†mob達の花雪商隊解説①† 貴族の戦場

文字数 2,198文字






 あ、妾より高みに登るでないっ! 妾より偉そうにするでないっ!

 アナタが高みに連れて行きたいのは、私でしょう? その願いは私が叶えてあげる────でないと日が暮れるから




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 その上級護衛は隣の同僚に尋ねる。


『あの二人って、仲が悪いのか?』


 同僚は景色を眺めながら答える。


『アレは〝政治ごっこ〟だ。俺の

と同じ』


 そう言って、握った二つのクルミを見せる。いわゆる健身球(ストレスボール)────行商は只歩くだけのつまらない仕事の為、こういった遊具(ハンドスピナー)を持ち歩く者は多い。


『あれの、どこが政治だよ?』

『政治家ってのは税金無駄に使って、他人や天気のせいにするのが仕事だ。でもアレ、慣れてないと出来ないんだよ』

『だから〝ごっこ〟で練習してるって?』


 罪を揉み消せる政治家も、そのノウハウは有しておかなければならない。そのノウハウにはマニュアルも無ければ同じ方法も通じにくい。賄賂は不祥事が残るし、コネは借りが残るし、秘書の(ライフ)はひとつだけ。
 権力者の振るう〝身勝手の極意〟とは(けんりょく)を消費する奥の手。(けんりょく)を使えば戦闘力は何倍にもアップするが、その間に更なる権力を確立できなければ、使用後の戦闘力は一般レベルに没落する。HP(かね)MP(めいせい)がいくら残っていようと、検察の攻撃を止める術が無い。
 ベジータも気を抑えればクリリンに腹を貫かれるし、ピッコロも気を高めればラディッツと悟空を貫く。豊胸詐欺がバレたてんちむは、ピークを過ぎ、気がどんどん減っている。今は失った(HP)を豊富な知名度(MP)で再充填している状態だ。とは言え、少年誌の表紙を飾っていたような以前の権力はもう戻ることは無い。


『この間もさ、どっかの油業者に訴えられたろ。〝花雪牙行の輸入石鹸は詐欺商品だ〟って』

『ああ。健訟(けんしょう)で何よりだ』


 宋は訴訟大国であり、その様子は〝健訟〟という言葉で表される。


『でも、勝訴しただろ?』

『そうだが、ウチも近々、法務部を作るって話だ────で、どっちが管轄するかの勝負をしてる』

『その勝負が……あの〝物忘れがどうこう〟なのか?』

『あれは前哨戦だ。麻雀で言えば〝仮親決め〟だな』


 護衛の顔が怪訝に変わる。


『オイオイ……法務部ってのは護衛(おれら)と同じで、別の組織と戦う部署だろ? 身内で仮親決めから戦うなんて馬鹿げてる。それにアレじゃ、勝敗基準だって曖昧だ』


 同僚はクルミを回して答える。


『さあな。でも法務部を抑えたら、

がやり易くなるだろ?』

『それで〝仮親決め〟か────』


 護衛は悟ったように続ける。


『行商も、訴訟も、法務部も、牙行も、お嬢様にはママゴトの延長か』

『それくらいイカれてなきゃ、小娘が武侠なんか従えないさ』


 政治闘争や権力闘争はいつも、勝敗も曖昧な消化不良で終わる。彼らはそれを積み重ね〝どうしてそれが権力に繋がるんだ?〟と思うような方法で権力を確立していく。
〝豊かでより良い公共放送を行う機関〟として設立されたNHKが、どういう訳か全国民からショバ代を徴収し、法人税さえ免除される日本人を攻撃する(はんにち)放送局と化したように。
〝男女平等LGBT〟を訴える高齢女性(ババア)議員が、妙な審査団体や活動団体を作り、飛田新地の仲居(ババア)の如く、メディア(キャンギャル)学校(スカート)などあらゆる若い女(ムチムチ)の露出利権を手に入れたように。

 問題なき場所に問題を作り、罪無き者を糾弾し、高めた名声で己の勝利を誇示する。ルールによって勝敗を決める勝負とは真逆、

。それが古来より二十一世紀まで続く権力闘争────貴族の戦場。
 高学歴だからといって頭が良い訳では無いが、高学歴でも無ければその戦場に上がることさえ許されない。二人のママゴトはそんな戦場を想定しているのか、もしくは既に戦場にいて、それをママゴト感覚で楽しんでいるのか。


