2話4頁

文字数 623文字

 家に着くと俺は重大な事に気が付いた。
親父とお袋は仕事でいない筈だ。
警察署に行ったとしても、帰ってきてないのではないか?俺は兎に角家の玄関を開けた。
 本来なら、IDの失効した筈の俺の手で開く筈ない扉が開いた。それがとても嬉しかった。

「ただいま〜!親父!お袋!ごめん!迷子になって!公安来るってどうしよう?!」

俺は廊下をダイニングに向かって、大声で喋りながら行った。何の返事も無い。
 いないのか・・・。
と思いドアを開けると、一人の若い高校生が、コーヒーを淹れていた。
俺と同じ制服を着ていた。
 一瞬家を間違えたか?と思ったが。
それは、この社会では有り得ない。
人の家に入る事など、泥棒以外に出来るものではない。

「誰だ、あんた・・・」

 冷や汗が流れる。しどろもどろに言う俺に、その男はゆっくりと振り向き。

「帰ってきたんだ」

と言ってニッコリ笑った。
それがとても怖かった。

「質問に答えろ!お前!人の家に勝手に上がり込んで何をしている!」

 すると、その男はコーヒーをテーブルに置くと。首を振り両手を横に広げて。

「分かってないな。人の家に勝手に入ったのは君の方なんだよ」

 と言って。カップをもう1つ出すと、俺にもコーヒーを淹れた。そして、

「砂糖やクリームは、入れる派か?」

と聞いた。俺は友達に聞かれたみたいで、頷いてしまった。

「そうか。では、今日から俺もそうしよう。
君に成らなければ、ならないからな」

と言った。
 俺に成る??!嫌な予感がした。
 まさか!!・・・。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み