第46話 ロシアのプーチンを咎める エッセイ

文字数 3,433文字

昭和二十年八月六日、広島に原子爆弾が投下された。核爆弾が連鎖炸裂し、地上は三千度の熱に晒された。人々は一瞬にして服を焼かれ、火傷し、「熱い。助けて。死にたくない」と叫びながら、元安川に入水して行った。生々しい裸の死体が川面一杯に浮かんでいる。広島平和資料館の展示を、プーチンは見たことがあるだろうか。大勢の人が犠牲になる戦争はすべきでない。全て心ある者は、思い知ることだろう。
死んでしまえば「無の世界」。なにも分からない、生きているから命の大切さを知り、全ての人が、与えられた自分の命を、自分の為に使いたいと思っているはずだ。それを戦争が無慈悲に強制的に、命という人の宝物を奪ってしまう。
現在、ロシアがウクライナへ侵略し、戦闘行為を行なっている。ウクライナの殺された兵隊、一般市民は無念であろう。プーチンは、他人の命を省みないで、戦場へ若者を強制的に送り込む。独裁者は自分の命は、襤褸布とは異なる神が与えた宝物だとでも思っているのだろうか。
ロシアの侵略と、対抗するウクライナの反撃が始まって、一年になる。ロシアのプーチン大統領が二月、毎年行う年度の演説会を実施した。少し長くなるがこうだ。
「ロシアは、今重要な歴史的出来事の渦中にある。皆さんの団結と協力が欠かせない。ロシアの同胞は旧ソビエト連邦十五ヵ国に大勢住んでいる。ウクライナ東部ドンパス地方のロシア人はウクライナ政権に弾圧され助けを求めている。2014年弾圧されたクリミアの同胞はクーデタを起こしロシアに助けを求めた。私も欧米諸国と話し合ったが、相手は自説を曲げず、親ロシア人の弾圧を続けた。私は決断し同胞を助けに行かせ、クリミアを解放して上げた。当時ドンパスではウクライナ軍と内戦状態にあり、親ロシア派は懸命に愛する領地を守り続け、我が国の助けを待っていた。2022年2月我軍は同胞を助け、平和維持のためドンパスへ武力侵攻した。そして二ヵ国の独立を承認した。
ウクライナは独立した国々に、進撃している。ゼレンスキー大統領は欧米のエリートに協力させ、武器弾薬を貰い、代理戦争と知らずに操られている。我々は断固として、敵の攻撃を排除し、同胞国への侵略を許さない。軍人の多くの方が果敢に、ウクライナ軍の攻撃に耐え、応戦している。先祖、子孫の未来、歴史的正義の回復、民族の統一のために、今日も我々の英雄たちは戦っている。
ロシアを苦しめるために、欧米エリートは経済封鎖を仕掛けてきた。しかし我が国の経済は揺がない、ルーブルも下落したが、元通りの金融体制である。みなさんの生活も不便なく、市場へ物資は供給されている。農業生産についても、昨年以上の収穫がある。農業の皆さん、ありがとう。敬意を表します。
経済発展のため極東、中国、などへの物流回廊を構築計画、黒海とアゾフ海の港湾開発にも着手している。今後は軍備生産も増強し、核設備も増強段階に入っている。米ソ間で結んだ中距離核戦力全廃条約から離脱を勝手に米国はやったし、約束を守らない嘘つきの国である。我が国は寛大で心が広く、慈悲深さと思いやりで、人を騙すことなく、親切な国民である。これから将来の為に、様々な事を実施する。これができるのも国民の皆さんの協力があってのものだ」
これを読むと、プーチン大統領は、実際にあった事実を述べると共に、国民に、欧米が悪の原点であり民主主義の仮面を被りロシア抹消を試みている。国民は、二十年間の大統領経験のあるプーチンの指導力信じ、「彼の言う通り祖国愛の為、欧米と戦おう」という気持ちをもっている。私も彼の演説文を読み終えると、彼の言うことが説得力もあり、正しいことだと思った。
私は、日本で日々のニュースでウクライナが、戦闘状態にある事実を知ってはいる。マスコミは欧米の視点で報道し、それを私は「尤もなことである」と信じる。お互い我田引水で、相手が悪く自分は正しいと主張し、国民は自分のエリアの情報に納得し、相手の悪行を厳しく批判する。
