第34話
文字数 1,270文字
三国志のイベントはとても楽しい内容だった。
昼少し前に待ち合わせてバーガーショップで簡単に腹ごなしをし、会場内へ入ると中は大勢の男女でごった返していた。
ゲームやアニメのイベントに参加したことは、過去に何度かある。
大体が大きい会場で、今回はそれほど大きくはない。それでも千人ほどの箱だったのでかなり賑わっていた。
「ゲームの内容、よく知らないけど大丈夫かしらね?」
「そんなの大丈夫ですよ。三国志を知ってる人なら、大体、ついていけます」
ゲームはシュミレーションアドベンチャーゲームで、「五丈原よ、永遠に」というタイトルだった。
その名の通り、諸葛亮孔明が主人公だ。そしてその主人公の声を、柊子が好きな声優、戸部駿一が担当していた。
柊子の好きな孔明を、柊子が敬愛する戸部が担当している。
彼の低くて深い声がキャラクターにピッタリで、柊子は終始、胸を高鳴らせていた。
イベントが終了したのが夕方の四時過ぎで、すっかりゲームの内容に興味を覚えた柊子は、戸部が演じる孔明のグッズを買ってしまった。
「柊子さんなら、絶対に気に入ると思ってました」
そんなこんなで会場を出る頃には六時近くになっていたので、二人で居酒屋へ入り、イベントの内容やゲームの話で盛り上がる。
「三国志のシュミレーションゲームって、某メーカーのしか知らなかったんで、こういうのもあるなんて、ちょっとビックリ。でもイベントは面白かったわ~」
孔明のグッズを手に取りながら、柊子は興奮気味に言った。
「喜んでもらえて、何よりです。行けなくなった友達も、譲った甲斐があったんじゃないですかね」
「いやいや、残念でたまらない思いじゃないの?あっ、友達って、彼女とかじゃないよね?」
「まさか、まさか。高校時代からの友人ですよ。彼女なんていないの、知ってますよねぇ。わざとですか?意地悪だなぁ」
「いやまぁ、知ってはいるけど、それは過去の話で、その後にできた、って事もあり得るじゃない」
会社帰りに何度か一緒に食事や飲みに行っているので、その時点でいない事は確認済みだが、その後の事は分からない。
実際に、柊子は既婚者になっているわけだから。
「やっぱり、彼女とかできちゃったら、こうして柊子さんと遊んだりできなくなるんですかね?」
焼き鳥を串から一気に引き抜いて、口の中で咀嚼している。豪快だ。
「うーん、そうかもね。よく分からないけど、彼女としては心穏やかでは、いられないんじゃない?」
「じゃぁ柊子さんも、本当はこんな所にいたらダメなんじゃないですか?」
「え?」
「だって、人妻でしょ」
思わぬツッコミに柊子は口を噤む。
「あ、でも、柊子さんの所は例外か。お互いに自由がモットーでしたよね。結婚前と変わらない、自由が保障されてるんでしたっけ」
そうだ。その通りだ。その筈なんだ。
それなのに、一緒に住みだし、真木野の存在を知ってから、胸の中のモヤモヤは一向に消えてくれない。
「もしかして、恋愛とかも自由なんですかね」
「え?」
思いもよらなかった言葉に胸がズキリとした。
清原の顔から笑みが消えている。
昼少し前に待ち合わせてバーガーショップで簡単に腹ごなしをし、会場内へ入ると中は大勢の男女でごった返していた。
ゲームやアニメのイベントに参加したことは、過去に何度かある。
大体が大きい会場で、今回はそれほど大きくはない。それでも千人ほどの箱だったのでかなり賑わっていた。
「ゲームの内容、よく知らないけど大丈夫かしらね?」
「そんなの大丈夫ですよ。三国志を知ってる人なら、大体、ついていけます」
ゲームはシュミレーションアドベンチャーゲームで、「五丈原よ、永遠に」というタイトルだった。
その名の通り、諸葛亮孔明が主人公だ。そしてその主人公の声を、柊子が好きな声優、戸部駿一が担当していた。
柊子の好きな孔明を、柊子が敬愛する戸部が担当している。
彼の低くて深い声がキャラクターにピッタリで、柊子は終始、胸を高鳴らせていた。
イベントが終了したのが夕方の四時過ぎで、すっかりゲームの内容に興味を覚えた柊子は、戸部が演じる孔明のグッズを買ってしまった。
「柊子さんなら、絶対に気に入ると思ってました」
そんなこんなで会場を出る頃には六時近くになっていたので、二人で居酒屋へ入り、イベントの内容やゲームの話で盛り上がる。
「三国志のシュミレーションゲームって、某メーカーのしか知らなかったんで、こういうのもあるなんて、ちょっとビックリ。でもイベントは面白かったわ~」
孔明のグッズを手に取りながら、柊子は興奮気味に言った。
「喜んでもらえて、何よりです。行けなくなった友達も、譲った甲斐があったんじゃないですかね」
「いやいや、残念でたまらない思いじゃないの?あっ、友達って、彼女とかじゃないよね?」
「まさか、まさか。高校時代からの友人ですよ。彼女なんていないの、知ってますよねぇ。わざとですか?意地悪だなぁ」
「いやまぁ、知ってはいるけど、それは過去の話で、その後にできた、って事もあり得るじゃない」
会社帰りに何度か一緒に食事や飲みに行っているので、その時点でいない事は確認済みだが、その後の事は分からない。
実際に、柊子は既婚者になっているわけだから。
「やっぱり、彼女とかできちゃったら、こうして柊子さんと遊んだりできなくなるんですかね?」
焼き鳥を串から一気に引き抜いて、口の中で咀嚼している。豪快だ。
「うーん、そうかもね。よく分からないけど、彼女としては心穏やかでは、いられないんじゃない?」
「じゃぁ柊子さんも、本当はこんな所にいたらダメなんじゃないですか?」
「え?」
「だって、人妻でしょ」
思わぬツッコミに柊子は口を噤む。
「あ、でも、柊子さんの所は例外か。お互いに自由がモットーでしたよね。結婚前と変わらない、自由が保障されてるんでしたっけ」
そうだ。その通りだ。その筈なんだ。
それなのに、一緒に住みだし、真木野の存在を知ってから、胸の中のモヤモヤは一向に消えてくれない。
「もしかして、恋愛とかも自由なんですかね」
「え?」
思いもよらなかった言葉に胸がズキリとした。
清原の顔から笑みが消えている。