†超能力者の恋愛事情③† 工業高校効果
文字数 1,946文字
驚くべき展開に、さすがの呂晶も思考タイムに入る。
(まさかの一日、二連続……オイオイオイ、やっぱアタシ、結構モテんじゃねーのか?)
呂晶は澄ましていればそこそこ可愛い————16歳の時分には地元の祭りで『ミス提灯クイーン』に選ばれた華々しい経歴も持つ。同年代では一、二を争う人気があると自負していた。
けれど程なくして『バイ』の噂が立ち、モテ期は終わる。
以降は旅に出て修練を開始し、筋肉と共に偏屈な性格も顔に染み付いたのか、とんとモテなくなった。それでもあの時の栄光を今も引きずっている。
「あれ見て口説くとか……アンタ、変態?」
怪訝な呂晶に対し、イケメンは初対面とは思えぬフレンドリーな口調で返す。
『普通だろ? 可愛いくて生意気とか最高じゃね? ハネっ返りは即ち鮮度……とか言わね?』
「アタシに聞かれても判んないし」
目を逸らす呂晶を、イケメンは驚いたように指差す。
『それそれ! そういうの、スッゲーソソる!』
呂晶は上目遣いを向け、また目を逸らして言う。
「はぁ? 意味……分かんないし」
人生二度目のモテ期を迎えた呂晶————これには『カラクリ』がある。
この商隊では、商人、
二班は関わりが薄く、会社で言う他部署や、学校で言うところの他のクラスや学部のようなものだ。
護衛班での第一候補・ユエはマドンナ的な存在ではあるが、貴族の娘とあっては住む世界が違い過ぎる。アイドルとして崇めるならともかく、ガチの相手であれば除外される。
更にはこの蘭州という地————宿泊街と言っても風俗施設は充実しておらず、地元民には
そうでなくとも仕事中の身で地元民に
たまって
いる。呂晶が言い寄られる
花雪隊には行商をキッカケに出会い、その後も仲睦まじく行商に参加するといった『隊内恋愛』をしているカップルも幾つかあり、毎日が修学旅行のような職場ではそれらは羨望の的なのだ。
『俺じゃあ、可能性薄いかもだけど————俺達ってさ、明日死んでもおかしくないだろ? だから後悔したくないっつーか』
呂晶は目を逸らしたまま問い返す。
「後悔したくないから……なに?」
『ぶっちゃけ、今夜、お前とヤリたい』
「————っ!」
ド直球————なのに、真摯にも聞こえてしまう。
イケメンとそうでない者では、同じ言葉でも印象がまるで変わるのだ。イケメンが放てばメラでさえメラゾーマ級の火柱を上げる。
そしてイケメンの条件とは、どんな女でも果敢に攻め落とす、選り好みしない『黄金の精神』。イケメンほど女に対し理想が低かったりする。
「……えー、イキナリそんな事言われてもぉー」
呂晶は顔を赤らめながら茶番を再開する。
「てか、アタシィー、今日は女の子と泊まる約束しててぇー」
これは必要な手順のため、面倒でも省くことは出来ないのだ————だが、心は『100パーOK』である。 自分のダメな所を見て尚〝好き〟と言ったポイントは高い。しかもイケメン、断る道理など存在しない。
『マジか、友達か……女の先約は考えてなかった、つーか……』
イケメンが困った顔をしている。メンヘラの思考は読み難いため、返答には長考が必要になりがちだ。
(ヤッベ、露骨に嫌がりすぎたか……!? クソッ、黙って恥ずかしそうに頷いときゃ良かったか……!)
呂晶は性欲を男以外で発散出来るせいもあり、男への理想は青天井に高い。
普段は豪族でもない男にナンパされただけでキレるし、わざわざ露出の高い服を着たり、少なければ破ってでも増やすのは、その豪族を釣ろうとする呂晶なりのアピールだ。バイと言っても、誰でも良い訳では無いのだ。
ただし今回に限っては、イライラした気持ちを発散する為、たまにはイケメンとの火遊びも良いと考えている————と言うか、火遊び超したい。
『まいったな……でも、諦めたくねーんだよな』
イケメンは妥当な言葉で会話を引き延ばす。
ド直球〝今からお前とヤリたい〟は、イケメンと言えど結構なMPを消費する天地魔闘の構え。続け様に気の利いた言葉などポンポンと出せるものではないし、『ムード』なんて考えていたら勃つものだって萎えるものだ。
(そうだ、諦めんなよ……! 何でも良いんだ、さっさとアタシを落としやがれ……お前はアタシのアソコを〝通って良し〟だ!)
呂晶が『通行手形』を配布し掛けていると、
「よう兄ちゃん、やめとけ————」