第74話

文字数 7,916文字

 この目の前の二人…

 佐藤ナナと、菊池重方(しげかた)は、父娘に違いない…

 やはり、私は、そう確信した…

 いや、

 それを言えば、私は、最初から、そのことに、気付いていた…

 気付いていたのかもしれない…

 なぜなら、菊池リン…

 彼女の存在だ…

 この佐藤ナナと、菊池リンは、似ているのだ…

 肌の色を除けば、キャラが似ている…

 共に、愛くるしく、頼りないというか…

 この佐藤ナナは、菊池リンに比べて、彼女ほど、頼りなくはないが、キャラは同じ…

 可愛らしく、誰からも、好かれる…

 この佐藤ナナは、あの菊池リンと、入れ替わっても、やはりというか…

 五井家のアイドルになれただろう…

 いや、

 五井家に限らず、アイドルになれただろう…

 学校や、職場のアイドルになれたに違いない…

 私が、そんなことを、考えていると、

 「…寿さん…」

 と、再び、佐藤ナナが、私に声をかけた…

 「…なに?…」

 私は、答える…

 「…さっきの話です…寿さんは、諏訪野伸明さんと、藤原ナオキさんを、秤にかけているんですか?…」

 再び、私に聞いた…

 私は、どう言おうか、戸惑った…

 が、

 やはり、正直に答えるに限ると思った…

 「…そんなことないわ…」

 「…そんなことない? …だったら、どうして、いっしょに、住んでいるんですか?…」

 「…私の面倒を見てくれているの?…」

 「…面倒?…」

 「…佐藤さん…アナタは、私の担当看護師だったから、わかるでしょ? …私は、一人では生活できない…」

 「…」

 「…体調が、普通のときはいい…でも、なにかあったときに、誰かが、傍にいてくれないと…それで…」

 「…それで、藤原さんに…」

 「…私と、藤原さんとは、男と女としては、もう終わっているの…」

 「…どういうことですか?…」

 「…熟年夫婦のようなものね…同居はしても、とっくに男女の関係はなくなっている…」

 私の言葉に、目の前の、佐藤ナナと、菊池重方(しげかた)が、目を見合わせた…

 私の告白が、本当か、どうか、考えたのだろう…

 思わず、顔を見合わせた…

 「…私が、藤原さんと、知り合ったのは、高校生の頃…その頃から、男女の関係になった…だから、今は、もうずっと前から、そういう関係じゃない…」

 「…」

 「…つまりは、今さらってやつ…お二人が、信じるか、信じないかは、別として…」

 私の言葉に、またも、二人は、顔を見合わせた…

 そして、今度、口を開いたのは、重方(しげかた)だった…

 「…ボクは、信じます…」

 重方(しげかた)が、力を込めた…

 「…男の立場で、言わせてもらえば、ずっと同じパートナーでは、その気になれない…」

 私は重方(しげかた)の言葉に、思わず、苦笑した…

 「…もちろん…女性もそうでしょうけど…」

 慌てて、付け加えた…

 その重方(しげかた)を、傍らの佐藤ナナは、キッと、睨みつけた…

 やはりというか…

 その行動で、この二人が父娘であることを、確信した…

 そうでなければ、普通、こんな行動を取らないものだ…

 「…私と藤原さんは、男と女の関係は、ずっと前に終わってます…だから、伸明さんと、付き合う上で、私に、やましい気持ちは、少しもありません…」

 私は、強弁した…

 声のトーンを少しばかり上げた…

 やましい気持ちがあるから、強弁する…

 後ろめたい気持ちがあるから、わざとそうではないと、声を張り上げる…

 我ながら、バカげているというか…

 まったく、もって、信用できない女だと、自分自身を思った…

 顧みた…

 まさに、バカの極み…

 自分でも、内心、吹き出しそうだった…

 それを見て、もしかしたら、私の心の内に、気付いたのかもしれない…

 またも、重方(しげかた)が、

 「…ひとって、面白いものですよね…」

 と、いきなり、言った…

 私は、重方(しげかた)が、なにを言いたいのか、わからなかった…

 だから、

 「…なにが、面白いんですか?…」

