反政府、2頁

文字数 710文字

 1人は明らかに混血だ。アメリカでは多いらしいが。それでも混血は珍しい。
 管理社会の1つの弊害は、外国人との接触が少ない事だ。だから混血も少ないという事だ。
 彼はアジア、多分、日本人と欧米人の混血に違いない。変装しているので確証は無いが、
何故か分かるものだ。

 特に米の飯を良く俺にくれるのも、気を使ってではなく好きだからと言うのが分かるのだ。
 どうやって手に入れたのか、お握りを頬張る姿は明らかに日本人だった。
もう一人は、純粋なる欧米人と言えるだろう。
 混血は各国で偏見と差別の、よい標的となると聞く。日本ではそれ程ではないが、
(元より、殆ど見たことが無い)

 ヨーロッパでは純血種族と言うものを、尊いとしている様だ。何となく気分が悪い。
この管理社会は差別の無い、平らな世界と言うのを、嘘だと思わせてくれるからだ。
 見た目完全欧米人は、むしろ俺には優しかった。ビールを良く薦めてくれる。組織のアジトでも列車でも必ず買ってか、貰ってかして来てくれて。更に何故か柿の種を一袋くれる。
 日本贔屓?と思って聞くと、

「日本生まれの、日本育ちだ。組織では肩身が狭いよ。あはは。今のは無しな」

と言ってくれた。
 管理社会を潰す組織が、管理社会とは、
これ如何に。
 彼らは世界政府の方が、良い生活が出来たのではと思ってしまう。
 それを言えば俺も同じ事。親父がドラゴンでなければ、俺を探さなければ、組織に入らなければ、直ぐに逮捕されていれば。
 今の俺は無かったのだ。

 今頃、ロケット工房でロボット相手に、機械調整とチェックリストを書いて、一生を終えた事だろう。
楽な仕事、人を傷付けずに済む、平和な世界にいれたものを。
 俺は大きくため息が漏れた。
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