ヒア・カムズ・ザ・サン (4)
文字数 937文字
その救出作戦を皆で相談したい。
ただし、クロード抜きで。彼が知ったら駆けつけてしまうに決まっている。命取りだ。
ついては、クロード抜きのLINEグループを作ってはどうか。
フロリアンがひそひそ声で提案してきた内容を聞いて、ベンジャミンはうなった。
(フラグ)
危険な予感しかない。
(かならずいつか誰かやらかすな。御曹司の入ってるほうのグループでそのトーク。
時間の問題じゃないのか)
かと言って、他にいい方法も思いつかない。
ちょっと考えさせてくれ、と言って通話を切った。
とりあえずお互いの無事も確認できたし、いまは――
さすがのベンジャミンも、バスケットのゴール下のような攻防をくりひろげつつそんな重大案件を検討するのは無理だった。敵は瞬発力において自分に数段優るクロードなのだ。
ベンジャミンが息を切らしはじめたのを見て、クロードは動きを止めた。気の毒そうにこちらを見ている。
もともと彼は、どうしても謎ボタンの正体が知りたいというより、ベンジャミンが必死になって止めるから面白がって押そうとしているだけなのだ。
失敗した、とベンジャミンは思う。「これ何」と訊かれたとき「さあ」と答えて通りすぎてしまえばよかったのだ。あそこでつい、驚いたりしなければ。
だが、
(驚くだろふつう!)
岩壁にいきなり扉だ。材質は岩ではなく、見るからにステンレススチール。二枚が中央で合わさっている。で、その横にボタン。シュールすぎる。
二択しかない。
トマソンわからないというかたはぜひウィキってみてください。憶えておいて損はないです。ようするに、
(純粋ドア)
開けると壁があるというやつだ。
ドラえもんの「どこでもドア」はどこへでも行ける。
どこへも行けないのが「純粋ドア」だ。
力説しているうちに自分でもアホらしくなってきたが、まあそういうことだ。
あんがい、大丈夫だったかもしれないな。ボタン押しても。
何も起こらなかったりして。
ベンジャミンの脳裏をそんな考えがかすめた瞬間、
扉の合わせ目が、光った。