾「佐藤くんとあたしアゲイン (8)」)
後白河院ローレンスからは寛大な処遇を受けたものの(巻二「あなたの庭では遊ばない (4)~(7)」)、外に出たとたんにとりかこまれた。多勢に無勢。さすがの荒法師も縄を打たれる。
本来なら不敬罪で即刻死罪のところ、
「
ようするにお坊さんだから首をはねたりすると罰が当たるの怖いというチキンな理由で、生き埋めにされた。穴に突き落としてがっつり土をかける。そのまま百日放置。食べ物も水もなし。
ふつうは死ぬ。
ところが、土中でもうろうとしていた文覚の前に、薬師如来のお使いの天部が現れて、
「ボーッと埋まってんじゃねーよ!」
と一喝した。
「出てきて経でも読んで百日待ちなさい、との薬師如来さまのお達しです」
「は? どうやって出るんすか」
「つまんねーヤツだなー」
文覚がおそるおそる立ち上がってみると、すっと立てるではないか。
土も何もかるがると通り抜けられる、自由自在の身になっていた。
幸若舞(お能と似た古い芸能)『文覚』にあるエピソードだ。
ただし
「その身は
つまり身長1ミリ以下。
それじゃ佐藤兄弟と話もできないので、ちょっとピンチアウトして3センチになってもらったわけだ。
その「ボーッと(以下略)」言いに来たのはチコちゃんだが(うそ)、その前にバルタザールは何度かヴィンに助けられているらしい。例の厳冬に滝に打たれる荒行をしてほぼほぼ死にかけたときのことだ。
その話はそのうち語るから待っていてほしい。
たぶん、あと数話以内に。
いまは三郎四郎にふたたび、フォーカス。