ヒア・カムズ・ザ・サン(アゲイン)(5)
文字数 1,689文字
まじで!
読者の皆さまは「何を謝ってるんだ」と不思議に思われるかもしれない。しかし作者としては土下座しても足りない気分なんである。
つまりですね。
この巻三は、クロードくんが〈かの君〉に会いに行く巻になるはずだったんです。
それが。
百話をとうに超え、巻一より巻二より長くなり、それでもまだ始まっていない巻三……!
ということで、リアル日本史上最強のスーパーセレブ超弩級怨霊、
崇徳院
のお目見えは、巻四をお待ちあれかし!
――予告を兼ねての土下座でありました。
何を隠そうわたくし作者は昔からかの君の大ファンなのだが、こうして「ファン」とかちゃらいことを書いただけでもうパソコンがフリーズするか壊れるかするんじゃないかとびくびくしてもいる。
何せ日本の三大怨霊の中でも道真さま将門さまをぶっちぎりで引き離して怖い人なのだ。じゃない、神なのだ。
日本というのは怨霊がいーっぱいいる国で、つまりは地震や雷雨や火災や土砂崩れやがいっぱいある国だということなのだが、そのうち作者のいちばん身近におられるのは将門さまで、神田明神、などというところに祀られて大勢の人に毎日拝まれている。
祟り神を拝み倒して守り神にしちゃえという、西欧諸国から見るとまず間違いなく理解不能なニッポン式ハウツーにのっとり、神田明神はほんとにぴっかーんと明るくて楽しいお社だ。参道に名物の甘酒も売ってるし、だいいち境内に大国さまと恵比寿さままでおられる。にぎやかなことこの上ない。
何がどういう経緯なのか知らないが、将門さまは近年、ビジネスとITの守護神も始められたらしい。なんだそれは。
作者の友人Yは神田明神に詣でた日、帰宅したら、本棚から本が落ちてきて故障していたパソコンに当たり、その衝撃でパソコンが直って起動したと言っていた。まじで。
その彼女(Y)にこうも聞いた。千代田区大手町にある将門さまの「首塚」は、いまだに祟りが恐れられていて、スーパースペシャル一等地なのに何も建てられないらしい……。
詳しい話がウィキペディアに載っているから、ご興味のある読者さまはぜひご一読されたい。
崇徳院は、そんなレベルじゃないんである。
大蔵省の誰それが不審死したとかそういうレベルでは。
ご存知だろうか。
明治維新のときの〈戊辰戦争〉は、じつは、どちらに正義があるか難しい内乱だった。
あのとき朝廷が何をしたかというと。
讃岐(香川県)に使いを送って、崇徳院にお祈りを捧げているんである。
古代や中世の話ではない。近代だ。明治維新だ。
もう安倍晴明じゃなくて、坂本龍馬や西郷隆盛が出てくるストーリーラインだ。
なのに。
それからほどなくして、ときの天皇・孝明帝はまだ三十代半ばにして崩御されている。
突然の死であったため、いまも暗殺が疑われているが――
もしかすると孝明天皇は、崇徳院においのちを捧げる約束をなされたのではないか、という説まである。
そんな怖い尊い神を、こんなちゃらい話にお呼びしていいのか?
いやもう平家の皆さんキャスティングした段階で祟られるなら祟られてるだろう、とっくに。ここまで来たらやるしかない。
歴史的に言うと、崇徳院は義経たちの一世代前の人だ。頼朝・義経のお父さんである義朝が敗死するのが平治の乱。そのさらに前の、
非業の死をとげたために怨霊になった、という話なのだが――
本当にそうなのか?
なんて、言ってませんよ。ぜんぜん言ってません。ええ。
でも、本当にそうなのだろうか?
とは言ってません。ええもう怖くて言えません。
でも。
どうしても、疑問があるのだ。
じゃあ、同じく非業の死をとげた義経は、どうして怨霊になっていないのか。
ということで、義経くんに、崇徳院さんにインタビューに行ってもらうことにしたんである。
めっちゃ緊張する!
と義経くんは思っているがわたくし作者はそれ以上に緊張してるんだ。どうか健闘を祈る。
いま、彼は、平家専用の直通地下鉄を降りて、
地上へエスカレーターで向かっている。