第40話
文字数 1,310文字
柊子の会社は、毎朝就業始めにラジオ体操をする事になっている。健康増進の為なんだろうが、誰も本気では取り組まない。適当にダラダラとやっているだけだ。
体操が終われば個々の仕事に入る。だが月曜日は課の朝礼だ。その朝礼で、今回は大事な通告があった。
当社で新しく開発されたモーターの、部品カタログと仕様書を作成するにあたり、専任のグループを作ると言う。
そのメンバーに、柊子が入っていた。だが清原も一緒で嫌な気持ちになった。
グループ長は主任の柿原だ。柿原は主任業務と兼任である為、副グループ長の負担が常より重くなると思われるが、その副が選りにもよって柊子と同僚の木下だった事に、柊子は唖然とした。
不安しか生じてこない。
朝礼が終わった後、柿原主任に手招きされた。
「悪い…。副はお前を推薦したんだが、上がさ。男じゃないと、って聞かなくてな」
済まなそうな口ぶりだ。
この会社にいて、時々感じてはいた。男性優遇な体質を。
それでも仕事の内容が好きだから、柊子は気にせずやってきた。別に出世したいとは思っていない。キャリアは積みたいが役職なんてどうでも良い。自分自身がやりがいを感じて頑張れる仕事内容であれば、それ以上は特に望まない。
だが、同僚の、はっきり言って自分より使えないと思っていた男子社員が上の役職について、自分はソイツに使われる立場になるのかと思うと、言い知れぬ感情が湧いてくるのを否めなかった。
木下が、仕事が出来る男だったら当然だろうと思う。
ただ、柿原が自分を推してくれた事は嬉しく思う。認められているという事だ。
「今回は特に、物がモーターだろう?だから、女じゃ理解できないだろうって、上が勝手に思い込んでるんだよ。それでもお前の入力の実力や編集力は買われてる。だから抜擢されたんで、頑張ってサポートして欲しい」
こうまで言われては頑張るしかない。
正直なところ、新開発のモーターと聞いて難しそうだと思ったのだから、これで副なんて言われたら卒倒するかもしれない。木下だったのが意外なだけであり、自分がなりたいとは思っていない。
「今お前が取り組んでいる仕事は、樫原と中村さんに頼んでくれ。ただ樫原は勤務が週三だし、中村さんもパートだから時間の制約があるが、その辺の調整はお前がしてくれ。だから仕事が増えて大変になるが…。大丈夫だよな?」
「はい…」
そう答えるしかないだろう。
難しい仕事を頼まれたが、それをこなさなければ自分のキャリアアップは望めないと自分に言い聞かせる。全力投球するしかない。
昼休み、休憩室で秋穂に、清原とのやり取りを問い詰められて、柊子は土曜日の事を話した。中村も一緒に聞いている。
「何それ?きゃぁーっ!」
両拳を顎の下で握りしめ、大好きなスターを目の前にでもしたようなテンションだ。もしくは、マンガやドラマの展開に興奮しているような…。
柊子の方は呆れる。こんな事で喜ばれるなんて心外過ぎるだろう。
「ちょっとちょっと、どういう事?清原って、柊子に気が合ったんだ。確かに仲がいいな、とは思ってたけど、ただの先輩後輩だと思ってたー」
そこは全くの同感だ。だがその後の言葉には同意しかねる。
体操が終われば個々の仕事に入る。だが月曜日は課の朝礼だ。その朝礼で、今回は大事な通告があった。
当社で新しく開発されたモーターの、部品カタログと仕様書を作成するにあたり、専任のグループを作ると言う。
そのメンバーに、柊子が入っていた。だが清原も一緒で嫌な気持ちになった。
グループ長は主任の柿原だ。柿原は主任業務と兼任である為、副グループ長の負担が常より重くなると思われるが、その副が選りにもよって柊子と同僚の木下だった事に、柊子は唖然とした。
不安しか生じてこない。
朝礼が終わった後、柿原主任に手招きされた。
「悪い…。副はお前を推薦したんだが、上がさ。男じゃないと、って聞かなくてな」
済まなそうな口ぶりだ。
この会社にいて、時々感じてはいた。男性優遇な体質を。
それでも仕事の内容が好きだから、柊子は気にせずやってきた。別に出世したいとは思っていない。キャリアは積みたいが役職なんてどうでも良い。自分自身がやりがいを感じて頑張れる仕事内容であれば、それ以上は特に望まない。
だが、同僚の、はっきり言って自分より使えないと思っていた男子社員が上の役職について、自分はソイツに使われる立場になるのかと思うと、言い知れぬ感情が湧いてくるのを否めなかった。
木下が、仕事が出来る男だったら当然だろうと思う。
ただ、柿原が自分を推してくれた事は嬉しく思う。認められているという事だ。
「今回は特に、物がモーターだろう?だから、女じゃ理解できないだろうって、上が勝手に思い込んでるんだよ。それでもお前の入力の実力や編集力は買われてる。だから抜擢されたんで、頑張ってサポートして欲しい」
こうまで言われては頑張るしかない。
正直なところ、新開発のモーターと聞いて難しそうだと思ったのだから、これで副なんて言われたら卒倒するかもしれない。木下だったのが意外なだけであり、自分がなりたいとは思っていない。
「今お前が取り組んでいる仕事は、樫原と中村さんに頼んでくれ。ただ樫原は勤務が週三だし、中村さんもパートだから時間の制約があるが、その辺の調整はお前がしてくれ。だから仕事が増えて大変になるが…。大丈夫だよな?」
「はい…」
そう答えるしかないだろう。
難しい仕事を頼まれたが、それをこなさなければ自分のキャリアアップは望めないと自分に言い聞かせる。全力投球するしかない。
昼休み、休憩室で秋穂に、清原とのやり取りを問い詰められて、柊子は土曜日の事を話した。中村も一緒に聞いている。
「何それ?きゃぁーっ!」
両拳を顎の下で握りしめ、大好きなスターを目の前にでもしたようなテンションだ。もしくは、マンガやドラマの展開に興奮しているような…。
柊子の方は呆れる。こんな事で喜ばれるなんて心外過ぎるだろう。
「ちょっとちょっと、どういう事?清原って、柊子に気が合ったんだ。確かに仲がいいな、とは思ってたけど、ただの先輩後輩だと思ってたー」
そこは全くの同感だ。だがその後の言葉には同意しかねる。