水島小春と言う男(四)

文字数 2,413文字

「セラ様、誰か、助けてェェ──!!

 鈴は声の限り叫んだ。しかし地下二階に潜っている世良や他の探索メンバーに、哀れな鈴の懇願は届かなかった。
 鈴を捕える赤黒い腕の大半は肉が削げ落ち瘦せ細っていたが、中には筋肉を蓄えた逞しい腕も混じっていた。その男の腕が、鈴の服を掴み引き裂き始めた。

「なっ!?

 首を絞められまいと必死に防いでいるこの場面で、この上何をされるというのか。
 鈴の左手は首の防御に、残っている右手は完全に麻痺して動かない。足首は掴まれて固定されている。僅かな抵抗も許されない彼女は、身に着けていた布が裂かれる光景をただ見ているしかできなかった。

 ブラジャーはTシャツよりも頑丈な造りだったので破られはしなかったが、強く引っ張られて背中のホックが飛んだ。そのまま上へずらされ、少女のまだ育ち切っていない乳房が晒された。
 男の腕は迷わずそのささやかな膨らみを揉みほぐした。

「やっ、やだぁ!」

 首を狙う腕とは明らかに違う思念を鈴は感じた。いやらしくねっとりとした接触。この腕は自分を辱めようとしている。

「ハハハッ、この迷宮の化け物達は揃いも揃ってエロいなぁ」

 腕に襲われない位置で傍観している水島に鈴は殺意が湧いた。それでも彼女にはもう、(すが)る相手がこの最低な男しか居なかった。

「助けて、ごめんなさい、もう絶対に悪いことをしません! だからお願い助けて、水島さん!!
「遅いよ」

 水島は無慈悲に突っぱねた。

「種を蒔いたのはアンタだ。やり返されるのが嫌なら、最初から誰かを攻撃しなければ良かったんだ」

 世良が水島に言ってくれた言葉だった。自分へ暴力を振るう叔父に怯え続けた小学生時代。成長期に突入して体格差が無くなった時に水島は叔父に反撃した。結果、叔父は下半身不随となったが、世良は水島を責めず肯定してくれた。

「お願い、お願い助けて水島さん! 許してェッ!!

(僕が止めなかったら毒針がセラを刺していたんだぞ? 仕掛けようとしていたのはおまえだろう? それでどうして許して貰えると思うんだろう)

 見苦しい鈴を見て、叔父もそうだったなぁと水島は過去へ思いを馳せた。何年間も継続して暴力で水島を支配してきた男。それがたった一回の反撃で泣いて許しを請うてきた。だからこそ許せなかった。
 水島は叔父が動かなくなるまで殴り、蹴り続けた。そして側で腰を抜かせて失禁していた叔母に対しては、髪の毛を掴んで顔面を壁に叩き付けた。叔母は鼻が完全に潰れて歯を六本失った。

「嫌あぁぁぁ!!!!

 別の男の腕によって、ついに鈴は下半身の衣服も剥かれた。即座に茂みに覆われた秘部へ指が挿し込まれてくる。

「やだ、やだぁぁっ、やめて!」

 無駄だと解っていても、鈴は水島にもう一度助けを求めようとした。そして信じられないものを見た。

 水島が銃を持っていない左手でズボンの前を開けて、自分の大きくなったモノを取り出してしごき始めたのだ。

「!……!!!」

 魔物に襲われて、命と女性の尊厳を奪われようとしている自分。それをオカズにして自慰に耽る水島。呆然として見開かれた鈴の目から涙が(こぼ)れた。

「…………うっ」

 少女の心情などお構いなしに、男の腕は瑞々しい肉体を蹂躙しようとする。乳首を摘まれ、恥ずかしい部分をいじられた。

「あぅっ、うう……」

 敏感な部分を責められて身体が痺れた。意思とは裏腹に下半身が湿っていく。

 ズプンッ。

「はぅっ!?

 何かが挿入された。男の中指だった。
 ズプズプと中指はピストン運動をした。体内を護る為に愛液がどんどん分泌される。ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて、大人の男の中指に少女の中が搔き回された。

「ぎぃぃぃっ……!」

 指が増えた。中指に加えて人差し指までもが侵入してきた。生理の時に使ったタンポン以上の太さを持つ物質が、強引に狭い道を押し広げた。痛みと苦しさで彼女はぎゅっと目を閉じた。

「ううっ、うううう!」

 痛い、苦しい、痛い。お構いなしに指は動いた。

「うあああああ!」

 これも彼女を護る為なのだろう、脳内物資が出て感覚が徐々に失われていった。身体の奥の痛みからは解放されたが、他の腕にいじられている乳首と股間表面の刺激は残っていた。

「……嫌……嫌だこんなの……」

 身体の反応を鈴は止められなかった。全身が汗ばんでいる。汗以上のぬめる液体が脚の付け根を濡らしている。乳首が気持ちいい。下半身がムズムズする。

「やだ……やだ……やだよぉ!」

 足首を掴む腕によって、鈴の脚は更に開かれた。そして二本の指が角度を変えたせいで、ぼやけていた体内の感覚が戻ってきた。さっきまでの苦痛が快楽に変換されて。

「うああっ、何!? 何なのぉ!?

 ずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷ。

 小刻みに動く二本の指が身体の奥を熱くした。もたらされた快感の波が鈴を襲った。

 ずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷずぷ。

「ひっ…………きゃああぁぁぁぁ!!!!

 少女は昇り詰めた。力が全身に一度込められて、それから抜けた。
 化け物達はその瞬間を狙っていた。周りに生えていた赤黒い腕達が、ガードしていた左手を()退()けて鈴の首を絞めた。

「ぐっ……」

 ぎりぎりぎり。
 絶頂を迎えて脱力し、毒で身体の右側が麻痺している鈴に勝ち目は無かった。

 すぐに目から光が奪われ、虚ろな表情であっけなく鈴は絶命した。

「はぁっ……」

 一部始終を見ていた水島は、荒い息を吐いて射精した。

「ありがと、スズちゃん。けっこうなショーだったよ」

 鈴を殺した腕達は床下へ潜って消えた。そして鈴の身体も。通路のそこだけが底なし沼のように、少女はズブズブと沈んでいった。
 一分前まで鈴だったものは、迷宮の養分となってしまったのだった。

「ハハ、おっかねえな。ここで死んだら即、迷宮に取り込まれるってワケか」

 口先だけでまるで怯えの無い水島は不敵に笑い、颯爽と鈴が死んだ現場を後にした。
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