第138話

文字数 2,871文字


江戸日記(弟五部)138

料理屋に行き、こきんと言う芸者は、いるかと聞くと、いますが、今年35才ですよと言うので、呼んでくれと言うと、殿様の席にですか、他にはと聞くので、こきんだけで良いと言うと、
ハイと女将が返事したのです、女将が酒を注ぐので、番頭と杯を重ねたのです、後はよいぞと言うと、女将はそれでは、ごゆっくりと部屋を出て行ったのです、七衛門は元気かと聞くと、
殿様がいなくなって元気がないのですよ、

でもお戻りになりましたので、又元気におなりになります、まるで思い人をなくした見たいですよと言うので、それはすまん事をした、鎖国しているので連れて行くわけにはいかんかった、
のじあと言うと、殿様は大丈夫なんですかと聞くので、わしは上様の使いと言う立場だから大丈夫じあよと言うと、そうですよね、外国の進出を押さえる為ですから、文句は言えませんね、
と言うので、

色々見てきたが、後100年は北も南も大丈夫じあよと言うと、それはようござんした、しかし、殿様は無茶な事をなさる、ほんの数人しか殿様の事は知りません、顔を見ないのは病気では、
ないかと、みんな心配していますが、本当の事は言えませんので、七衛門の旦那様はごまかすのに大変だと思いますと言うので、そうじあな、江戸に帰ったら労ってやろうと言ったのです、

おいでなさいませと言って、芸者が三味線をもって入って来たので、おうこきんかと言うと、お殿様の席についた事がありましたかと言うので、ないがわしはお前を良く知っている、まあ、
一杯やれと言うと、番頭が酌をすると飲み干し、返杯したのです、女将に暫くはこの部屋には誰も近づけないようにと言うと、ハイ承知しましたと部屋を出て行ったのです、こんな婆ばあ、
1人をお呼びにならなくても、

若い女子が沢山いますよと言うので、おまえはクリスを知っているかと聞くと、クリスはんといいますとオランダ商館にいやはったクリスさんですか、もうお国にかえらはって随分達ま、
すがと言うので、実はクリスに頼まれてお前に会いに来たのだ、クリスからオランダ金貨を預かって来たが、そのままでは使えないので、両替したのだ、ここに50両ある受取るが良いと、
渡すと、

まさかオランダに行かはったのですかと言うので、いや、カピタンから預かったのだよと言うと、そうですか、一回お世話しただけですのに、覚えていてくださり、こんな大金をと言っ、
て、涙ぐむので、中々情の厚い者らしいなと言うと、ハイ、日本料理も教えたのですよ、凄く喜んでいましたと言って、ほな、有難くと受取ったのです、この事は他言無用じあ、ここに、
に文も預かっている、

ひらがなだが、日本語で書いてくれたそうだと言うと、まあ、文までですか、と言って開けて読んで、鎖国していなければ飛んで会いに行きたいですと言うので、もし、よかったら何て、
書いてあるか聞かせてくれまいかと言うと、ハイ、こきんさん元気ですか、私は元気でシエフをやっています、出島にいる時には、日本料理も含めて、色々教えてくれましたね、こきん、
さんの三味線も素晴らしかったです、

鎖国していなければ、こきんさんに求婚するのですが、こればかりは仕方ありません、私の胸にはいつもこきんさんがいます、私もシエフとして認められるようになりました、少しです、
が指南料を送ります、受取って好きな物を買ってください、元気でみんなに素晴らしい三味線を聞かせてください、クリスと書いてありますと言うので、そうか、なかなか上手い文章、
でないかと言うと、

一生懸命覚えたのですね、こんな思ってもらって、こきんは幸せ者ですと言って、化粧なおして来て良いですかと言うので、ああいいぞと言うと、失礼しますと言って部屋を出て行った、
のです、そうですか、預かってこられたのですか、私まで涙がでましたと言うので、日本の芸者も大したもんだと酒を飲み干したのです、戻って来たので、それでは若いのを2人ばかし、
呼んでくれ、

この話はこれまでだと言うとむ、ハイ、私が決めても良いですかと言うので、ああ、子飼いにしている芸子を呼ぶが良い、花代は弾むぞというと、ハイ、少し待ってくださいと女将を呼、
に行くと、入って来たので、女将に10両を渡して、今日の勘定だと言うと、こんなに沢山と言うので、いいのだよと言うと、今呼びますねと言ったのです、お殿様はどこの方ですやろと、
聞くので、

上州川越藩8万石の藩主、村上源三郎様で、長崎奉行、村上源四郎様の兄上様だよと番頭が言うと、え~と言って、ハハハッと頭を下げるので、これこれ、忍びじあ手を上げるのだと言、
うと、きょうはビツクリする事だらけですと言ったのです、芸子が2人入って来て、おいでなされませ、雛菊に駒菊ですと言うと、こきんが一指しと言うと、三味線を引き二人が踊った、
のです、踊りが終わり、

踊りも上手いが、三味線は最高だなと言うと、ありがとう御座いますと言うので、三人に酌をすると飲み干して返杯したのです、宴席は楽しく盛り上がり、それではソロソロ閉めようと、
言って、三人に10両づつ渡すと、こきんが私もと言うので、取っておきなさいというと、こんなに沢山と喜んだのです、料理屋を出て、それでは明日宜しくなと言って、役宅に戻ると、
源四郎とマキが出迎えたのです、

部屋に入ると、マキが茶漬けを出すので、かき込むと、兄上玄海屋が4000両も持ってきましたがと言うので、貰いすぎたので、お前におすそわけだ、奉行といえば何かとかかるであろう、
自由に使うが良い、幕府の金ではないので、遠慮は無用だ、マキにも飾り物を買つてやれと言うと、こまりましたな、あんな大金と言うので、賄賂ではないぞ、タダの贈り物だと言うと、

それでは有難く頂いておきます、奉行所の者達にも何か慰労してやりますと言うので、それで良いのだよ、お前硬すぎるからな、きっと、父上に似たのだろうと言うと、兄上はと聞くの、
で、わしはお爺さんに決まっておろうと言うと、なる程金儲けの天才ですからな、幕府の金寸などは当てにせず、政をおやりなさるからな、かないませんよと言うので、マキがお奉行様、
も見習らわれたら宜しいかと思いますと言うので、

そうじあ、おまきこれからは源四郎のケツを叩いて、走らせるのじあと言うと、ハイ、お任せ下さりませと笑ったのです、しかし、どうやって列強の皇帝をたぶらかしたのですかと聞く、
ので、知恵を貸してやったのじあよ、又回りにいる黒いネズミも退治してやったのじあよ、それだけやれば喜んで褒美をくれるじあろうというと、やはりお爺様に似たのですねと言う、
ので、

あの分では100まで生きるのではないかと笑うと、姉上からたまに文が来まして、小言が書いてありますと言うので、あ奴は口うるさい奴じあからなと言うと、マキが気にいられなかっ、
たらどうしましょうと言うので、女子には優しいが男には口やかましいのじあよと言うと、まあ、そうですかそれなら安心ですと言ったのです、さて、もう一杯飲むかと言うと、ハイ、
付き合いますよと源四郎が言ったのです、

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