第37話

文字数 7,914文字

 佐藤ナナが、帰った…

 病室を出て行った…

 私は、一人、病室に残りながら、考えた…

 考え続けた…

 昭子の狙いを…

 伸明の狙いを…

 考え続けた…

 そして、ため息をついた…

 つくづく、自分には、平穏な人生がない(苦笑)…

 ため息をつきながら、考えた…

 思えば、寿綾乃を名乗ったときから、平穏な人生とは、縁遠くなった…

 矢代綾子が、寿綾乃と名乗る…

 それを知られると、困ると、考え、異常なまでに、用心深くなった…

 そして、母の教え…

 当時は、本物の寿綾乃が、五井の親族とは、思わなかったが、いずれ、私が財産争いに巻き込まれることは、わかっていた…

 だから、そのために、強い男に守ってもらいなさい…

 それが、母の遺言だった…

 この場合の強さとは、腕力ではない…

 ケンカ=殴り合いの強さではない…

 この場合の強さとは、財力…

 ずばり、金のある男…

 金があれば、良い人脈も持っているし、有能な弁護士も知っているに違いない…

 だから、そんな金持ちの男と知り合い、自分の後ろ盾とする…

 そうすれば、やがて、金持ちの遺産争いに巻き込まれるであろう、私に、とって、強力な援軍になって、くれると、思ったのだ…

 そう考えれば、母の忠告はわかる…

 が、冷静に考えれば、笑える…

 金持ちの争いに巻き込まれるから、金持ちを後ろ盾にしろ、なんて…

 本末転倒もいいところだ(笑)…

 だが、まあ、実際は、母の言葉が足りないだけだった…

 思えば、滅多に五井のような大金持ちは、いないから、そこそこの金持ちでも、後ろ盾についてもらえれば、私の役に立つと言いたかったのだろう…

 そして、それが、私にとって、藤原ナオキだった…

 ナオキとは、私が、高校生のときに、知り会った…

 ナオキは、まだ一般的には、無名だが、才能溢れる男だった…

 また、ルックスも良かった(笑)…

 成功するには、才能はもちろん、必要だが、運も必要…

 ルックスも悪いより、良い方がいい…

 簡単に目立つからだ(笑)…

 なにより初対面のひとに、覚えてもらえやすい…

 私は、ナオキは、必ず成功すると信じていたし、現実に、私が、予想したよりも、はるかに大きな成功をした…

 が、

 その代償は、大きかった…

 代償とは、ずばりユリコを敵に回したこと…

 結果的に、ユリコから、夫のナオキを寝取ることになり、その結果、私は、会社を追われることになった…

 ナオキは、先日、私の復職を仄めかしたが、なにより、ユリコを敵に回したことは、痛かった…

 ユリコは、夫だったナオキ同様、才能溢れる人間だったからだ…

 それを敵に回すことは、消耗戦に突入することを意味した…

 それゆえ、文字通り、消耗した…

 そして、その結果、戦いが、常套化したというか…
 
 当たり前になった…

 それが、一転、ジュン君の運転するクルマに轢かれて、戦いは、休止…

 終わった…

 それが、今は、病気やケガで、忘れかけていた闘争の精神に火が付いたというか…