 と、聞いた…

 「…ひとの見た目と中身というか…」

 「…どういう意味ですか?…」

 「…自分が、なにを、考えているかと、周りが、自分をどう見ているかとは、まったく、違う…」

 一体、なにを言い出すのだろう…

 私は、思った…

 「…ボクの場合が、そうです…」

 「…どういう意味ですか?…」

 「…菊池派の立ち上げ…信じてもらえるかどうかは、わかりませんが、僕自身は、最初から、乗り気じゃなかった…」

 「…」

 「…いわば、無理やり神輿(みこし)に担がれたというか…」

 「…」

 「…これは、正直に言って、国会議員になったときも、そうだった…」

 「…どういう意味ですか?…」

 「…やはりというか、周囲の者が、お膳立てして、いわば、ボクは、その用意された船に乗ったというか…」

 「…」

 「…変な話…断り切れなかった…」

 「…」

 「…誰もが、生きてゆく上で、大切なのは、周囲の者と、どう折り合いをつけるか…」

 「…」

 「…例えば、周囲の者が、色々お膳立てしてくれたり、アドバイスをしてくれたり、する…でも、いつも、そのお膳立てや、アドバイスに従わないと、アイツには、なにを言っても、無駄だと、陰口を叩かれる…真逆に、ただ、いつも、周囲の人間の意見に従っていれば、アイツは、自分がないだとか、周囲の操り人形だとかと、陰口を叩かれる…」

 「…」

 「…いわば、その匙加減というか、それが、生きてゆく上で、難しい…」

 「…」

 「…とりわけ、ボクは、それが、苦手だ…姉の昭子が、ボクを嫌うのは、それも、一因だった…」

 「…」

 「…ボクが、誰かに利用される…それを、恐れたんだろう…」

 「…失礼ですが、重方(しげかた)さんは、誰に、利用されたんですか?…」

 「…大場小太郎…」

 即答した…

 「…大場小太郎…重方(しげかた)さんの派閥のリーダーだった?…」

 「…そうです…」

 「…彼は、最初から、五井の金を狙っていた…だから、周囲の者に、働きかけ、ボクを選挙に、担ぎ出そうとした…ボクを利用するためです…」

 「…」

 「…そして、今回、ボクを追放したのは、ボクが、役目を終えたから…」

 「…役目を終えた? それは、一体?…」

 「…大場派の幹部の役目です…」

 「…それは、どういう?…」

 「…ほら、今も言いましたが、最初に、国会議員にならないかと、大場さんに、誘われたときは、彼も中堅代議士…派閥のリーダーなどではなかった…それが、出世して、自分の派閥を持つまでになった…そして、ボクは、その派閥の幹部…会社で、言えば、取締役ですか…でも、その先がない…」

 「…どういう意味ですか?…」

 「…ポストです…」

 「…ポスト?…」

 「…ポスト=地位です…大場派の幹部には、したけれども、いつまでも、幹部のままでは、困る…かといって、それ以上の地位は与えられない…要するに扱いに困ったわけです…」

 「…」

 「…だから、リストラした…」

 「…リストラ?…」

 「…よく世間で、聞くでしょう…手っ取り早く、地位がある者を辞めさせる手段として、外部の人材会社を使う…アナタは、優秀な人材だ…今の会社で、いるのは、惜しい…もっと、大きな会社で、自分の力を生かしてみれば、どうだ? …なんて、言われて、2、3の有名な会社の名前を引き合いに出す…それで、心が揺れて、退職すると、そんな話は、どこにもない…最初から、追い出したい人間を選んで、会社に人事部が、その人間をスカウトしてくれと、頼んでいる…それと、同じです…」

 「…」

 「…ボクは、それに、気付いたときは、後の祭りだった…あの大場小太郎に、言いように、使い捨てられた…」

 重方(しげかた)が、笑う…

 が、

 その顔には、悲壮感がなかった…

 むしろ、晴れやかだった…

 私は、そんな晴れやかな表情をする、この菊池重方(しげかた)が、不思議だった…

 自分が、いいように、使い捨てられた…

 そう、自分自身で、言っているにも、かかわらず、さっぱりとしていた…

 一体、どうしてだろう?