『その、政治ごっことやらの戦績は、どんな具合なんだ?』

『財務、経営、販売戦略(マーケティング)は会長だろ。副長は最高情報責任者(C I O)と、最高業務執行責任者(C O O)だ』

『そうなると……どうなる?』

『トップが会長、決定権は副長が握ってる』

『へえ、馬鹿みたいだ』


〝意味が分からない〟という意味だ。


『会長は何でも自分の思い通りじゃなきゃ気が済まないが〝思い通り〟の部分だけ副長に持ってかれてるんだ。そりゃ会長だって怒るさ』

『へぇ、馬鹿みたいだ』


 上の空の護衛を、同僚が指差す。


『副長に感謝しろよ────あの子がいなきゃ、俺らは輜重班

護衛にされてたんだ』

『だから……感謝して欲しいなら、宋語で話してくれないか?』


〝分かりやすく〟という意味だ。


『会長はこう言ったんだ。〝 護衛はいつも戦う訳でも無しにコスパが悪い〟〝己の物資くらい己に背負わせよ〟』


 護衛は深くうなずく。


『仰る通り。俺以外はそうしろ』

『副長はこう反論した。〝並べた護衛の威圧が襲撃回数を抑えている〟〝安全だから出資者はお金を出せるし、傘下の商隊も合併を希望する〟』


 護衛は深くうなずく。


『仰る通り。上手く行ってるのは俺のおかげだ』

『すると会長は〝盗賊は殲滅した方が長期安全に繋がる〟って言い返した』


 護衛は悲しげに首を振る。


『俺がどっちかなら、この会議を一言で終わらせられたのに……〝うん〟』

『会長は護衛を少なく見せる為に〝偽装護衛〟てジャンルを作りたかったんだ————あの人、古風に見えて意外と

だろ?』


 護衛は怪訝に問い返す。


『ちょっと待て……なんで

?』
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登場人物紹介

呂晶(ルージン):20歳♀ 補正:力型極化 スキルマスタリー:内功心法=黒殺槍法>炎系気功


成都のアクセサリー店『呂礼屋』を家出。盗賊として非道を尽くす中、結盟『真夜中の旅団』へ幹部待遇で加入。外功の扱えない特異体質ながら爆裂加速した斬撃により気功家屈指の近距離戦闘能力を持つ。

重度の阿片中毒でバイセクシャル、己の哲学『真理』を己の命よりも優先する。


容姿偏差値:65(ガンメイク:70) 戦闘偏差値:85

ヘレン=アップレケ―ンタ:16歳♀ 補正:知型極化 スキルマスタリー:ウィザード>クレリック=バルド


赤子の折、北欧フィンランドの孤児院に捨て子として預けられる。生まれながらにゼロ点量子エネルギー『大気の乙女』を操るがそれにより幼少期に友人を殺害する。

以後は魔法による狩りで村に奉仕しながら罪を償い、15歳で成人した後は『大道貴族芸人』としてローマ帝国へ単身上京する。7歳でヘラジカを仕留めたことが自慢。


容姿偏差値:90 戦闘偏差値:90(杖喪失:50 リミッター解除:???)

花雪(ファーシュエ)18歳♀ 補正:完全バランス スキルマスタリー:寒月直伝飛天剣法舞踏派=炎系気功=雷系気功=氷系気功


国務執行機関、戸部右曹の侍郎を務める魏征の一人娘で貴族。楊貴妃の再来と言われる美貌と帝王学により『傾国のカリスマ』の異名を持つ細巨乳。複合企業・花雪牙行の会長であり、数百名の精鋭気功家で構成される『花雪象印商隊』の隊長を務める。同副長のユエとはライバル貴族家でありがなら幼馴染。自分の身体を他人に洗わせるのが趣味の変態。


容姿偏差値:85(舞90) 戦闘偏差値:55

寒月(ハンユエ)18歳♀ 補正:知型極化 スキルマスタリー:飛天剣法=雷系気功>炎系気功>氷系気功


戸部左曹侍郎、邦県令の一人娘で貴族。文林三絶、武林三絶『文武両道』の異名を持つケツデカロリ眼鏡っ子で、花雪象印商隊では護衛隊長を務める。インテリ気功家の代名詞『雷功』をこよなく愛し、中華最強の雷功使い『雷帝』に最も近い人物と評されている。趣味は読書、コミュ障と言えるほど大人しい性格と大きな尻にコンプレックスを持つ。花雪とは幼馴染であり彼女と眼鏡を馬鹿にされるととても怒る。


容姿偏差値:75(尻90) 戦闘偏差値:87

ヴァリキエ=ユスティニアヌス:28歳♂♀ 補正:力型極化 スキルマスタリー:ウォーリアー=クレリック


容姿偏差値:80 戦闘偏差値:95

魏圏(ウェイ=クァン):28歳♂ 補正:知型 スキルマスタリー:黒殺槍法=炎功>雷功>氷功


容姿偏差値:65 戦闘偏差値83

炎暗剣(イエン=アンジャン):21歳♂ 補正:知型寄バランス スキルマスタリー:飛天剣法青林派=氷功>炎功=雷功


容姿偏差値:70(眼帯:60) 戦闘偏差値:81

ルリア:???歳♀ 補正:知型極化 スキルマスタリー:ウィザード=バルド


容姿偏差値:76 戦闘偏差値:85(リミッター解除:???)

ルシラ:33歳♀ 補正:知型寄バランス スキルマスタリー:バルド>チェイサー=メイド


容姿偏差値:74 戦闘偏差値:60

遊珊(ユーシャン):20歳♀ 補正:知型寄バランス スキルマスタリー:破天神弓>炎系気功=雷系気功>氷系気功


容姿偏差値:78(花魁90) 戦闘偏差値:68

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