今、五井と米倉の争いを前にして、私のカラダの中のアドレナリンが、再び活発化したというか…

 興奮したというか…

 火が付いた!…

 病室で、ベッドの上で、寝転んでいた私に、闘争の神様が、蹴りを入れたようだった…

 要するに、スイッチが入ったのだ…

 戦いのスイッチが入ったのだった…

 私は、思った…

 と、

 そんなことを、考えていると、突然、病室のドアが開いた…

 私は、

 「…佐藤さん?…」

 と、声をかけた…

 「…なにか、忘れ物?…」

 が、返事はなかった…

私が、見ると、病室に、入って来たのは、佐藤ナナではなかった…

 私の眼前に現れたのは、もっと、身長の高い、サングラスをした、長身の男だった…

 「…アナタ…誰?…」

 私は、訊いた…

 男は、無言で、サングラスをはずした…

 私は、その男の顔を見て、驚いた…

 男は、冬馬…

 菊池冬馬だった…

 「…冬馬理事長…」

 思わず、口から、冬馬の名前が出た…

 その言葉に、

 「…もう理事長じゃ、ありませんよ…」

 と、冬馬が、自嘲気味に笑った…

 私は、冬馬の言葉に、

 「…」

 と、なにも、言わなかった…

 冬馬が、すでに、理事長を罷免されたのは、わかっていたが、冬馬の自尊心を考えて、あえて

 「…冬馬理事長…」

 と、呼んだのだ…

 私は、ベッドの上で、上半身を起こしていた…

 その眼前に、菊池冬馬は、立った…

 「…一体、どういう、ご用件で…」

 私は、言った…

 聞かずには、いられなかった…

 まさか、菊池冬馬が、私の病室に、突然、現れるとは、思わなかったからだ…

 菊池冬馬は、

 「…」

 と、答えなかった…

 黙って、その長身から、ベッドの上の私を見下ろしていた…

 だから、私は、

 「…どういうご用件で?…」

 と、繰り返した…

 そして、冬馬を睨みつけた…

 互いの視線と視線が、ぶつかった…

 冬馬の険のある目が、冷ややかに、私を見下ろしていた…

 二人とも、互いに、睨み合った…

 そんな、状態が、十秒、

 あるいは、

 二十秒、続いただろうか?

 ようやく、冬馬が、口を開いた…

 「…たいした用事はない…」

 「…用事はない?…」

 今度は、私が、冬馬の言葉を繰り返した…

 「…だったら、どうして、ここへ?…」

 「…アンタが、まもなく、この病院を退院すると聞いたから…」

 …そうか?…

 …それでか?…

 私が、この五井記念病院を退院すると、聞いて、やって来たわけか?

 だから、サングラスをかけて、きたわけだ…

 つい最近まで、名ばかりとはいえ、この病院の理事長だった、菊池冬馬が、素顔のままで、この五井記念病院にやって来ることはできない…

 冬馬が、事実上、更迭=クビになったのは、この病院の関係者で、知らないものは、ないに違いない…

 だから、とてもじゃないが、素顔で、この病院にやって来ることはできない…

 が、

 逆に言えば、それでも、私に会いたかったわけだ…

 追放された、前理事長だと、バレるかもしれない危険を冒してまで、私に会いたかったわけだ…

 一体、どうして?