 「…失礼ですが…」

 「…なんですか?…」

 「…自分が、使い捨てられたと、言いながら、まるで、悲壮感がないご様子ですが…」

 「…合わなかったんですよ…」

 「…合わなかった…なにがですか?…」

 「…国会議員が…」

 「…」

 「…あの濃密な世界が合わなかった…あの世界は、とりわけ、人間関係が、濃いというか…実は、その世界から、おさらばできるかもしれないから、ホッとしている気持ちもあるんです…」

 「…」

 「…だから、大場さんに、恨みはない…大場さんも、大場さんで、生き残ることに、必死です…」

 「…必死…」

 「…変な話…寿さんも、生きるために、肉や魚を食べるでしょう…それと、同じです…国会議員は、とりわけ権謀術数の世界です…今日の友は、明日の敵という世界です…政党を渡り歩く人間は、数知れず…そもそも、ボクは、そんな世界に向いてなかった…」

 重方(しげかた)が、晴れやかな表情で、言った…

 私は、そんな菊池重方(しげかた)を、目の前に見ながら、この重方(しげかた)を、昭子が、嫌う理由が、わかった…

 おそらく、この重方(しげかた)が、言うように、重方(しげかた)は、権謀術数が、苦手なのだろう…

 人間としては、それでもいいが、五井家の人間としては、困る…

 ビジネスもまた、権謀術数が、うごめく世界だからだ…

 たやすく、相手に騙されるようでは、困る…

 だから、もしかしたら、あの昭子は、五井家から遠ざけるために、この重方(しげかた)が、国会議員になるのを、容認したのではないか?

 ふと、思った…

 五井の主要な会社で、社長を務めるよりも、五井へのダメージが少ないと、考えたのかもしれない…

 国会議員は、大変だが、それに、専念することで、事実上、五井家のビジネスから、手を引かせることができる…

 だから、重方(しげかた)には、悪いが、ここでも、重方(しげかた)は、戦力外…

 必要とされなかったのかもしれない…

 私は、それに、気付いた…

 この菊池重方(しげかた)と、いう男…

 決して、無能な男ではない…

 だが、いかんせん、仕事に恵まれなかった…

 自分の能力を生かせなかったのだろう…

 権謀術数が、苦手ということは、人間関係が、苦手と告白しているのと、同じ…

 人間関係というのは、この重方(しげかた)の立場の人間ならば、まずは、広く浅く、誰とでも、付き合わなければ、ならない…

 おそらく、それができないのだろう…

 普通の人間ならば、できなくても、いいが、やはり、この菊池重方(しげかた)ほどの立場の人間ならば、できなければ、困る…

 頭脳は明晰でも、人間関係が、苦手では、あの昭子が、扱いに、困ったのだろう…

 私は、そう思った…

 それゆえ、この重方(しげかた)を、昭子は、評価しなかったに違いない…

 「…最初の話に戻せば、人は、見た目と中身が違う…ボクが、こんなことを言ったのは、ボクがやる気満々で、国会議員になったと思う人間が、周囲にもいたからです…ですが、さっきも言ったように、ボクは、まったく乗り気じゃなかった…」

