もっとロンリーハート (2)
文字数 973文字
べつに浦島的トリックをしかけたとかではない。
ある日気づいたら、作者の寝室の床に池ができていたのだ。
べつに女神が出てきて金の斧をくれたりしない。たんに勤続十年のエアコンが過労でメンタルを病んだのだ。わかりやすく言い替えると、ビッグな水漏れを起こした。
作者自身がメンをヘラりかけたが、気をとりなおして、たまった水を抜く器具をAmazonで購入した。注射器のちょっと大きいのみたいなやつで、エアコンの屋外ドレイン(排水チューブ)の先にさしこんでシュパシュパする。
結論から言うと、必死の慰留の甲斐あって、わがエアコンくんは辞表を撤回してくれた。
しかしもしかするとそれは、シュパシュパ器具が注射器の「ちょっと大きい」どころか「もんのすごく大きくてぶっとい」やつで、それを見たエアコンくんが
(おとなしく復帰しないとどんなプレイを強いられるかわからない)
と恐怖にふるえあがったからかもしれなかった。
ひさびさの更新なのにいきなりすみません。
さて。
白狐二匹が駆けこんだ縁の下。
母屋の中には誰もいないらしい。だが、人に住まわれている気配がある。空き家ではなさそうだ。たまたま留守なのだろう。
そまつな草庵だが──
床下というより土間。土がきれいにならされている。
ひんやりと薄暗いのに、なぜかほのかなぬくみを感じる。
居心地がいい。
弟がしきりに首を動かしている。
(どうした? 四郎)
いま白狐なので発話はできない。鼻づらでそっと押しやると、ふりかえってこちらを見た。
(見えるのか?)
(うん。少し)
この暗がりが目によかったらしい。焦点があってきている。
兄は嬉しくてぎゅっとハグ──してやりたいところだが、いまきつねなのでできない。あごを乗せてぐりぐりする。弟もしっぽをぱたぱたしている。
(兄者)
(何だ)
無言で訊き返して、気づく。
クリストフは水晶玉の中で気を失って以来、何が起こったかをいっさい知らない。
アリアがさらわれ、助けに来たミランダも別方向へ連れ去られ。駆けつけた兄の自分も深傷を負い、弟を救い出すのがせいいっぱいで。
(どこから、どう説明したらいいのか)
それに、語るには、一度ふたりともヒューマノイドに