死のカウンセリング

文字数 2,147文字

「寮長、私もう限界です……」
「私もです。家に帰りたい、家族の声が聞きたい……」

 二年生の部屋だ。引き籠もる生徒の元を、寮長の神谷奏子は度々訪れていた。不安を抱える彼女達の声を聞くという名目で。異変前から信頼されていた奏子は、少女達から全く疑われることなく部屋へ通されていた。

「いつまでこんな事が続くんでしょう……?」
「私怖い。私もきっといつか殺されちゃうんだ……」
「元気を出して。きっと少しずつ状況は良くなるわ」

 ベッドに並んで腰掛けて、後ろ向きな言葉しか口にしない二人の二年生。向かいのベッドに座る奏子は、彼女達を定型文で励ました。

「でも私……最近すごく疲れるんです。何だか身体全体が重くて……」
「ちゃんと食べてる?」
「それが、食欲が湧かなくて……」

 奏子は二人の身体の不調を知っていた。原因は他ならぬ奏子だった。

 カウンセリングを行う度に、奏子は生徒達の精気を吸っていた。今この瞬間も。

「ああ、また眠くなってきた……。ホント、私の身体どうなっちゃったんだろう……」
「私も……。寮長、すみません……」

 二人の少女は腰掛けていたベッドに倒れ込み、そのまま小さな寝息を立て始めた。その様子を見て、奏子は彼女達の命が残り少ないと判断した。

(この二人はここまでか。ならば今回も、最後に残った精気を(しぼ)り取らせてもらおう。空気を介して少しずつではなく、直接肌から大量に)

 奏子の両腕が音も無く裂けた。血は出ていない。代わりに糸を引くヌラヌラとした液体が肌(?)を濡らした。腕だった部分が何本もの触手に変貌していた。
 木の根のような形状の触手。かつて校舎で奏子を犯した触手だった。奏子はそれを少女達へ伸ばした。

「ん……?」

 半分眠りに落ちていた少女の身体がピクリと動いた。細長い何かが自分の身体を這っている不快感。
 重い(まぶた)を開けた少女は侵略者を確認し、短く悲鳴を漏らした。

「ヒィッ!?

 最初蛇かと見間違えたモノ。しっかりと見ても何なのか解らない。答えを探す間に触手は少女の服の中へ潜り込んできた。

!?

 しかしそれ以上に少女を驚かせたのは奏子の変貌だった。奏子に見える女が肩から触手を生やしていた。
 まるでメドゥーサの蛇髪のようにウネる触手を従える奏子は、もはや少女が知る頼れる寮長ではなかった。いや、人ですらなかった。

「だ、誰か! 誰か助け…………むぐっ」

 声を振り絞って部屋の外へ助けを求めようとした少女の口に、ヌラついた触手が侵入した。

「んむ、んぐぐぅ~」

 隣で寝ていたもう一人の少女も同じ状態だった。衰弱して身体が思うように動かせない少女達は、触手を()退()けることができず服を脱がされ、その美しい身体を蹂躙(じゅうりん)されるだけだった。
 グリグリと、乳房や股間、少女達の敏感な部分を狙って触手は動いた。

 ツプンッ。

「!」

 脚を這っていた触手の一つが、少女の狭い穴へと侵入した。

「ふぐっ、ぐうっ、ふぐぅ~~」

 頭を振って拒絶のジェスチャーを示しても無駄だった。触手は身体の奥まで進撃したのだった。
 そして媚薬交換の有る魔物の体液が、粘膜を通して少女の身体に吸収された。

「んん? ふうっ!?

 熱く、ムズムズする肉体の反応に少女達は戸惑った。何が起きているんだろう?

「ふっ……? ふっ、ふっ」

 すぐに解った。自分は感じていると。処女であったのに痛みよりも悦びの方が勝った。
 ぐりぐりズプズプと動く触手によって擦れる内壁が気持ちいい。

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」

 隣で悶えている少女は愛液の分泌量が多いようだ。水が混じった卑猥な音を股間が立てていた。

「あふっ、ふっ、むぐっ」

 口に入れられている触手も動いた。触手の粘液と涎で顔がびしゃびしゃに濡らされた。少女達はトロンとした表情で凌辱を受け入れた。

「ううっ、うぐふっ」

 こんなに気持の良いことが世の中には有ったのか。突かれる度に少女達は歓喜した。しかし命をも吸われているとは知らなかった。髪の毛が白く変色していることも、急激に皮膚に(しわ)が刻まれていることも。
 身体にいよいよ力が入らなくなった。視界もぼやけてきた。
 木の根そっくりの触手に身体中を絡め取られて、少女は自分が植物の一部になったかのような錯覚に陥っていた。

 奏子であった化け物は触手の動きを早めた。

「ふくっ、んふっ、ふうぅぅっ」

 ベッドのシーツを愛液でぐっしょりにして少女達は快感だけを貪った。口と乳首と股間、それ以外の感覚を失っていた。
 やがて、

「~~~~~~~~っ!!!!

 片方の少女が絶頂を迎えた。太股を二、三度痙攣させてから少女は動かなくなった。ピクリともしない。
 絶命したのだ。

「……ふあぁぁぁぁぁぁ!!

 残った少女も二十秒後に痙攣し、やがて静かになった。呼吸による胸の上下運動すら無くなった。
 彼女も先に逝ったルームメイト同様、その短い生涯を閉じたのだった。

 ずぷん。

 少女達の体内から触手が引き抜かれた。数メートルに伸びていたソレは短く(まと)まり、再び奏子の腕を形成した。
 すっかり見た目は人間に戻った奏子は、ベッドで寝転がる少女達の死体を眺めた。

 総白髪となり、老婆の如く皺くちゃになってしまったかつての少女達。

 全ての精気を吸い尽くした奏子は、満足そうな笑みを浮かべて部屋を後にした。
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