第19話
文字数 1,283文字
「やっぱり、ダンナさん?」
中村が、寄り添うような優しい空気を漂わせて問うてきた。
この人は聞き上手だな、といつも思う。
話術が巧みと言うわけではなく、その暖かい雰囲気だろう。
何を話してもしっかり聞いて受け止めてくれる。だから辛い時には話したくなってしまう、そういう人だ。
「多分、…そうだと思う」
柊子は貴景と一緒に住むようになってからの事を、ポツリポツリと話し出した。
アシスタントの子どもの体調不良で、夜中に彼女の家へ行った事。
頻繁にLINEのやり取りをしたり、電話で楽しそうに話している事。
休日も子どもの様子を見に行ったりする事…。
「ねぇ、変だよね?変だって思うよね?それとも私が変なの?冷たい人間なの?」
話していて涙が出そうになって来て、柊子は必死に堪えた。
秋穂と中村は、複雑そうに顔を見合わせた。
「何て言うか、その…、事情がイマイチよく掴めないと言うか…」
秋穂が困ったような顔で言った。
お酒の力を借りなきゃ話せないような事だ。
だがそのせいで、支離滅裂になってしまったのだろうか。
そもそも、何をどう話したらよいのか柊子自身もよく分からない。
「確かに事情はよく分からないけど、柊子ちゃんが言ってる事は分かる。ダンナさん、どういう訳なのかは分からないけど、アシスタントの女性の家へ頻繁に出入りしていて、仲がとっても良さそうだ、って事なんでしょう?」
中村の言葉に、柊子は大きく頷いた。
「えー?何それ。まさかもしかして…、浮気?」
秋穂が周囲に気遣いように小声で言った。
――浮気…。
やっぱりそういう事なのか。
「浮気って思うのは、やっぱり普通じゃないって、思ったからなんだよね?変な事なんだよね?」
思わず言葉に力が入る。自分が変ではないんだと思いたい。
「柊子の気持ち、分からなくはないけど、まだ断定はできないよ」
自分で浮気と言っておいて、それは無いだろう、と思う。
「ひとつ訊きたいんだけど…」
中村が遠慮がちに言う。
「…夜の方は、どうなってるの?」
「え?夜?…夜は、ダンナは仕事してるから、私は先に寝てる。ほぼ一人寝」
「えーっ?じゃぁ、エッチも無いんだ」
秋穂が目を剥いた。その反応に、柊子はやっと質問の意図を理解したのだった。
「あ、いや、その…。そういうのは、あるのよ。ほぼ…、毎日」
だがここ最近は、柊子の方で拒否している。
「へ?なに、ほぼ毎日って。毎日やってるってことなの?」
「やめてよ、なんだか恥ずかしいじゃない。ここ最近は、不信感が高まり過ぎて拒否してる」
「不信感って事は、やっぱり柊子も浮気を疑ってるって事なんじゃない」
「それは…、よく分からない。本人は、友人として心配だから、親切にしてるって言ってるの。楽しそうに頻繁にやり取りしてるけど、何て言うか性的な雰囲気は感じないのよね。ただ…」
「ただ?」
「ただ、子どもの名前を聞いた時に、何て言うか、頭が変になりそうな感じになった」
「子どもの名前?アシの?」
「そう。…タカシって言うんだって」
「タカシ?」
「うちのダンナ、タカカゲって…」
「……」
柊子の言葉に二人はダンマリになった。
中村が、寄り添うような優しい空気を漂わせて問うてきた。
この人は聞き上手だな、といつも思う。
話術が巧みと言うわけではなく、その暖かい雰囲気だろう。
何を話してもしっかり聞いて受け止めてくれる。だから辛い時には話したくなってしまう、そういう人だ。
「多分、…そうだと思う」
柊子は貴景と一緒に住むようになってからの事を、ポツリポツリと話し出した。
アシスタントの子どもの体調不良で、夜中に彼女の家へ行った事。
頻繁にLINEのやり取りをしたり、電話で楽しそうに話している事。
休日も子どもの様子を見に行ったりする事…。
「ねぇ、変だよね?変だって思うよね?それとも私が変なの?冷たい人間なの?」
話していて涙が出そうになって来て、柊子は必死に堪えた。
秋穂と中村は、複雑そうに顔を見合わせた。
「何て言うか、その…、事情がイマイチよく掴めないと言うか…」
秋穂が困ったような顔で言った。
お酒の力を借りなきゃ話せないような事だ。
だがそのせいで、支離滅裂になってしまったのだろうか。
そもそも、何をどう話したらよいのか柊子自身もよく分からない。
「確かに事情はよく分からないけど、柊子ちゃんが言ってる事は分かる。ダンナさん、どういう訳なのかは分からないけど、アシスタントの女性の家へ頻繁に出入りしていて、仲がとっても良さそうだ、って事なんでしょう?」
中村の言葉に、柊子は大きく頷いた。
「えー?何それ。まさかもしかして…、浮気?」
秋穂が周囲に気遣いように小声で言った。
――浮気…。
やっぱりそういう事なのか。
「浮気って思うのは、やっぱり普通じゃないって、思ったからなんだよね?変な事なんだよね?」
思わず言葉に力が入る。自分が変ではないんだと思いたい。
「柊子の気持ち、分からなくはないけど、まだ断定はできないよ」
自分で浮気と言っておいて、それは無いだろう、と思う。
「ひとつ訊きたいんだけど…」
中村が遠慮がちに言う。
「…夜の方は、どうなってるの?」
「え?夜?…夜は、ダンナは仕事してるから、私は先に寝てる。ほぼ一人寝」
「えーっ?じゃぁ、エッチも無いんだ」
秋穂が目を剥いた。その反応に、柊子はやっと質問の意図を理解したのだった。
「あ、いや、その…。そういうのは、あるのよ。ほぼ…、毎日」
だがここ最近は、柊子の方で拒否している。
「へ?なに、ほぼ毎日って。毎日やってるってことなの?」
「やめてよ、なんだか恥ずかしいじゃない。ここ最近は、不信感が高まり過ぎて拒否してる」
「不信感って事は、やっぱり柊子も浮気を疑ってるって事なんじゃない」
「それは…、よく分からない。本人は、友人として心配だから、親切にしてるって言ってるの。楽しそうに頻繁にやり取りしてるけど、何て言うか性的な雰囲気は感じないのよね。ただ…」
「ただ?」
「ただ、子どもの名前を聞いた時に、何て言うか、頭が変になりそうな感じになった」
「子どもの名前?アシの?」
「そう。…タカシって言うんだって」
「タカシ?」
「うちのダンナ、タカカゲって…」
「……」
柊子の言葉に二人はダンマリになった。