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文字数 726文字

 昔の河野ならイライラしているところだが。
今は多くの血の気の多いメンバーを束ね抑える側に回っていたので、河野は自分の冷静さに、らしくないよと思っていた。
 すると議長となった日本にいる最高幹部、
顔も名も売れている男。政治政党、自由世界党相談役の名で通る、山本が言った。

「ヨーロッパ本部から指令が秘匿通信で来た。
内容はプロジェクト、トロイの発動だ」

「えっ?」

と河野は口にした。
やはり、わざと拉致させたなと思ったのだ。
プロジェクトを知ってて黙っていた河野も同罪かと思った。
 そして、やはり間違いだったと後悔した。

「河野君はキリンと主だったメンバー。そうだな少人数が良い。二人か三人で、ヨーロッパに渡ってくれ。船や飛行機ではなく、シューターでな」

議長の言葉に河野は、

「救出作戦ではないのですね」

と睨むと。議長は冷徹な目で。

「救出はする。ただし敵の懐に入り、
ボスを見付けてからな」

「つまり、囮だったという事ですね。わざと、グリーンヒルの連中を来日させて。何の予防策も取らずに、ユニコーンを捕まえさせた!」

と怒りが沸き上がり、食って掛かった。
 すると、

「知ってた筈だ。君は二人を匿ったり逃したりはしなかった。本部の作戦に乗っていたのではないのかね。君の怒りは誰への怒りだ?」

 河野は急に熱が冷めた。気分が悪く成っていった。そして俺は政治には向かないなと思ったこの組織で活動するのも、限界かも知れないとすら思ってしまった。

「分かりました。私が行きます」

と河野が言うと。議長は、

「君は、この日本支部の司令となった。離れては困る。日本での活動を指揮してもらう。
他の者をやってくれ」

と山本は平然と言った。
 つまり、俺に作戦を壊されては困るから、
釘を刺したという事か・・・。
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