 私は、思った…

 私が、考え続けていると、

 「…アンタが、退院してからでもよかったが、それでは、アンタの自宅に行くことになる…それは、ちょっと…」

 冬馬が、笑った…

 すると、意外にも、冬馬の目が笑った…

 これは、驚いた…

 冬馬の目は、いつも険があり、私は、目に険がある、冬馬しか、見ていなかったので、驚いた…

 同時に、新鮮でもあった…

 「…一度、アンタと、二人きりで、話したかった…」

 「…私と?…」

 実に、意外な申し出というか…

 …一体、私と、どんな話をしたいのだろう?…

 「…どうして、私と?…」

 「…アンタが、伸明さんの婚約者だから…」

 実に、納得のできる説明だった(笑)…

 それから、再び、私と、冬馬は、互いに、無言のまま、睨み合った…

 二人とも、睨み合ったまま、口をきかない…

 どうしようかと、悩んだが、今度は、私から、

 「…菊池さん…菊池リンさんと、結婚する形で、五井一族に、復帰するんですか?…」

 と、直球に聞いた…

 本当ならば、さすがに、こんな質問はできない…

 だが、冬馬とは、疎遠というか…

 そもそも、あまり付き合いがない…

 だから、遠慮する仲でもないと思った…

 本当は、親しくない仲だから、遠慮して、訊けないのだが、この場合は、真逆…

 私にとって、真逆だった…

 一方、冬馬にとっても、私の質問は、意外というか、予想外だったようだ…

 「…それは、よくわからない…」

 と、早口で、少々、戸惑ったように、答えた…

 「…どうして、わからないんですか?…」

 「…オヤジ…」

 即答した…

 「…オヤジの件がある…果たして、オレだけ、五井に復帰してもいいのか?…」

 「…」

 「…それに、五井一族…果たして、一度、追放されたオレが、菊池リンちゃんと、結婚する形で、五井に復帰することを、了承するのか? 甚だ、疑問だ…」

 冬馬が、自嘲気味に言った…

 私は、冬馬のこの返答を聞いて、少なくとも、この冬馬はバカではないと、思った…

 少なくとも、自分の置かれた状況が、読めないほど、愚かではない…

 話せば、まともな話ができる人間だと、思った…

 だから、興味を持った…

 「…菊池さんと、結婚するのは、昭子さんが、伸明さんを、懐柔するためと、訊きましたが…」

 「…懐柔?…」

 「…伸明さんは、冬馬さんが、好きだから、五井家を追放されたのを、不憫に思って、それで、五井家を、実質、五井東家の人間で、固めるのを納得させるために…」

 私が、話すと、私の話を遮るように、

 「…あのババアは、そんなタマじゃない…」

 と、吐き出すように、言った…

 「…ババア?…」

 「…伸明さんの母親の昭子だ…」

 冬馬が吐き出すように、言う…

 「…あの女狐…」

 心底、うんざりした口調だった…

 「…女狐?…」

 「…今の五井は、事実上、すべて、あの女が仕切っている…伸明さんも、あの女には、頭が上がらない…」

 「…」

 「…それをいいことに、あの女狐が、好き勝手に、五井家を翻弄している…」

 「…翻弄?…」

 「…本人が、どう思っているか、わからないが、あの女狐が、五井の方向性を決めている…だから、あの女狐が、気に入らなければ、なにもできない…」

 「…」

 「…アンタもそうだ…」

 「…私も? …どういう意味ですか?…」

 「…アンタも、あの女狐が、気に入っている間はいい…だが…」

 「…だが、なんですか?…」

 「…気に入らなくなったら? …あるいは、使えないと、思われたから、掌を返して、捨てられるだろう…」

 「…」

 「…利用価値があるうちは、見捨てられない…菊池リンのように…」

 「…利用価値?…」

 「…菊池リンが誰と結婚しようが、菊池リンは、昭子の妹、和子の孫…切り捨てることはできない…」

 「…」

 「…オレとオヤジを追放して、菊池リンに、五井東家を継がせるのは、ずっと前から、あの女狐が、決めていたに違いない…」

 「…でも、冬馬さんだって、菊池リンさんと結婚すれば、五井東家に、戻れるんじゃ…」

 「…甘い!…」

 吐き捨てた…

 「…たとえ、戻れても、立場が違う…」

 「…立場?…」

 「…以前は、オレが、次の五井東家当主になるはずだった…それが、たとえ、菊池リンと結婚して、五井東家に戻れても、当主は、菊池リン…オレじゃない…」

 「…」

 「…つまりは、形だけ、五井に復帰するだけ…この病院の理事長だったときと、同じ…
名ばかり、復帰さ…たとえ、五井に復帰しても、五井東家を代表するのは、菊池リン…オレに発言権は、一切、与えないつもりだろう…」

