3話8頁

文字数 738文字

「う〜ん、相変わらずだな。パンは下手だな。おにぎりにするんだったかな」

と言った。
 えっ?手作りのハンバーガーなのか?
と繁々と見てしまった。
 俺が食べ終わり、一心地つくとドラゴンは、

「ヤマト君には会ったよな、お前の家で」

と言った。
 あっ?ヤマト!そんな名を名乗っていた、
とか言っていた、あの新しい早野寛の事か!
 俺は再び怒りが芽生えた。
親父とお袋は別のテーブル席に座って、俺達を見ていた。ドラゴンはテーブルに置かれた、
2つ目のハンバーガーを食べだした。
 俺にも勧めたが、俺は首を横に振った。

「母さんは弱い人だった・・・。
いや、強いかな、母親としては。お前を連れて行かれて中々、立ち直れないでいた。
俺達は製薬会社にいたので、薬は何でも手に入った。俺はお前の母親、和美の心を分かってやれなかった」

 ドラゴンは最早、俺にはどうでも良くなった産みの母親の事を語りだした。
俺は早く、この場所から逃げ出したかったので気もそぞろに聞いていた。

「ヤマト君の成長を楽しそうに見ている和美は完全に立ち直っていたと思っていた。
ヤマト君が熱を出したから、と会社を早引きするのを、嬉しそうに俺に言いに来る和美を、
俺は笑って見ていた。
だが和美は、俺に心配かけまいと強い薬を飲んでいたんだ。知らなかった」

 俺は段々と、話に引き込まれていった。
ドラゴンは更に、

「そして和美はある日、突然死んだ。
朝起きない和美を急いで病院に運んだが。
既に手の施しようがなかった。
笑顔で死んでいたよ・・・。
冷蔵庫には、ヤマトに作る為の弁当のおかずがあった。
俺とヤマトは泣きながらそれを見たよ・・・。
ああ、因みに俺の名は大山龍一
(オオヤマリュウイチ)そして、お前の名は
龍二(リュウジ)だ。ヤマト君には、大山龍二の名を名乗らせていた」
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