北京五輪が終わり、ロシア軍はウクライナのドンパス地方に侵攻し、軍の支配下に置いた。プーチンは二つのウクライナの地方区をそれぞれ国として承認した。国連憲章は、戦争を禁止している。しかしプーチンは、ドネックス国とルガンクス国を対象とする集団的自衛権であると主張をし、国連憲章に違反ではないと詭弁する。これに対抗し、ウクライナも国際的に認知されている自国領土を奪回するため、猛反撃に出た。またロシア軍は、ウクライナの首都キーウの北にあるブチャにまで侵攻し、罪もない民間人を虐殺、財産略奪、強姦、悪行の限りを尽くした。ウクライナ軍の猛反撃により、ロシア軍は友好国ベラルーシに撤退した。侵略跡を現地調査した国連の人権監視団は、そのおぞましいロシア軍の悪行に絶句した。「民間人に対する暴力の恐怖物語」と呼び、国際法を尊重する姿勢が「打ち捨てられたようだ」と非難した
東方のドンパス地域の国を助けるためにロシア軍を派遣したのではないのだ。
ブチャの虐殺や、その後も、首都キーウやウクライナ全土にミサイルを撃ち込み民間施設まで爆撃する。プーチンの狙いは、旧ソビエト連邦を復活し、ロシアを繁栄させたいとの思いがあるのだろう。そのためロシア軍は、ウクライナのゼレンスキー大統領を捕まえ、国全体を征服する作戦だったのだろう。
報道では、侵略するロシア軍人だけで二十万人の死傷者がでたという。自国の軍人が死んでいくのを、プーチンは、考えない。軍人に死傷者が出るのは、国を守る制度からは、当然の結果だろう。しかし、個人的野望で戦争し、その道具として軍隊を使うのは、筋が違う。自国防衛は国民の義務であるが、プーチンに利用され無駄死することは、軍人は望まないだろう。
人は、法治国家によって守られ、自分の人生を楽しむことが出来る。無法世界は、弱肉強食である。ロシアは他国を侵略する犯罪者である。民間人を殺し、強盗、強姦、放火、公共設備損壊、あらゆる法的犯罪に該当し、処罰の対象となる。
ロシアは処罰されて当然である。命、物の損害を賠償しなければならない。プーチンは処刑され、ロシア国民も連帯して経済的責任を取らなければならない。
国際刑事裁判所から子供連行など戦争犯罪に責任があるとして、プーチンに逮捕状を発行した。国連とは別の機関だが、常識的な考えでの処置だと思う。
被害者ウクライナ軍は、正当防衛で軍隊を出動させている。多くの軍人の死傷者が出ている。民間人にも犠牲になっている。日本は憲法で戦争放棄し、専守防衛のため自衛隊を創設した。他国の戦争には参加しない。グローバル化の中、軍隊を持たず、他国の紛争に関与しないのは、批判を浴びている。しかし七十七年間、戦死者はいない。敵が侵略してきたら、最大限の武力で反撃する。ロシア、中国、北朝鮮などは、侵略する機会を常時狙っている。  
第二次世界大戦後、戦争の惨害から将来の世代を救う目的で国連憲章が発効された。今回の戦闘に対して、国連安全保障理事会が開かれ、「ロシアの侵略行為をやめるよう」、決議の採決をとった。十五理事国のうち賛成十一・否決一・棄権三(中国、インド、サウジアラビア)であった。常任理事国のロシアは拒否権を発動したため、決議案は否決された。
世界を規制する法律はあるが、拒否権などというものがあると、民主的な法律は無いに等しい。歴史上では、戦争になると互いの国土を戦火で覆い尽くし多くの犠牲者を出し、勝った者が官軍になり、負けたものは賊軍になる。勝った者の言いなりとなることが多い。国連は戦勝国により、創設された。今回、ロシア侵略が終了しても、国連に拒否権が存在する限り、プーチンの横暴は裁かれないかもしれない。中央集権国家の中国が、同じ方法で台湾を侵略する可能性もある。
今回のロシアのウクライナへの侵略では、平和に満たされていた市街地が破壊され、大勢の死亡者を出した。その責任はプーチンにある。罪のない多くの命を奪ったのは、プーチンである。絶対、彼を生き延びさせないような始末を付けないと、生きている人々がまたは死んだ人の魂が許さないだろう。
プーチンが自暴自棄になり、広島原爆と同じことになれば、世界の滅亡の危機に晒されるかも知れない。世界の有能な政治家が賢明なる判断を下し、収束方向に向かうよう、祈るばかりである。
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