†mob達の花雪商隊解説③† レーターはどうして結婚式に絵を描いてくれない?
文字数 2,555文字
妾は、家を出ようと思っておる……
家出は衝動的にするものでは無い————今日は一旦、帰った方が良い。
今日出るワケでは無い。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
〝仕事〟とは、違う業界にとっては同じに見える作業が、当人達にとっては全く意味を違える〝地雷〟が存在するのだ。
『そうそう。
同じだけど反対
なんだよな』イラストレーターは、どうして友人の結婚式に無償で絵を描いてくれないのか? SNSにはいつも、無料で見られる絵を投稿しているのに────それは絵描きの戦場が、世間、外見、プライベートも無関係、基本は絵だけで勝負すべき〝開かれた場所〟であるから。身内の集う結婚式はその反対〝閉鎖された場所〟である。
消防士が友人からプールに誘われ、〝ここで放水して見せて〟などと言えばブチ切れられてしまう。消防士とは炎から人命を守り〝感謝される〟という概念で成り立っている。炎と無縁なプールでの放水は消防士の品格を下げる〝
マイナスの行動
〟なのだ。〝放水〟という点は同じでも、それは『消防士であれ』と『消防士を辞めろ』と言うくらい真反対の行為。結婚式とは新郎新婦にとっては輝かしいイベントではあるが、特に何が偉くなった訳でも無い。同じ〝 絵を描く〟という行為も、結婚式如きよりSNSで見せびらかす方がよほど大切なのだ。
『会長は盗賊を殲滅した後、だんだんと
護衛の比率を少なくする
つもりだったんだ』『どうしてだ、俺らの態度が悪いからか?』
〝無償で絵を描かされる絵描き〟とは奴隷そのものであり、それはマイナスに進む行為────プラスに繋がる仕事であれば、どんなに惨めでも、無報酬でも、生活が苦しくても最善を尽くそう。ただし〝マイナスに進む仕事〟だけは死んでもやらない。何故ならそれは〝死に向かう行為〟なのだから。
『護衛が減れば積荷を増やせて、利益がデカくなる』
それを要求して来る相手とは即ち、自分を殺そうとする者────敵対勢力。ヤクザの報復は絵描きが新郎新婦に行うそれとは比にならない。他の業種には理解できないから————いいや、職人自身も理解していないから、職人というのはタチが悪いのだ。
『利益と一緒に
俺らの反感も
デカくなるぜ。一歩まちがえたらクビにした連中に襲われる
』『仕事とはやりたくない事をするものだ』などと言われがちだが、やりたくない仕事をしているのは
『会長は、今まで襲撃された箇所と被害規模のデータを出した。狙われてたのは最後尾以外、ほとんど右翼、しかも〝商人と輜重の境〟だってな』
『なに? 賊はそんなとこ狙ってるのか。何でだ?』
『いや、狙ってるワケじゃなく……確か〝少軍は部隊の隙間を狙う〟だったかな。猫も隙間に突っ込むのが好きだろ? 右翼を攻めるのは戦い易いとか何とか……兵法ってやつだ』
人間は右手に剣、左手に盾を装備する。すれ違う際には〝左側通行〟が攻撃し易い。最強のスパルタが横陣最右翼に配置されていた理由も『最右翼は横陣の弱点だから』では無く、『最右翼は敵と左側通行ですれ違うため、攻撃力が最も活かせるから』である。
日本も武士の事情に合わせ、すれ違う際に鞘がぶつからず、素早く相手を斬れる〝左側通行〟が基本である。
けれど銃、弓の場合は左旋回————〝右側通行〟で狙う方が撃ち易いのだ。〝剣社会か、銃社会か〟こそが、各国の左側通行と右側通行を分けた一因と言われている。
気功家は外功という遠距離攻撃を持つが、それでも右翼〝左側通行〟の襲撃が多いなら、彼らの心理状態が〝武術家〟に近いという事だろう。
『て、コトは────右翼の商人と輜重の間だけ守れば、他は手を抜けるって? いや、あえて弱く見せて、逆に網を張るって? あ~~~、だから護衛に輜重のフリさせるワケか』
『対して副長は〝過去の商隊がどうやって潰れたかの統計〟を出した』
『そりゃあ、盗賊にやられたからだろ』
『いいや。
護衛を増やさなかった
からだ』『だから、護衛をケチると盗賊にやられるんだろ』
『違う————』
同僚はキッパリと否定する。
『どこの商隊も、最初はバッチリ守るんだよ。で、繁盛してくると、一度に運ぶ積荷が増えていく。でも護衛の数は増やさない————〝これだけ護衛がいれば大丈夫〟って、思い込んじまうんだ』
『守る
物
が増えても、守る者
は増やさないワケか……』『そのうち守りの薄いとこ突かれて、何割か積荷を奪われる────だが何割なら問題無い。半分も残ってりゃ黒字になるんだからな』
『軍の輜重隊でさえ、けっこう賊にやられるらしいからな。行商人も相場とか、仲間割れとか、行商と関係無いとこでダメになる方が多いって言うし……』
護衛はハタと気付く。
『じゃあ、
賊にやられること自体
は、潰れる原因じゃないのか?』『
パッと見の数字ではな
。だが、一度荷を奪われた商隊は、そっから何しても倒産してるんだよ』『そういや〝老舗の商隊〟てのは聞かないな……なんでだ?』
同僚は指を立てて言う。
『〝あそこからは奪える〟って、噂が立つからだ。すぐに賊が
『ほう……商人界隈でも〝あそこは襲われる〟て噂はマズイな』
『出資者が減れば節制しなきゃならない。すると————』
『護衛の数を、益々ケチる……』
人間も、動物も、弱味を見せた者から集られる。周りからは常に搾取し続けなければ、極東島国のように特亜に集られ、マザコン政治家が勝手に税金を献上してしまう。
自衛さえ放棄した国がどうなるか。ウイグル、チベット、マザコン日本を見れば明白だ。マザファッカー共はそんなに腐った羊水が好きなら始めから外に出て来るな。
『倒産したほとんどが〝
二回以上
積荷を奪われた商隊〟だった────一回で倒産した商隊はほとんど無い。それが副長が出したデータだ』『やっぱ護衛はケチっちゃダメなんだよ。
俺が最初に言った通りだ
』『半分も残ってりゃ黒字にはなる、が……それが破滅の始まりだ。だったら護衛は増やした方が長期的な儲けになる』
護衛は心配気に問う。
『それで……あの会長様が納得したのか?』
『いいや』
『だよな』