第33話 仙人 芥川

文字数 435文字

大阪に来た奉公人の権助が口入れ屋に、仙人になりたいので、どこかに住み込み先を紹介してくれと頼む。医者の妻が狡猾な奴で、「人間は、はかないものなので仙人になりたい」という権助を引き受けた。「二十年間ただ働きすれば、教えてやる」と医者の女房はいう。給金なしで二十年働いた後、権助は紋付き袴を履き「不老不死の仙人の術を教えてくれ」と申し出た。医者の女房は「教えてやるが私の言う通りにするのだ。さもないと仙人にはなれない」という。「どんな難しいことでもやり遂げます」と喜び待っていた。「あの庭の松にお登り」と言いつけた。権助は松の木へ登った。「もっと高くお登り」と女房はいう。一番高い梢まで登ったところで「右の手をお放し」「左手をお放し」権助は両手を放したので、紋付きの羽織は、松の梢から離れた。が、離れたと思うと落ちもせず、中空へ、操り人形のように立ち止まっていた。「どうもありがとうございます。私も仙人になれました」権助は静かに青空を踏み、高い所へ上って行ってしまいました。
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