 菊池冬馬が、激白する…

 「…だから、女狐なんだ…」

 冬馬が、説明する…

 たしかに、冬馬の言う通りなら、女狐に違いない…

 一度は、追放した、冬馬を、一族に復帰させる…

 傍目には、一見、温情のある、行動のようにも、思えるが、その実、権限は、与えない…

 五井東家、いや、五井家の人間としての、権限は、与えないに違いない…
 
 要するに、もう一度、面倒は見てやるが、あくまで、面倒を見るだけ…

 それまで、五井一族だったときの、権限は、一切与えない、ということだ…

 これは、ある意味、非情と言うか…

 冷酷と言うか…

 なまじ、一族から、追放されるよりも、ある意味、タチが悪いというか…

 いっそ、追放するのなら、追放してくれと言いたい…

 なまじ、一族に復帰できても、それまでと、一切違った、お飾りのような存在になる…

 あくまで、菊池リンの夫として、五井に復帰するに過ぎない…

 要するに、今後とも、五井で面倒は、見てやるが、それまでと違って、一族としての権限は、一切与えないよ、と、宣言しているのだ…

 これは、別の見方をすれば、狡猾極まりない…

 追放は、しても、一族の娘と結婚することで、復帰させる…

 傍目には、温情溢れる行為に見られるが、その実、権限は与えない…

 あくまで、生活の面倒を見るだけ…

 別の見方をすれば、飼い殺しだ…

 たしかに、昭子が、そんなことをするのならば、恐ろしいこと、この上ない…

 なにより、通常は、思いつかない発想だ…

 そして、もし、昭子が、ずっと前から、このことを、狙っていたとしたら・

 ふと、思った…

 昭子は、冬馬と、その父、重方(しげかた)を、嫌っていた…

 評価していなかった…

 だから、本音では、五井家から、追放したかったに違いない…

 だから、もしかしたら、ずっと、前から、二人の処遇を画策していた可能性もある…

 その可能性を否定できない…

 そして、この場合のキーパーソンは、菊池リン…

 彼女の存在だ…

 菊池リンは、昭子の一卵性双生児の妹、和子の孫…

 無下にはできない…

 大事にしなければ、ならない…

 昭子にとって、和子を敵に回すことはできない…

 敵に回せば、五井本家が、割れてしまうかもしれないからだ…

 和子もまた、前五井家当主、建造の弟、義春に嫁いだ…

 だから、事実上、本家の人間だ…

 その本家が割れることは、できない…

 だから、和子を大事にしなければ、ならない…

 菊池リンを大事にすることは、和子を大事にすることと、同じだからだ…

 だから、菊池リンが、大切になる…

 キーパーソンになる…

 そんなことを、考えていると、

 「…アンタも気を付けることだ…」

 と、突然、冬馬が、私に言った…

 「…気を付ける?…」

 「…あのババアに、安易に気を許さないことだ…」

 冬馬が、忠告した…

 「…アンタの正体は、あのババアもとっくに見抜いている…」

 「…正体?…」

 「…矢代綾子…」

 突然、私の本名を言った…

 「…アンタが、これまで、どうやって生きてきたか、それを知っている…」

 「…」

 「…だからこそ、伸明さんのお嫁さんにしたいんだろう…アンタは、使える…だから、お坊ちゃまの伸明さんを助けることができると、思っている…」

 「…」

 「…だが、使えないとわかれば、すぐに切り捨てるだろう…」

 「…」

 「…アンタは、オレのように、五井一族じゃない…だから、救われることもない…それを覚えてゆくことだ…」

 「…」

 「…今日は、それを言いに、来ただけだ…」

 言い終わると、踵を返して、歩き出した…

 私は、その背中に、

 「…どうして?…」

 と、問い掛けた…

 「…どうして、私に、そんなことを言うんですか?…」

 「…伸明さんのためだ…」

 冬馬が、足を止めて言った…

 「…アンタのためじゃない…」

 振り返らずに、続けた…

 「…伸明さんは、オレが、五井家に残れるように、尽力してくれた…その伸明さんと結婚するかもしれない女に、オレが、手を貸すのは、当然だろう…」

 「…」

 「…オレは、アンタが好きでも、嫌いでもない…だが、伸明さんと、結婚するかもしれないとなれば、話は別だ…」

 「…」

 「…だから、会いに来た…それだけだ…」

 言い終えると、私に背中を向けたまま、スタスタと、歩いて、病室を出て行った…

 私は、唖然とした…

 っていうか、ちょっと信じられなかった…

 つい今、目の前で、起こったことが、信じられなかった…

 まさか、前五井記念病院の理事長、菊池冬馬が、私に会いに来るとは?

 驚くというより、ありえない出来事だった…

 解任された、前五井記念病院の理事長が、サングラスをかけて、解任された職場に、やって来る…

 これだけで、随分、危険な行為だ…

 もし、周囲の人間にバレれば、カッコ悪いこと、この上ないからだ…

 そんな危険を冒してまで、私に会いにやって来るとは?

