ヒア・カムズ・ザ・サン (25)(夜中なのに?)
文字数 916文字
「うおお何これ? 滝か?」
「滝だよ!」
「すっげえ! いいねこれまじで! 滝!」
「いいだろ!」
「いいよ!」
下手くそな小説の見本みたいな空っぽな会話だ。
人は感動が大きすぎると、えてしてこういうバカになる。
瀑布の水音をかき消すほどのハイテンションでどなりあっている。
丁重かつ
永遠に思われた降下のはてに、ようやくエレベーターの扉が開いたら、
いきなり目の前に滝があった。
滝の内側へ出たのだ。
「マイナスイオン!」とハロルド。
「何?」とクロード。
「マイナスイオン! 滝の効果!」
「ああ! でもライトアップする必要あるの?」
「何?」
「ライトアップ、する必要、あるの?!」
「ない!!」
「あそ」
「純粋に
「そうだと思った!!」
「何?!」
「そうだと思ったつってんの!!!」
いきなり爆音がとぎれた。止められた水の残りがたらたらとしたたってくる。
お水はきゅうに止まれない。
「ごめん。何?」とハロルド。
「何って」あっけにとられるクロード。「この滝、止められるの??」
「うん。スイッチここ」
「まじか」
「明かりも消せるよ。ほら。真っ暗」
「いや明かり消すの意味ないから」
「そっか。悪い」
ふたたび点灯する。
地下階だというから恐々としていたら、とんでもなかった。閉鎖空間どころではない。どこまでも広がっていて奥行きが尽きないように見える。
「ここアウトドアなの?」
「うん。朝来るとまた気持ちいいよ、すがすがしくて」
ふいに、ひゅーひゅーという口笛と歓声がひびき、ハロウィンでもないのにランタンを手にした影たちがばらばらとこちらへ駆けてきた。
「お待ちしてましたー! ウェルカム・トゥ・シークレットガーデンパレス
ぱんぱん、とクラッカーが鳴り、さらに高まる口笛と歓声。
ふたたびスイッチがオンになったらしく、また滝が轟音を立てはじめた。
もみくちゃにされるクロード。ほとんど胴上げ寸前だ。
(何だ何だこれ? 平家の皆さん)ベンジャミンもおろおろと見まもるしかない。(このテンション理解できん)
(パリピじゃん!)
けっきょくそういうことらしい。