もっとロンリーハート (11)
文字数 1,203文字
ふっと映像が消える。
「見えたか」薄暗がりにバルタザールの声。暖かくて、落ちつく。
「見えました」
「音は?」
「聞こえました。鳥の――」
「待て、言うな。四郎くんはどうだった、見えた?」
クリストフ、もうごまかせないと観念したらしい。小さく首を振っている。
「音だけ聞こえました。ピーヒョロロ」
一寸法師と美童、うなずきあう。
「いまのは試写だ」とバルタザール。「ミラちゃんのそばにいた子は新しい友だちらしい。『パトちゃん』と呼ばれてる。いまのには映ってなかったが、知盛さんもいっしょにいる」
もと敵将の、しかもイケメンの、しかも彼女とは自分より長いつきあいの大人の男の名を出されてフロリアンは心中穏やかでないが、いまはそれより、
「なんで泣いてるんですか」
そこが気になる。
「鼓が鳴らなかったらしい」
「鼓」
「タンバリンだ」
原因はわからない、とバルタザール。だけど彼女が泣いてるのはそのせいだ。それはたしかだ。きみを捜してる。会いたがってる。
「他の子たちのようすも見せたい。次行くけどいいかな」
半分うわの空でうなずくフロリアンだ。
ヴィンセントが、深く息を吸い、吐いた。
(!)
いきなり、目もくらむ高さ。
木と
はるか下には谷川が渦をまいて――
「ああああっ!」音声が入った。絶叫している。「これだめ無理!」
「は?」もう一人いる。「なんで。おれがおぶってやろうか?」
「けっこうです」
「あそ。つまんね。てかおまえ高所恐怖症だったのな」
「ち、違いますよ」
「何が。あーわかった《橋》恐怖症だな? 五条大橋トラウマになってんだな。ざまあ」
「違いますって!」
「だから何が」
「つ、つり橋効果っていうじゃない。この上あんたとフォーリンラブしたくないの。ただでさえレジェンドレベルの腐れ縁なのに」
「あ、そんな負け惜しみ言う余裕あるんだ。じゃこれどうよ。ほれほれほれ」
「ああああゆゆ揺らさないで! やめて、だからぴょんぴょん跳ばないで! さっき書いてあったでしょ橋の上で遊ぶの禁止ってあああああ!!」
クリストフが笑っている。
「見ないでもわかる。御曹司。武蔵さん。元気でよかった」
「なにこれビデオレター?」スクリーン上のクロード、カメラ目線だ。「待って待って、言いたいことあるの。きみ伝えてくれる?」見上げてくる。空中の
「おい作者! おまえだおまえ!」
中指を立てている。
「なんだよ巻三おれぜんぜん登場しないじゃない。表紙おれなのにどゆこと? もう出番ないんだったらそう言って。おれちゃっちゃと衣川行って腹かっさばいて死んじゃうから。以上」
「ちょ、御曹司!!」
「はははは」
なつかしい笑い声とともに、画面はフェードアウトした。