逃げ遅れた少女

文字数 2,059文字

「みんな、玄関まで走って!」

 世良がまず杏奈を引っ張って駆け出した。詩音が続き、奏子も逃げようとした。
 が、奏子は足首をグイと引っ張られ廊下に転倒した。その彼女を白装束の女は笑ったまま見下ろした。

「!…………」

 ゾッとした奏子はすぐに立ち上がろうとしたものの、脚に(まと)わりつく何かが邪魔をした。ヌチャっとした嫌な触感を持つソレは、世良が見つけた木の根っこであった。

(みんな……)

 走る少女達を呼び止めたかったが、責任感の強い寮長としての性格が災いした。得体の知れない女が居るここへ、みんなを呼び戻すことを奏子は躊躇(ためら)ったのだ。
 自力で足首に絡んだ木の根を外そうと試みたが、根は意思を持った縄のように這い上がり、奏子の脚全体を拘束した。そしてかつて職員室だった異空間へ、彼女をズルズル引き()って連れ込もうとした。奏子は必死に扉の囲い部分にしがみ付いた。

「……っ、みんな、助けて!」

 ここに至って奏子はついに助けを求めたが、既に遠くまで走り去っていた世良達には届かなかった。
 別の根が伸びて来て、抵抗する奏子の腕に巻き付いた。腕の支えを無くした彼女は、職員室の中へ完全に引き()り込まれた。同時に扉が音を立てて閉まった。

「何っ、何なの!?

 四方の壁から何本もの根がウネウネ伸びてきて、脚だけではなく身体全体に巻き付いた。ネトリとした粘液が肌を濡らした。大きな舌で身体中を舐められているかのようだ。

「ううっ」

 身をよじる奏子の腹に伸びた木の根が、彼女が着ていたシャツを器用にたくし上げた。寝る時に苦しいからとブラジャーをしていなかった為、美しい乳房が簡単に露わとなった。
 それだけでは飽き足らず、脚に巻き付いていた複数の根がショートパンツと下着を脱がせ、奏子の下半身は剝き出しの状態になった。

「嫌あぁっ!!

 まだ終わっていなかった。
 足首を縛っている根が左右に動き、奏子の脚を大きく開かせたのだ。
 次に何をされるか想像して蒼ざめた奏子を、長い髪を垂らした白装束の女が見下ろしていた。奴も職員室へ入って来ていたのか。

「ひ…………」

 先が楕円の形状になった一本の根が近づいて来て、蛇さながらに鎌首をもたげた。

「嫌っ! 来ないでッ、あっちへ行って! お願いやめてェ!!

 声の限り奏子は叫んだ。拘束から逃れようともがいたが、四肢を押さえられている状態では無謀な挑戦だった。

「やめてぇぇ!!

 ずちゅっ。

 懇願虚しく、奏子の肉体へ異物が挿入された。

「キャアァァァーーッ!!

 痛みは無かった。男性経験の無い彼女であったが、実は性への関心が高く、ルームメイトと玩具を使った

に夜な夜な興じていた。
 だからといって、人ではない何かに犯されることには虫唾が走った。顔を左右に振って嫌悪感を表した。

「抜いて、抜いてェッ!]

 化け物に人の言葉は通じないのか、それとも相手が嫌がっていると解った上での凌辱行為か。
 挿し込まれた異物はずちゅずちゅと卑猥な音と共に、リズミカルに動いた。

「嫌ぁ…………」

 奏子の切れ長の瞳に涙が滲んだ。根が動く度に形の良い胸が揺れた。
 固く、乱暴なソレに腹の中を搔き回された。

「う……うぐっ」

 呻くしか出来なくなった奏子へ、白装束の女が身を屈めて近付いた。

「…………?」

 女は奏子の顔を両手で固定してから、奏子の顔を舐め回した。
 更に加えられた嫌な感触と唾液の匂いに、奏子の瞳から大粒の涙が(こぼ)れ落ちた。その涙も女に吸われた。

(もう……嫌)

 恐怖と屈辱、そして下半身に絶え間なく与えられる刺激。奏子の気が徐々に遠くなっていった。
 しかし白装束の女はそれを許さなかった。奏子の口へ自分の舌を入れて、舌同士を絡め合い、奏子を現実世界へと引き戻した。

 口の中に女の唾液、身体中には樹の根の粘液。奏子自身の体液も分泌されてそれらと混ざり合った。
 グチャグチャねちょねちょと執拗にこねくり回されて、奏子は頭がぼうっとした。
 ルームメイトによって開発されていた彼女の肉体は、化け物のおぞましい愛撫にすら敏感に反応してしまっていた。

「あ、ああ……。ああ……」

 悲鳴とは違う、切ない吐息が漏れた。

「んん……ああ」

 奏子は完全に感じていた。

(私、どうなってしまうの? 怖い……助けて)

 心とは裏腹に、奏子の身体は歓喜に打ち震えていた。根の動きに合わせていやらしく腰をくねらせた。女に見られているのに。

「ひあっ!?

 突如、樹の根の動きが早くなった。
 強まった快感の波に奏子は堪らず大声を上げた。

「あああ! ああああ!」

 もう何も考えられない。自分という人格が壊されていく不安、背徳感、興奮。

「あ、あああああーーーーッ!!

 両脚がピンと伸び、身体がガクガクと痙攣した。奏子は絶頂を迎えたのだ。
 ほぼ同時に彼女の体内に熱い液体が噴射された。射精? 樹の根が?

「は…………はぁ。はぁはぁ……」

 身体の奥から樹の根が抜かれた。白くどろりとした液体が内腿を伝った。頬を紅潮させた彼女はその光景を、何故か満たされた想いで微笑んで見つめていた。
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