第9話

文字数 2,724文字


源三郎江戸日記(弟五部)9

吉宗は更に人事改革を行い、井伊、安部をお役御免として、新たに水野忠之、戸田を老中として、水野、井上、久世、戸田、村上となり、倹約令の内容について発表したのです、色々聞、
いたところ、内容を細かく規定するのは難しいので、贅沢を禁止して倹約に努めるべし、但し冠婚葬祭はこの儀にあらずという触書を旗本に通達するのみとしたと言って、わしが率先し、
て実行する、

まず食事じあが一汁、一菜とする、これは城内で振舞われる食事も対象とする、大奥は4000人から1200人に削減する、着るものは大名の謁見等の冠婚葬祭を除いて木綿を着用すると言う、
と、水野が大奥の者達の着物もですかと聞くと、女子の着物は対象外とする、われわれはと聞くので、これはわしが戒めにてやる事なので、そなた達には強制はしないと言ったのです、

水野は行政の改革を検討して上申しろ、以上であると言うと御座所を下がったのです、水野がこれは困りもうした、上様が木綿をきられれば我々も着るしか御座らぬと言うので、好きに、
しろと言う事ですので、気になされず着れば良いではないですかと源三郎が言うと、そうはまいりませんと言って、そういえば村上殿は木綿ですなと言うので、絹より着ここちが良いの、
で御座る、

それがしが上様に勧めたのではありませぬぞと言うと、これでは町から絹の着物がなくなり申す、上様がやられたとなれば、お膝元の商人が習うのは必定でござる、旗本の浪費はなくな、
り申すが、江戸の火が消えては冥加金が減り、税の改革が必要になりますな、従来の税を定率法に治すしかありませぬと言うので、それは良いのではないですか、豊作の時には百姓が蓄、
えて、

不作に備えられます、と井上が言うと、蓄えられるように、庄屋に備蓄するように、言いつけておかなければ、使いはたしてしまいますので、気をつけなされと源三郎が言ったのです、
旗本に通達されると、旗本たちはいたって冷静です、しかし、吉宗はひそかにお庭番を使い高額な美術品を買い求める旗本を牽制する為に、扱っている商人を監査して、分相応と見た、
場合は内々に警告したのです、

又商人が公開をしない場合は、その半分を罰金として没収したので、賂は少なくなっていったのですが、商人達は武家に習って木綿を着用するようになり、貧乏な町衆は喜んだのですが、
商いが少しづつ少なくなり、給金が下がり、職人は仕事が減り、われの身に掛かってくると、一斉に幕閣への不満が高まって行き、吉宗の人気は落ちて行ったのです、商人は江戸の商い、
を諦めて、

仙台、名古屋、京都、大阪、博多等の府外での商いに力を入れるようになり、この地域は高景気に沸いたのです、水野はこれでは幕府の台所が苦しくなるばかりなので、大名にも倹約令、
を出すべきだと主張すると、それをやれば、町人まで右に習えとなり、この国の経済は麻痺すると井上、が反対したのですが、水野、戸田、久世に押し切られて、吉宗に上申すると、
家老をよんで幕府に協力するようにと申し伝えるのみにせよと言ったのです、

各藩はそれをやれば、藩財政は窮乏するとして、タダ贅沢は慎むべしと言う触書は出しましょうと承諾したのです、しかし、何の効果もなく時は過ぎていったのですが、その内に武家に、
遠慮すれば良いだろうと、見えない部分に、お洒落をするのが流行しだして、景気は徐々に上向きになっていったのです、町方までが裏生地にこりだし、どういう歩き方をすればみんな、
に見せられるかと言う事で、

すそをめくるようさっそうと歩く者が増えていき、商人はわざと襟首を見せるような着物の着方をするようになったのです、町方差配の若年寄り京極備前の守がこの風聞を聞き源三郎に、
取り締まりますかと聞くので、元々町人は対象ではない、武家に遠慮してやっている事なので、ほうって置きなされと言うと、そうですな、景気も上がっていっていると聞きます、何も、
冷や水をかける事はしない方が良いですなと笑ったのです、

源三郎が吉宗に呼ばれたので行くと、賂の横行は少なくなったが、こんなに町衆に影響があるとは思わなんだと言うので、馬鹿な同心が取り締まると脅かして、袖の下を貰うやからが、
増えているそうですというと、まったく、何をやっても不正の方法を考えるのじあなと言うので、横暴な者は大岡殿が懲らしめているそうです、総てを取り締まれば息がつまります、
少しは見逃した方が良いのですと笑ったのです、

お庭番の知らせによれば江戸以外は景気がよく、各大名は冥加金が増えて裕福になってきておるとの話しじあ、伊達、尾張、和歌山、池田、浅野、黒田の各藩は蓄財が増えているそう、
じあ、すてては置けぬので何か賦役をやらせねばならぬと言うので、余り大きな賦役を押し付けてはいけませぬというと、薩摩は木曽川の治水で財力を減らしたので、ほうっておいて、
も良いじあろう、

各藩には江戸の水道、掘割、ごみ処理の為の埋め立て場の賦役に、江戸城の修復の賦役を申し付ける、今水野が割り振りを決めておる、さすれば江戸の景気も良くなるじあろうと言っ、
たのです、しかし裏生地の洒落は上手くいったな、あれが無ければ景気はどん底になる所であったわと言うので、大奥は良く納得しましたなと言うと、治憲が米沢でやった方法で減ら、
したのじあよ、

1000人あまりは幕臣に嫁いだ、実家に帰ったのが1200人いた、今は1800人じあ、直ぐに1200人になるじあろう、しかし4000人もいたとはわしは愕いたぞと言ったのです、御殿におられ、
るお二方は何もしておらぬ、稼いでおられるので問題ないぞ、薬草園をひろげられて、城下の薬問屋にも卸しておられる、御殿で食する野菜も作っておられるそうじあ、お二方もたまに、
土いじりをされているそうじあ、

この前はナス、きゅうり、大根を献上してもらった、美味かったぞと言うので、それは何よりでしたなと言うと、今日来て貰ったのは成果を話すためじあ、やっと一段落ついたのでな、
それに来月にめぐろ村で鷹狩りを行う、風間が襲ってくるじあろう、一網打尽にしてくれ、どうも水戸と手を結んだらしいと言ったのです、そうですか、水戸公ですかと聞くと、江戸、
家老の藤田監物が戸田行部と密会しているそうじあと言ったのです、

それでは頼むぞと言うと御座所を下がったのです、水野がやってきて話は何で御座ったかと聞くので、治世の成果を聞いていたので御座る、上手く行っており喜んでやられた、水野殿、
の手柄で御座ると言うと、しかし、商人の見えない場所への洒落とは恐れ入りました、色々工夫するもので御座るな、おかげで助かり申したと言ったのです、賦役の割り振りが出来ま、
した、

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