2話5頁

文字数 698文字

「気が付いたか。そうだよ、俺が新しい早野寛だ。良かった、3年も待ったからな更生院で。俺の前の両親が事故で亡くなってな。
だから俺は、更生院で待たされたのさ。
新しい両親が現れるまでな」

 愕然とした。
俺は膝をついてしまった。今にも気を失いそうだった。
 俺の家に俺の知らない自分がいた・・・。 
俺は誰でも無くなっていた。

「そう落ち込むもんじゃないよ。
君がテロと関係無いのは直ぐに分かるから。
更生院で待てば新しい両親と出会えるかもな」

と言って。男はテーブルに腰を預けると、俺に振り向きコーヒーを一口啜ると。

「運が良ければな」

と付け加えた。
 俺は怒りと憤りと最早、何だか分からない
感情で頭が混乱していた。
 確かに俺は無実が証明されて、直ぐにでも
更生院に送られるだろう。
そこには俺達の様な、両親の決まらない子供達が沢山いて生活するのだ。

 集団生活も疲れるが。それよりも、就職の時にリスクが伴うと聞く。
つまり、ちゃんとした両親に育てられなかったと言う理由で、4階層ある職業階層の1番下から始めなければならないのだ。
俺が目指していたロケットの技術者は、下から3番目の階層だ。

 最下層から上に上がるのは、余程才能がないと無理なのだ。
俺はだから頑張って勉強して来たのに。
何でだ!涙が流れ嗚咽を漏らしていた。
最早、俺の人生は終った。そう感じたのだ。
自殺するのはこんな時なんだな。
 俺はようやくその事に気が付いた。

 だが、死にたくはなかった。
段々と怒りが芽生えた。
両親に、勝手に捨てた両親にだ。
あの優しさは嘘だったのか。
それとも公安に言われてさっさと捨てたのか?信じられなかった。
たった一日で俺は別の俺に変わっていたのだ。
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