深夜の秘め事(一)

文字数 2,198文字

「ああっ……」

 0時17分。寮の一室で(なま)めかしい声が上がった。

「いけませんよ、島田先輩。みんなが起きてしまいます」

 注意された島田芽亜理は歯を噛みしめて声を嚙み殺した。
 この時間、起きているのは一階の警備隊員達、そしてこの部屋に居る三人の少女達くらいだろう。
 少女達は全員裸だった。一つのベッドに集まり、シーツの上で六本の脚が絡んでいた。昆虫のように。

「島田先輩は本当に脚が長いですね。スタイルが良くて羨ましいです」

 小声で褒めながら、おかっぱ頭の少女が芽亜理の脚に手を這わせた。ふくらはぎ、そして柔らかい内股。くすぐったくて身をよじった芽亜理を逃がすまいと、背後から二つの手が伸び彼女の乳房を掴んで揉んだ。こちらの少女もおかっぱ頭だ。
 前後から挟まれる形で芽亜理は二人の少女に身体を愛撫されていた。二人とは、双子の五月雨姉妹である。

「もう落ち着かれました?」

 前のポジションを取る姉の美里弥が、左手を芽亜理の濡れそぼった股間に伸ばした。既に芽亜理は姉妹の手技で一度絶頂を迎えており、先程まで彼女の恥部は痙攣していた。

「はぁっ……ふっ、ふっ……」

 美里弥の細い指先に当たったぷっくりした隆起は、再度快感を求めて熱くなった。

「うふふ……、もう一度イケそうですね、先輩」
「はっ、はっ、は……」

 女体の最も敏感な部分を刺激されて、芽亜理は荒い息を吐いた。彼女が二番目に感じる乳首も背後の百合弥にいじられている。ああ、耳たぶまで軽く嚙まれた。気持ちいい。
 芽亜理は下級生の二人にされるがままだった。

「私達、ずっと島田先輩をお気の毒に思っていたんです」
「そうそう、まるで桐生先輩の奴隷みたいだって」

 まるで、ではなく芽亜理は桐生茜の奴隷であった。毎朝8時に茜の部屋へ出向き、彼女の予定に合わせて小間使いをさせられている。時には茜の性処理の手伝いをさせられることも。
 少しでも気に入らないことが有ると茜は鞭で芽亜理をぶった。怪我をさせないように改良されたSMプレイ用の鞭だが、それでも芽亜理の背中や尻にはよくミミズ腫れができた。
 苦痛だと感じると精神が崩壊しそうになる。だから芽亜理は鞭をご褒美だと脳内変換して自分の心を守ってきた。かつての仲間、稲垣早紀のように。

「酷いよね、桐生先輩のあの態度は」
「だから私達姉妹、先輩をお慰めしたいと考えておりました」

 姉妹が急に部屋へ訪ねてきた時は驚いた。芽亜理は名簿順のルール無視で、桐生の権力で早紀と同室にされていたのだが、そのルームメイトは異変初日に階段で圧し潰されて死んだ。
 それから毎晩不安な気持ちで独り夜を過ごしていた芽亜理は、交流が薄い後輩の来訪でも喜んでしまった。寮内で不審死が発生しているとの噂が有るが、まさかこんな可憐な姉妹が犯人だとは露ほども疑っていなかった。

「んあっ……!」

 美里弥が芽亜理の股間に顔を埋めて秘部を舐め始めた。可憐な舌が動く度に下半身の力が徐々に抜けていく。
 五月雨姉妹は目立つ存在だった。寮内を浴衣姿でうろつくこともそうだが、何と言っても双子の美人姉妹として有名だった。

(ミリヤさんは私のスタイルを褒めてくれたけど、二人の方がよっぽど綺麗だ……)

 姉妹はほっそりとした体型だが、しなやかな筋肉がついていた。

(二人がスポーツしてるって話は聞かないけど……、部屋で筋トレでもしてるのかしら?)

 そんな美少女に奉仕してもらっていると思うと、芽亜理は余計に興奮してしまうのだった。

(ああ、またイキそう)

 腰をくねらせて感じる芽亜理の様を見て、百合弥の恥部も濡れてしまった。思い出すのは猿の化け物。犯されたことは屈辱だったが、身体を貫いたあの立派なイチモツの味を百合弥は忘れられなかった。

 美里弥が口で内腿を吸いながら、芽亜理の体内へ指を挿し込んだ。

「…………っ!」

 数回、美里弥が中で指を動かしただけで、芽亜理は今晩二度目の絶頂を迎えた。

「あああああ……」

 熱い衝動が身体を駆け巡った後、反動で今度は身体がぐったりした。

「お疲れ様です、先輩。ゆっくりお休み下さいね」

 口の周りを芽亜理の愛液で光らせる美里弥がニッコリ微笑んだ。芽亜理も彼女に微笑み返した。その刹那……、

「……ぐっ!?

 芽亜理は背後から紐を首に巻き付けられて、力いっぱい絞められた。絞めているのは百合弥、紐は彼女の浴衣の帯であった。
 芽亜理は視線で美里弥に助けを求めたが、姉は妹の凶行を咎めず笑っているだけだった。

「……! …………!」

 芽亜理の両手が空を掴むように暴れた。その仕草は迷宮で見た腕の化け物そっくりだと美里弥は思った。

「……………………」

 百合弥はキッチリ三分間絞めてから帯を外した。芽亜理は目を見開いたまま動かなくなっていた。死亡したのだ。

「この人、大した情報持ってなかったね」
「桐生アカネのただの奴隷だったようですね」

 姉妹は淡々と語り、脱いだ浴衣を再び身に着けた。

「今度はどんな演出にするの?」
「このままで。全裸の女子高生の死体発見なんて、それだけでとてもセンセーショナルな出来事になるでしょう。前回はイマイチ揺さぶることができなかったけれど、今度こそ寮のみんなは怯えて混乱して、周囲を疑うようになるでしょうね」
「そうだね。自分以外信じられなくなって、孤立してくれたら私達はより動きやすくなる」

 姉妹は美しい顔で笑い合い、島田芽亜理の部屋を後にした。
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