 「…」

 「…これを、寿さんに当てはめても、同じなんじゃないですか?…」

 「…同じ?…」

 「…失礼だが、寿さんが伸明クンに執着しているようには、見えない…かといって、藤原さんにも、執着しているようにも、見えない…」

 「…」

 「…いわば、自由人というか…誰にも、束縛されずに生きているように、見える…」

 「…」

 「…でも、内心は、わからない…」

 …それでは、まるで、私が、腹黒いと言っているようなもの…

 思わず、苦笑した…

 この菊池重方(しげかた)の言葉を鵜吞みにすれば、私、寿綾乃は、なにを考えているか、わからない…

 食わせ者…

 いわば、誉め言葉を言って、中身は、違うと言っているようなものだ(笑)…

 怒ると、いうより、呆れた…

 要するに、自分は、野心満々に見えるが、そうではない…

 真逆に、

 アナタは、野心がないように、見えるが、内心は、野心満々だと言っているのだ…

 それに、気付いた、私は、呆れた…

 呆れて、モノも言えなくなった…

 それと、

 なんという、腹黒い男だろうと、思った…

 いわば、当初の評価と、まったく異なる評価をした…

 それは単純に、自分の悪口を言われたからだ(笑)…

 それまでは、冷静に一歩引いて、この菊池重方(しげかた)の能力を見定めていたが、自分の悪口を言われたことで、頭に来た…

 腹が立った…

 その結果、冷静で、いられなくなったのだ…

 だから、急に、この重方(しげかた)への評価が、辛口になった…

 が、

 もしや、それは、罠なのか?

 とも、思った…

 わざと、私の悪口を言って、私が、どういう反応を示すのか、見定めている…

 その可能性も考えた…

 そう考えると、不用意に、言葉を発せなくなった…

 私が、今、なにを言っていいのか、わからなくなった…

 なにか、言えば、揚げ足を取られる…

 そう、考えた…

 すると、なにも、言葉にできなくなった…

 なにか、言えば、それを契機に、どんな話が、展開するのか、わからない…

 そう、考えた…

 そう、考えながら、目の前の菊池重方(しげかた)を見た…

 そして、その隣の佐藤ナナを見た…

 すると、

 …そういうことか?…

 ふと、気付いた…

 この二人が、なぜ、連れ立って、この場に現れたのか?

 それが、わかった…

 つまりは、プロレスのタッグを組むコンビではないが、一方がリングで、戦っているときに、一方は休む…

 それと、同じで、今、重方(しげかた)が、私に、厳しい質問を投げれば、今度は、この佐藤ナナが、優しい質問でもするのだろう…

 そうすることで、うまく、会話を続けることができる…

 一対一では、互いに、衝突すれば、仲が険悪になり、会話が終わる…

 だから、あえて、二対一で、会話する…

 一方が質問して、場の雰囲気が、まずくなれば、もう一方が、わざと面白い話をして、場の雰囲気を修正するという具合に、だ…

 私が、そんなことを、考えていると、案の上、

 「…でも、なにも、寿さんが、イケメンを好きでも、全然いいんですよ…」

 と、佐藤ナナが、口を挟んだ…

 急速に、凍てついた場の空気を変えるためだ…

 「…さっきの話に戻れば、私だって、イケメンが好きです…ルックスが、いい男が好きです…」

 「…」

 「…これは、誰だって、同じですよ…」

 佐藤ナナが、笑いながら、言う…

 私は、この佐藤ナナを見ながら、考えた…

 この佐藤ナナの狙いだ…

 佐藤ナナと、この菊池重方(しげかた)が、父娘であることは、間違いない…

 が、

 この佐藤ナナの目的が、今一つ、わからない…

 この佐藤ナナは、五井本家に養女として、入った…

 あの伸明の妹になったわけだ…

 そして、彼女が、本家に、養女として入ることで、分家の南家は、本家側についた…

 南家の血を引く、佐藤ナナを、本家に養女として入れることで、いわば、南家は、主流派になれたわけだ…

 政権に参加できたわけだ…

 それまで、五井は、本家と、東家で、五井を動かしていた…

 そして、本家とは、いっても、その内実は、東家だった…

 なぜなら、本家の建造と、義春の兄弟は、共に、東家から、妻を娶った…

 建造と、義春兄弟の妻は、昭子と、和子の姉妹…

 その姉妹は、五井東家出身…

 そして、最近まで、この目の前の菊池重方(しげかた)が東家の当主だったわけだ…

 昭子と、和子の弟である重方(しげかた)が、東家を継いだわけだ…

 そして、いずれは、あの冬馬が、東家を継ぐはずだった…

 だが、追放された…

 この父親の菊池重方(しげかた)と、いっしょに、五井家を追放された…

 が、

 追放されたはずの冬馬が、あの菊池リンと、結婚するかもしれないということで、五井家に復帰の見通しとなった…

 ただし、当主は、菊池リン…

 冬馬は、その夫という形で、だ…

 五井家の人間としての権限は与えない…

 以前のように、東家の当主ではなく、当主の夫として、復帰する…

 私は、その決定を見て、もしかしたら、冬馬は、あの昭子の息子なのではないか?

