ここにもロンリーハート (1)
文字数 685文字
と、天高くとんびが舞う映像を入れると、一発で平和が作れる。
見上げておいて、つぎに見下ろすのがカメラワークのお約束だ。
まぶしい青草の上に若者たちが寝ころがっていたりする。
人数が三人の場合、高確率できれいにYの字になっている。
頭を中央に寄せてね。
男一人、女二人。
女の一人が身を起こし。
あとの二人を見てくすっと笑い、ふわっと立って、駆けだしていく。
駆けだす理由はとくになくていい。
光がまぶしくて、風がさわやかならじゅうぶんだ。
もう一人の女も目を開く。
雲一つない空に、とんびがピーヒョロロと舞っている。
(起きてるかな)
男の動く気配はない。
彼女もそっと身を起こす。
彼も、空を見つめていた。
ふと――
そのまなじりから、つっと涙が流れて落ち、彼女は息をのむ。
彼が静かにこちらへ顔をかたむける。
そっと手をのばして、涙をぬぐってやろうとすると――
すばやく、だが同じくらいそっと、その手をつかんで制される。
「何?」
そんなに優しい声を出さないで、とミランダは思う。
「だって泣いてた」
「泣いてないよ」微笑んでいる。
なぜ、こういう嘘をつくのだろう。
そしてなぜ、嘘をついても、この人の目は透きとおっているのだろう。
哀しいくらい。
「どうして泣くの?」と訊いてみる。
つかんだミランダの手を、そっと自分の唇へ持っていくヴァレンティンだ。
「幸せだから」
ひゅ~~~~~~~~~~
じつはヴァレ兄を書くたびに照れて身もだえしてへとへとになる作者なんである。バカか。バカです。
もう今夜は寝るっ。
と思ったけど、ついでだからもう一話書く。