第10話 魔術 芥川

文字数 621文字

□私は人力車でインド人魔術師の大森の西洋館に行った。魔術を見せて貰う。テーブルクロスの花柄をミスラ君が手を挙げ三角に振ると本物の花に変化しました。またランプに彼が手を置くと、ランプが回転しました。さらに書棚に手を差しのばすと、本が飛んできてテーブルにピラミッド型に積み上がった。私は「教えてください」と頼んだ。ミスラ君は「欲のある人間には魔術は使えない」という。今晩泊って行くことになる。1か月後、私は銀座のクラブで友達に魔術をして見せました。暖炉の中の燃える薪を掴み、床に放り投げると灰が散り、金貨に変化しました。友達はこの金貨と自分の全財産を掛け、トランプで勝負しようと挑み、私も大金持ちになれると思い、賭けてみました。最初は勢いよく勝っていたのですが、最後のとどめを刺す王様のカードを相手に見せた。すると王様の顔が気味の悪い微笑を浮かべたミスラ君の顔に成ったのです。「それじゃお帰り下さい」とミスラ君が言った。私はほんの2,3分の間夢をみていたのでした。「私の魔術は欲を捨てなければなりません」と、私はたしなめられた。
※短い文章の中に、読者は吸い込まれて行く。魔法にかかったような心地になる。そして目が覚め、夢だったのかと分かる。一瞬、眠り込んだ瞬間に、1ヵ月先の状況と飛んでいく。現実と夢とが交錯した状況に読者も連れて行かれる。最後に、現実に戻り、これは催眠術だったのかと分かる。催眠でかかった人の本心を引き出すこともあるという。
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