2話3頁

文字数 775文字

 そして、

「警察の仕事に関しては守秘義務があるのでな。他の職種でも同じだと、学校で習っているよな。兎に角、公安が来るまで待ってて」

と言って、外を見た。
俺が振り返ると、そこには近所の見た事のあるおばさん二人が、ヒソヒソ話をしていて。俺と目が合うと、そそくさと通り過ぎで行った。
 警察官は、

「ちょっと仕事があるから、待っててね」

と言うと。二人で奥の部屋へと入っていった。俺は開け放たれた交番の机の前に、一人ポツンと残された。
 一体、何がどうなってんだ?
失効ってなんだよ。
俺は最早、早野寛じゃないのか。
そんなバカな!
 そうだ親父やお袋は探している筈だ。

 だから俺が、そんな下層民・・・外層街で、テロなんかと関係無いのを知っている筈だ。
 そもそも、テロってなんだよ!
聞いた事もないよ。
今時、そんな事件があるのか?
俺はこれが何かのテストである事を祈った。

 たまにあると聞く、対応力を見る為に。
だが、これは違うと直ぐに気が付いた。
 俺は警察官がいない間に家に帰ろうと、交番を出た。そして居住区に向かって走った。
誰も止めなかった。
 だが両親に会ってどうなるものだろうか?
いや何とかなる、血の繋がりなど関係無い。

 両親は俺を愛してくれた。
俺が5歳の時、初めてあの家に迎えられた時。
これが家族か、これが、お父さんとお母さんの温もりなのかと、涙が出たのを思い出した。
彼らは俺に、惜しみない愛情を注いてくれた。
あの関係は嘘では無い。
俺が困っているんだ、助けてくれる筈だ。
 俺は涙を流しながら家へと急いだ。

 ✳ ✳ ✳ ✳

 その頃交番では。

「はい、逃げました。多分、家へと向かったと思います。はい、居る筈です。分かりました。
あなたも気を付けて、ドラゴン」

と言って、警察官は電源を切り。
その携帯を種類別ゴミ箱へと捨てた。
 二人の警察官は見合ってニヤリと笑った。

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