ヒア・カムズ・ザ・サン (15)
文字数 739文字
まかないメニューにとどめておいたほうがいいかも、と話しあう。
チキ2号が食後のお休みをすませ、チキ1号が帰ってきたら出発だ。折りたたみテーブルその他もろもろを手分けして片づける。
パトリシアはふんふんと鼻歌を歌っている。「チキ・チキ・バン・バン」らしいのだが、部分的に歌詞があやふやならしく、ときどき「それから何だっけ~」などとてきとうに歌っている。
ヴァレンティンと目を合わせて微笑むミランダだ。
パトリシアの明るさに、二人分、救われている。
と、そのとき、
いやこの「と、そのとき」なんて平凡だな、平凡すぎる。「突然」にしようか。いかん、さらに平凡だ。どうしよう。困った。いや、困ってる時間なんかない。
だってもうそこまで来ているのだ。
澄みわたった青空をすーっと、いや、つーっと、いや、ばりばりと横切って――
(彗星?)
勢いあまって木のこずえをかすめ、火花を散らして――
焦げた葉をひらひらと落として。
(うそ)
ターンして急降下してきた。
あれは。
あのちょっと雑な感じは。
「うそ」思わず声に出していた。「うそ、うそ、うそでしょ」
青草の上にすたっ、と着地した。
輪郭が一瞬白く燃えあがって、それから静まっていく。
「なんで?」ミランダののどから出たのは、自分でもなさけないほどの泣き声だった。
「なんで?」
「ミラ」フロリアンは照れた笑みを浮かべた。
「来ちゃった」
彼が両腕を広げる前に、もうその中に飛びこんでいた。
長距離飛翔の余熱なのか、体温なのか――
熱い。
ちゃんとリストバンドをしている。ふつうに黒いやつ。