 ある意味、大胆…

 大胆だった…

 そして、思った…

 菊池冬馬は、伸明が好きなんだろうと、あらためて、気付いた…

 伸明もまた、子供の頃は、冬馬と、よく遊んでやったと、以前、言っていた…

 冬馬は、伸明よりも、十歳年下…

 伸明が、十五歳ならば、冬馬は、五歳…

 このときの十歳差は、大きい…

 そして、人間は、大げさにいえば、幼少期の体験が、人生を決定づけるというか…

 幼少期に、どんな体験をしたかで、その人間の人格が形成される…

 それほど、幼少期の体験は、大切だ…

 そして、その幼少期に、冬馬は、伸明と、接した…

 だから、冬馬にとって、伸明は、親しい身内の人間…

 一方、それは、伸明にとっても、同じに違いない…

 中学や高校時代に、遊んでやった親戚の子供に違いない…

 だから、普通よりも、冬馬に思い入れがあるのだろう…

 だから、冬馬を、五井一族から、追放するのを、反対したのだろう…

 私は、思った…

 そして、それが、昭子と、伸明の、冬馬に対する温度差の正体かもしれないと、思った…

 昭子にとっては、冬馬は、甥…

 自分の弟、重方(しげかた)の息子…

 だが、成人した昭子にとって、冬馬は、ただの甥に過ぎない…

 たとえば、昭子が、息子の伸明と同じく、十五歳で、五歳の冬馬と遊んでいれば、また、伸明同様、冬馬に思い入れがあったかもしれない…

 私は、思った…

 たとえ、冬馬の能力を、今と同じく、評価しなくても、簡単に切ることが、できない…

 あるいは、

 簡単に切ることに躊躇いが、生じるのでは?

 と、考えた…

 どうしても、子供の頃に、知っていれば、思い入れが、増すからだ…

 昭子と、冬馬の年齢を考えた…

 が、

 そこまで、考えると、冬馬の父、重方(しげかた)のことが、脳裏に浮かんだ…

 重方(しげかた)は、昭子の十歳年下の、弟…

 にもかかわらず、昭子は、重方(しげかた)を評価していない…

 だとすれば、昭子が、十五歳で、五歳の冬馬と知り合っても、同じ…

 伸明のように、冬馬を可愛がることは、ないかもしれない…

 いや、

 可愛がることは、あっても、それと、評価とは、別に考える可能性が高い…

 これは、昭子だからだろうか?

 ふと、思った…

 昭子が、生まれつき、冷酷な性格だからだろうか?

 それとも、男と女の違いだろうか?

 ふと、思った…
 
 よく言われることだが、一般的に、男よりも、女の方が、冷酷と言うか、計算高い…

 計算高いといってしまえば、それまでだが、別の言い方をすれば、冷静に、相手の能力を見ることに、長けている…

 だから、優れている…

 男よりも、女の方が優れている…

 よく、女の直感と言われるが、これは、相手を冷静に見ることができるから… 

 冷静に、相手の能力をはかることができるから、その結果、相手の出方をはかることができる…

 予想することができるのだ…

 それが、直観の正体と言うか…

 言ってみれば、たしかに、勘だが、その背景には、なにより、相手の能力を、はかる能力が、存在する…

 もちろん、これは、一般論…

 女が、男よりも優れていると言っているわけではないし、女でも、男でも個人差が、生じる…

 すべての女が、直観が、優れているわけではないからだ…

 また、これは、あくまで、女の直感について、言っているので、あって、すべての能力が、女の方が、男よりも優れていると言っているわけでもない…

 いつのまにか、昭子のことを、考えている間に、女の直感について、考えていた…

 道を外れていたというか(苦笑)…

 しかしながら、この直観が、生きることは、ある…

 私に限っていえば、ユリコのこと…

 藤原ナオキの元の妻、ユリコとは、一目会ったときから、気に入らなかった…

 同時に、ただ者ではないというか…

 難敵だと、直観した…

 そして、その直感に、間違いはなかった…

 これは、女の直感が、当たった例に、他ならない…

 そして今、その直感に当てはめれば、難敵は、昭子…

 五井家当主、伸明の母、昭子に他ならなかった…

                
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