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文字数 647文字

 金網に辿り着くと絶望した。高いのだ。
 しかもきっちり閉まっていて、鍵まで掛けてあった。高さは4メートルはあるだろうか?
上には越えられない様に何やら棘棘の物が巻き付けてあった。
無くても高くて登る気にはならなかった。
 俺は誰か通らないかと、金網の前に座り込み道路を見ていた。

 元よりこの侵入禁止地区には誰も近寄らないそれに、ここは居住区からも労働区からも離れているのだ。
政府の役人でもなければ来ないだろう。
で、思い出した。警察に届けが出ている筈だ。
 声を出したら、何処かの防犯カメラが拾ってくれるかもなと俺は大声を挙げた。

「誰か!誰かいませんか!私は、
認識番号・・・・」

で、ポケットからIDを出すと本来ならソラで言える番号を間違いなく言った。
 そして、

「早野寛です!早野了、早野明美の息子です!道に迷ってしまいました。誰か助けて下さい!」

と言った。しかし、返事は無かった。
 カメラが無いのかなと見ると。
大きなカメラが2台と音声を拾うマイクも放送用のスピーカーも付いていた。
ここは侵入禁止区域だから当然か。
 何故、返事をしないのだろう?
と悩んでいると後ろから人が現れた。

 やはり汚い格好をした若い男性だった。
この場所に来てから会った人の中で、
1番若かった。
この町?には年寄りしかいないのかと思って、子供がいたなと思い出した。
 そして!まさかな・・・、とも思った。

 そのまさかとは?
自分達で生んだ子供を育てているのか?
だった。
この社会では子供は子供だけで、専門の施設で育てられる。産みの親は育てない。
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