 と、考えた…

 なぜなら、どうして、そこまでして、冬馬を五井家に復帰させたいのか、わからなかったからだ…

 また、

 このことで、冬馬が、和子の息子でないことも、明らかになった…

 なぜなら、和子の息子ならば、孫の菊池リンと結婚させることはできない…

 いくらなんでも、自分の孫と息子を結婚させることはできないからだ…

 それでは、姪と叔父が結婚することになってしまうからだ…

 それは、現代の日本では認められない…

 だから、冬馬は、昭子の子供だと思った…

 元々、冬馬は、評判が悪い…

 だから、この重方(しげかた)共々、五井家から追放したわけだが、昭子の子供だと、考えた場合、どうしても、五井家に復帰させたい…

 若い冬馬の人生を考えたときには、五井にいることがベストだからだ…

 だから、一度追放したにもかかわらず、菊池リンの夫という、いわばウルトラCというべき離れ業で、復帰させようとした…

 だから、何度も言うように、それを見て、私は、もしかしたら、冬馬は、あの昭子の息子なのではないか?

 と、直観したのだ…

 しかしながら、その目論見は、あえなく崩壊したと言った…

 なぜなら、この佐藤ナナが、諏訪野伸明と、結婚したいと、言い出したからだ…

 それで、菊池リンは、この佐藤ナナに対抗する形で、同じく、諏訪野伸明と、結婚すると言い出した…

 それまでは、頑なに、伸明との結婚を嫌がっていたにも、かかわらず、だ…

 なんといっても、菊池リンと、伸明は、20歳近く、年齢が違う…

 菊池リンが、伸明との結婚を嫌がるのも、わかった…

 いくらなんでも、歳が違い過ぎるからだ…

 しかしながら、この佐藤ナナが、伸明と結婚したいと、言い出したから、佐藤ナナに対抗する意味で、伸明と結婚したいと、言い出したのだ…

 逆に言えば、佐藤ナナが、伸明と結婚したいと、言い出さなければ、伸明と結婚したいと、言い出さなかったに違いない…

 だとしたら、だ…

 なぜ、この佐藤ナナは、伸明と結婚したいなどと、言い出したのか?

 疑問がある…

 佐藤ナナは、五井南家の血を引く女…

 伸明と結婚する資格がある…

 五井は、五井家の人間と結婚するのが、基本だからだ…

 だから、おかしくはない…

 だが、

 今、この重方(しげかた)が、佐藤ナナの実父ではないかと、思った…

 だとしたら、どうだ?

 この重方(しげかた)が、佐藤ナナに命じたのではないか?

 そうすることで、菊池リンの気持ちが変わった…

 当初は、伸明との結婚に消極的だった菊池リンが、伸明との結婚に前向きになった…

 そして、

 そして、その結果、菊池リンと結婚して、五井家に復帰する予定だった、冬馬の、復帰話は消えた…

 なかったことになった…

 冬馬の復帰話は、白紙に戻ったのだ…

 つまり、結果を見れば、これは、重方(しげかた)の、姉である、昭子への復讐ではないか?

 わざと、娘の佐藤ナナに、伸明との結婚を勧めて、その結果、菊池リンにも、伸明と結婚させようと仕向ける…

 その結果、冬馬の五井家への復帰話は、消滅…

 この結果を見れば、これは、昭子への最大の復讐に他ならない…

 仮に、昭子が、冬馬の実の母親なら、地団駄を踏む事態だろう…

 自分の息子の復帰話が、消滅したのだ…

 そして、それは、この重方(しげかた)にとって、昭子への復讐に他ならなかった…

 自分を追放した姉、昭子への最大の復讐に他ならなかった…

                
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